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#09 目の前の出来事に一生懸命

東京に雪が積もったのは2年ぶり。走らないで学校へ行くんだよ、と念を押す。ランドセルの中に入っているGPSが、近くの広場でぐるぐるしている。

何かあったかな?と思い、外を覗いてみた。うっすら積もっている雪の広場を、いったりきたりしている息子の姿が見えた。顔は見えなかったけれど、うきうきしている様子は、遠くからでも伝わってきた。

学校から帰宅すると、めずらしく外に遊びに行くと言う。遊べるほどの雪はもう残っていない。おとなとこどもの感覚は違うようだ。

満喫した様子で帰ってきたと思ったら、泣きながら抱きついてきた。

「雪にさよならを言ってきた、今日でもう会えなくなるから、ありがとう、を言ってきた」と。もう雪が解けて会えなくなることが寂しくて、涙が止まらないようだった。

そんな絵本の世界は、とっくにどこかに置いてきてしまった大人。息子に「ナスパ !ナスパ !ナスパ に行けば雪があるから!」(新潟県の越後湯沢にある施設)と、現実的な励ましくらいしかできず。それでも、うんうんと頷いてくれて、ありがとう。

夜、布団に入った息子は、ムクっと起きて紙に何かを書いていた。

「雪ふってありがとう、またいつか会いましょう」

じーん。こどもの心の中は、何色でできているのだろう。今を一生懸命に楽しみ、自由な感覚で生きているお手本が、目の前にいる。

9歳のこどもが雪に書いたお手紙。マイノートに貼っておこうと思う。


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