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2024JFL 第7節 横河武蔵野FC戦マッチレポート

3月末の沖縄SV戦以来、ほぼ一ヶ月ぶりに行われたラピスタ(LA・PITA東員スタジアム)でのホームゲーム。ヴィアティン三重は開幕戦で高知に敗れたあとリーグ戦は5試合負け無し、三重県選手権を含めると6試合負け無しと好調をキープ。リーグでは前節青森戦で退場者を出した相手に苦戦し惜しくもドロー。今節はなんとしても勝ち切って勝点3を積み上げたい。というのも初戦で負けた相手、高知ユナイテッドSCは開幕から6戦全勝で早くも独走態勢に入ろうとしているだけにリーグ序盤でこれ以上差を広げられるわけにはいかない。

試合は互いにボールを保持する時間を作りつつ、攻守が目まぐるしく入れ替わる展開。良い流れを作りながら何度か相手ゴールに迫る場面を作ったがゴール前を固める相手の守備を崩せない。後半に入ると相手が保持する時間が長くなりなかなか攻撃に移れない。しかし相手にボールを持たれはするものの決定的な場面を作らせることはほとんどなく試合は膠着状態のまま終盤へ。85分、今季新加入の⑪木戸皓貴が交代で入る。そして89分、相手ゴール前でのロングスローからのセカンドボールを木戸がシュート、それを⑩田村翔太が詰めて先制。最後まで集中を切らさず勝利への執念を見せた選手たちはその1点を守り切り見事勝利。痺れる展開からの劇的勝利に1,600人が詰めかけたスタジアムは大きな歓声と拍手に包まれた。ヴィアティン三重は7節を終えて3位から2位に浮上した。

ホームゲーム恒例 オレンジの円陣

第7節 スターティングメンバー

GK:①森
DF:②谷奥・③伊従・㉚篠原・㉟寺尾
MF:⑤菅野・⑯稲福・⑱大橋・㉔池田
FW:⑩田村・㉙加倉
SUB:㉑松本・④饗庭・⑦森主・⑬安西・⑳金・⑪木戸・㊶梁

第7節 横河武蔵野FC戦 スタメン

スコア・得点者

ヴィアティン三重 1-0 横河武蔵野FC
前半:0-0 後半:1-0

《得点者》
89分:田村翔太(V三重)

ハイライト動画


前半・優位に進めるも先制できず。

4月28日(日)、ゴールデンウィーク序盤の日曜日は快晴。気温は28℃、初夏を通り越して夏の陽気で少し動いただけで汗ばむような暑さ。東からの弱い風が吹く中、風下に立つ横河武蔵野FC(以下・武蔵野)ボールでキックオフ。ヴィアティン三重はスタメン、サブともに若干メンバーを入れ替えて臨む。左サイドバック・普段は児玉の位置に寺尾が入り、菅野が今季初スタメン。

エスコートキッズもエンブレムにタッチ!

開始7分、田村の裏への抜け出しから武蔵野ゴールに迫り早々にヴィアティン三重がコーナーキックを獲得。キッカーは菅野。先日の三重県選手権準決勝・FC.ISE-SHIMA戦ではセットプレーから2点を上げているだけに期待がかかる。2回連続でコーナーキックのチャンスを得るが決定機には至らず。続く9分、右サイドから池田のロングスロー。ニアで谷奥がすらし、セカンドボールを拾った稲福が中に入れ再び谷奥が落としてフリーの菅野。右脚を振り抜いたボレーシュートは惜しくもバーの上。14分には相手最終ラインの裏を狙って抜け出した加倉がゴール前でボールを受けたが惜しくもオフサイド。

泥臭いプレー&泥汚れNo.1 加倉広海

18分、自陣でボールを保持するヴィアティン三重。最終ラインと中盤でボールを動かしながら相手を剥がしにかかる。しかし武蔵野のプレッシャーで簡単に前へは運べない。再び最終ラインに戻す、加倉が上下動を繰り返しながら顔を出し篠原からのボールを受けまた右の伊従に戻す、そして伊従から右ワイドの池田へボールを付ける。下がっていた加倉が池田を追い越し縦で受ける。それを追い越す池田、加倉とワンツーで相手3人を剥がし右サイドからフリーで武蔵野ゴールに迫る。プレスに来る相手選手を切り替えして一人かわした池田がシュート!しかしここは相手DFのブロックに阻まれる。前半最初のチャンスは実らず。

連続フル出場継続中、鉄人池田直樹



22分には大橋からのサイドチェンジ、右サイドから池田と加倉の連携で上手く崩しにかかるが加倉のクロスは相手のブロックに阻まれてしまう。23分には稲福のミドルシュート、これは相手GKがストップ。その後も繰り返し武蔵野ゴールに畳み掛けるが決定的な場面には至らない。複数の選手が流れるようにボールに関わりヴィアティン三重優勢の時間帯を迎える。左サイドから寺尾が運び、右サイドからは池田と加倉が裏をとってゴールに迫る。繰り返し池田のロングスローの場面もあったがゴール前の守備が堅く簡単にはいかない。38分には再び右サイド、池田のロングスローから谷奥がすらし、セカンドボールを狙った寺尾がミドルシュート、跳ね返りを田村が押し込みネットを揺らしたがここもオフサイド。ゴールとはならなかったが、ロングスローから得点への期待が高まる。

