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顧客インサイトを製品に反映させるVALUE PROPOSITION CANVASとは?

UXデザインのプロセスでは、ユーザーのニーズを深く理解し、彼らの問題を解決するための効果的な提案を生み出すIdeateフェーズが重要です。この段階では、ユーザー調査を通じて集めた情報を基に、ユーザーが抱える具体的な課題を明らかにし、その解決策を考案する必要があります。

ここで役立つのが「VALUE PROPOSITION CANVAS」のフレームワークです。本記事ではVALUE PROPOSITION CANVASの内容やUXデザインのプロセス内での活用法を解説します。


VALUE PROPOSITION CANVASとは

VALUE PROPOSITION CANVAS(バリュープロポジションキャンバス)は、製品やサービスが顧客に提供する価値を体系的に理解し、ビジネスモデルやサービスを開発するためのフレームワークです。

VALUE PROPOSITION CANVASの構成は大きく2つの要素から成り立ちます。1つ目がバリューマップ2つ目が顧客プロフィールです。これら2つのマップを作成し、それぞれが合致するものをアイディアとして活用していきます。

顧客プロフィール(ニーズの見える化)

顧客プロフィールとはニーズを見える化したものです。UXデザインのこれまでのフェーズで、市場調査やユーザーインタビューを通して顧客のニーズやインサイトをつかんでいるかと思います。

それらが顧客の中でどのようなニーズがあるのか、それがどういう痛みを持っているか、どういった希望を持っているのかを顧客プロフィールを通して可視化していきます。

顧客プロフィールは以下の3つの要素から成り立ちます。

  1. ジョブ(顧客が達成したいこと)

  2. ゲイン(顧客の利益)

  3. ペイン(顧客の課題)

それぞれの要素を車を例に解説します。

1. ジョブ(顧客が達成したいこと)

ジョブは、顧客が達成しようとしていることや解決しようとしている課題です。車に関連するジョブの例を挙げます。

  • 基本的な移動: 家から職場や学校への移動。

  • 買い物やレジャー: 週末の買い物やレジャー活動のための移動。

  • 長距離の旅行: 休暇やビジネスでの長距離旅行。

  • 貨物輸送: 大きな買い物品や荷物の運搬。

  • 社会的ステータスの表現: 高級車による地位や個性の表現。

2. ゲイン(顧客の利得)

ゲインは、顧客がそのジョブを通じて得たいと望む成果やメリットです。

  • 時間の節約: 迅速な移動による時間の節約。

  • 快適性: 広々とした内装、快適なシート、良好な空調などの快適な乗車体験。

  • 安全性: 先進の安全技術による安心感。

  • 経済性: 燃費の良い車によるコスト削減。

  • 自己表現: デザインやブランドによる個性の表現。

3. ペイン(顧客の課題)

ペインは、顧客がジョブを遂行する過程で経験する可能性のある障壁や困難です。

  • 高い維持費: 燃料費、保険料、税金などの高い維持費。

  • 駐車の問題: 駐車スペースの不足や高い駐車料金。

  • 交通渋滞: 混雑した道路によるストレス。

  • 環境への影響: 排気ガスによる環境汚染の懸念。

  • 安全上のリスク: 事故のリスクや車両の故障。

バリューマップ(顧客に提供する価値)

バリューマップは作成した顧客プロフィールに対して、その原因やベインを製品でどのように解決するか、実際に顧客が得る利益や解決できる悩みはどういったものかを可視化したものです。
次の3つの要素から成り立ちます。

  1. 製品・サービス

  2. ゲインクリエイター(顧客の利益)

  3. ペインリムーバー(解決できる悩み)

顧客プロフィールと同様に、車を例に解説します。

1. 製品・サービス

これは、顧客のジョブを支援し、痛みを緩和し、利得を提供するための具体的な製品やサービスです。

  • エコカーやハイブリッド車: 環境に優しい選択肢を提供。

  • ナビゲーションシステム: 効率的なルート案内を提供。

  • 車両安全機能: 事故防止技術や安全装備を搭載。

  • 自動駐車システム: 駐車のストレスを軽減。

  • 定期的なメンテナンスサービス: 車の性能維持と安全の確保。

2. ゲインクリエイター(顧客の利益)

