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着物との馴れ初め

そもそも、何で和裁?とよく聞かれた。

昔は着物なんて興味なかった。格好いいけど、それだけだし。暑いし。草履痛いし。だから成人式に振袖を着付けた後はすっかり着物の事なんか忘れていた。興味があるのはキラキラした可愛い洋服で、テレビドラマ「大草原の小さな家」に出てくるような大自然だった。

そういう感じだった私が変わったのは、21歳の夏。1999年に大学を休学してワーキングホリデーでカナダに半年滞在した後のこと。

カナダでの滞在中に、思い出したくも無い事が山のようにあったのだけど、その後の着物生活に繋がった1つの出来事があった。それは、私の人生を玩具のように利用した元彼が吐いた「お前のワーホリ体験なんて糞だな。英語だって使い物にならずに終わるわ。俺の夏の思い出まで台無しにしやがって」という言葉だった。

その時は、言い返せなかった。喰らい尽くされ、気力もなく、異論を唱えても無駄だと絶望し、それでも私の一部が誰も知らない奥底で牙を剥いた。

『そんなことに、させるものか。お前がどんなに間違ってるか、いつか証明してみせる』

自覚もないまま、そんな誓いをたてていた。

半年後に大学に復学し、居心地の悪い思いをしながら何とか単位を取り、3年後に卒業した。周囲からは、まあ変人学生扱いだったと思う。卒業後1年程して何とか続けられる仕事に就き、北海道の田舎で暮らし始めた。そして考えた。

海外にもう一度出たい。でも、ワーホリ中に酷いホームシックに陥った私は怯えてもいた。ここ数年でインターネットが発達して、メールとかとで連絡しやすくなってきたけど、実際に行ったら絶対に寂しい。心細い。日本が恋しくなる。どうしたらいい?そうだ、何か日本に繋がるもので、持ち出せるものを学ぼう。茶道は有名だけど、茶道具を持ち歩くのは無理だし、お茶の世界は面倒だって聞くし、もう少し気軽に話すきっかけになるような何かがいい。とするなら、着物?最終的に習い事をすることになっても便利だろうし。

これだと決めた私は、意を決して、40キロほど離れた所にある呉服屋さんに出かけて行った。

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