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【桜草子】 実生の染井吉野

染井吉野の原木は1本で、接ぎ木・挿し木で増殖されてきたものであり、増殖された何百万本もの染井吉野は、すべて同じ遺伝子のクローン桜である。したがって、自家不和合性のため、実は付かない。
このように、勝手に思い込んでいましたが、去年、三十数本ある桜並木のうちの1本に、大量の実が付いているのを見つけ、実がこぼれ落ちるのを待って拾い集め、播種して忘れていたところ、今年、かなりの数が発芽した。
気が付いたのが遅かったため、花の時期が過ぎたころ、訪ねて見ると、同じ木に、また今年も、大量の実が付いているではないか。
とっさに、遺伝子変化が起きているのではないか、大発見だ、と思った。
しかし、
遺伝子変化の可能性がないこともないが、確率から言えば、皆無に近い。
その木が栄養状態も良く健康なため、受粉、結実、成熟したからであろう。
染井吉野に実が付かないなんて言っている人はいない。
というアドバイスを受けた。
がっかり。
そこで、他の木を観察してみると、ほとんどの木には、まったく実が付いていないが、ポツン、ポツンと実が付いている木もある。しかし、数日後には落ちてしまっていた。
それからは、あちらこちらの染井吉野を観察せざるを得ない羽目になったが、同様だった。ある木には、最初に見つけた木どころではないような数の実が付いていたが、数日後には、見事に落ちていた。
染井吉野には実が付かないというテーゼは、私の頭から、一瞬にして吹き飛んだ。
そうなると、他家受粉ということになり、多くは虫媒によるらしく、2kmも3kmも離れたところに父親がいることもあるらしい。父親捜しなんて、とても無理だ。それぞれの実は、理論的には、みんな違うことになる。ただし、それらは母親の染井吉野に限りなく似るらしい。それでも、どんな花が咲くのか楽しみだ。
桜の研究家は、人為的に勾配して、新種を作り出したらしい。手元にある貴重な苗は、自然勾配によるものではあるが、一本一本が新種とも言える。花が咲いたら、一本一本に名前を付けてやろう。開花まで10年ほど待たなければならないが。

2024.4.18 昨年、拾った種から発芽した苗を植え替え
2024.4.18 昨年、種を拾った木に、今年も、花と実を発見
2024.5.2 昨年、種を拾った木に、今年も、多数の実を発見
同 上
2024.5.2 ほんのわずかだが、まだ、咲いていた花
同 上