これは、顧客の求める利得やメリットをどのように実現するかを示す要素です。

  • 燃費の良さ: 経済性の向上と環境への配慮。

  • 快適な内装: 長距離運転でも快適な旅行体験。

  • 先進的なエンターテインメントシステム: 楽しいドライブ体験。

  • カスタマイズオプション: 個性に合わせた車のカスタマイズ。

  • 緊急時対応サービス: 事故や故障時の迅速な支援。

3. ペインリムーバー(解決できる悩み)

これは、顧客の痛みや問題をどのように軽減または解決するかを示す要素です。

  • 高効率エンジン: 燃料費の削減と排気ガスの低減。

  • コンパクトなデザイン: 駐車スペースを探しやすくする。

  • トラフィック情報の統合: 渋滞回避のためのリアルタイム情報。

  • 高耐久性材料: 長期間のメンテナンス費用の削減。

  • 安全性能の強化: 事故リスクの軽減と安心感の提供。

ユーザー調査をVALUE PROPOSITION CANVASで活用する方法

市場調査やユーザーインタビューを通じて得た顧客の情報は、VALUE PROPOSITION CANVASの作成において非常に重要です。この情報を整理するためには、付箋を使う方法をお勧めします。

まず、顧客の現状、達成したいこと、抱えている悩みや願望をそれぞれ別々の付箋に書き出しましょう。次に、これらの付箋を顧客プロフィールの「ジョブ」「ゲイン」「ペイン」のカテゴリーに分類します。このプロセスを通じて、これまでの調査結果が視覚的に理解しやすくなります。

その後、これらの情報を基にして、提供する製品やサービスがどのように顧客に役立つかを考え、アイデアを出し合います。これによって形成されるバリューマップは、顧客のニーズに合わせた製品開発やサービス提案の効果的な指針となります。

UXデザインプロセスにおけるVALUE PROPOSITION CANVAS

UXデザインのプロセスは、発散と収束を繰り返すものです。VALUE PROPOSITION CANVASは、特にIdeateフェーズ、つまり発散の段階で活用するのに適しています。

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このフェーズでは、アイデアの質よりも量を重視し、チーム全体でのアイデア出しに力を入れましょう。

無制限にアイデアを生み出すことが重要です。
また、このフェーズは発散と収束の転換点でもあります。ここから先は、アイデアをビジネスに適した形に収束させていく必要があります。生成された多数のアイデアの中から、実現可能性、コスト、ユーザーへの貢献度などの観点で選定を行います。その後、Testフェーズへと進み、プロトタイプを作成します。

重要なのは、アイデアをすぐに製品化するのではなく、ストーリーボードなどを使ってコンセプトの検証を行い、実際のテストを重ねることです。リスクを最小限に抑えつつ、常にユーザーからのフィードバックを取り入れ、製品開発を進めることが重要です。

まとめ

VALUE PROPOSITION CANVASは、UXデザインプロセスにおいて極めて重要なツールです。市場調査やユーザーインタビューから得られた豊富な情報を効果的に活用し、顧客の本質的なニーズとそれに対応する製品やサービスのアイデアを明確にすることが可能になります。

バリューマップと顧客プロフィールの組み合わせにより、具体的なジョブ、ゲイン、ペインを理解し、それらを解決するための製品やサービスをデザインする際のガイドラインとして機能します。

最終的に、このフレームワークは、ユーザー中心の製品開発を推進し、リスクを最小限に抑えながら、革新的で価値のあるソリューションを提供するための基盤を築きます。

弊社ではUXデザインコンサルのご相談をお請けしております。お気軽にお問い合わせください。

株式会社VERSAROC
代表取締役 江渕大樹
hiroki_ebuchi@versaroc.co.jp

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