前半はヴィアティン三重のシュート4本、武蔵野が5本と数字では上回られたが決定機はほとんど作らせず内容的にはヴィアティンがやや優勢で前半を終えた。

何度もトライを続けたセットプレー

後半・同時三枚替えで流れを変える。

これまでの6試合のすべてでハーフタイムに一人交代させてきた間瀬監督だが今節は交代なし、前半の良い流れに期待しての考えだろうか、ヴィアティン三重ボールで後半開始。そして開始早々の48分、相手左サイドからヴィアティン三重陣内の深いところまでボールを運ばれ、そこから2列目に戻したボールを強烈なミドルシュート。入りの時間帯で少し緩みがあったのか完全にフリーで打たせてしまったシュートだったが守護神モリケンが見事な反応を見せ、手を伸ばしてわずかに触れてゴールを割らせない。開始早々にヒヤッとする場面。

素晴らしい反応でピンチを防ぐ守護神・モリケン



その後もコンパクトな陣形から細かくパスを繋いでヴィアティン陣内でボールを保持する武蔵野。なかなかボールを奪えず繋がれてしまう。その流れから52分に自陣でファール。フリーキックを与えてしまう。相手右サイドからインスイングでゴールに向かう良いクロスを入れられ、高さで勝るヴィアティン三重DF陣が頭で弾き出す。しかしセカンドボールを拾われ再びクロスを放り込まれる。またもこぼれ球を拾われ強烈なシュート。一度はポストを叩くが跳ね返りに武蔵野の選手が反応しシュート。強烈な跳ね返りだったため浮かせてしまいクロスバーを超える。この試合最大のピンチだったがなんとか耐えた。

伊従とともに高さでストロングを発揮する谷奥

前後にはコンパクトに左右はワイドな陣形でボールを渡さない武蔵野、ヴィアティン三重の選手がプレッシャーに行っても寄せられる前に近い距離の選手にワンタッチで繋いでかわしていく。前半よりもボールを奪えなくなるヴィアティン三重。そして60分、流れを変えたいヴィアティン三重は㉙加倉→㊶梁、⑱大橋→⑦森主、⑤菅野→⑬安西の同時三枚替え。安西は菅野の位置に入りいつもより前めでプレーして攻撃に絡む。65分、交代で入った梁が左から運び得意の切り返しで相手2人を剥がしてクロスを入れる。ゴール前には同じく交代で入った安西、ボールを受けて反転しシュート。しかしトラップ時にハンドを取られてしまう。交代で入ったメンバーが早速良い流れを作り武蔵野に傾いていた流れを呼び戻しにかかる。

出走を待ち構えていた競走馬のようにスタンバイする3人

その直後にもチャンスが訪れる。最終ラインから左の寺尾に出し前方のスペースを指差してパスを要求した梁がスピードをあげて走る。梁がドリブルで相手をかわしながら深いところまで運び中へ折り返す。しかし高く浮いてしまったボールの落下地点に味方はおらずチャンスを活かせない。交代出場の梁、みなぎる闘志を全力プレーで表現、ピッチに再び火を灯らせる。それに合わせてスタンドも活気を取り戻し声援が一層大きくなる。

ピッチに火を灯す魂の男 梁賢柱

69分、左サイドの寺尾から今度は田村がスペースに走ってボールを受ける。左サイドの梁と入れ替わり梁が中に入って田村からのヒールパスでボールを受ける。古巣相手に鋭いドリブルでボックス内を切り裂く梁、ゴールマウスの真横まで切り込んで中に入れる。密集の中に安西が詰めていたが相手守備陣が必死のクリア。後半途中からの出場となった梁が溜まっていたものを吐き出すかのように切れのあるプレーで繰り返しチャンスメイク。シュートまでは至らないものの確実に相手に脅威を与え続ける。

途中出場の梁と安西、持ち味を発揮し試合の流れを変える

89分・ロングスローから田村の劇的ゴール

稲妻のように縦に速い攻撃で武蔵野ゴールに迫るヴィアティン三重、左右を広く使い細かく繋いでじりじりとヴィアティンゴールに迫る武蔵野、それぞれの異なる特徴がぶつかり合い手に汗握るゲームが繰り広げられる。相手がボールを握る時間は長くなるが決定的な場面は作らせない。そしてボールを奪えばそこから鋭く攻め込む。必要なのはシュート、ゴールだけ。

76分、相手右サイドのスローインからゴール付近まで持ち込まれる。谷奥と森主が重なってしまいそこで入れ替わり完全にフリーで中に入られてしまうが、篠原がナイスカバーでピンチを防ぐ。止められなければ失点していたであろう場面をゲームキャプテンが冷静な対応と気迫のプレーで跳ね返した。ビッグプレーでチームを救った篠原にチームメイトが次々とタッチを求めて称える。

1点もののビッグプレーでピンチを救う篠原

80分を過ぎて疲れが見え始める時間帯、互いにやや精彩を欠いたプレーが続きボールが収まらない。84分、相手陣内で寺尾がファールを受けフリーキック獲得。そのタイミングで稲福に代えて木戸が入り、より攻撃的な布陣にして1点を狙いに行く。フリーキックのキッカーは安西、高いボールをファーサイドに入れ188cmの伊従が頭で折り返し交代で入ったばかりの木戸が押し込み先制!と思われたが折り返したときに伊従が相手選手と競り合ったところでファールの判定。木戸の移籍後初ゴールは幻に。

競り勝ったかに思われた伊従、惜しくもファールの判定

88分、相手陣内右サイドからのスローイン。試合時間はあとわずか、ここも池田のロングスローでゴールを狙う。渾身のチカラをボールに込めて放り込む池田、落下地点には長身の伊従、そこに競り合う相手選手が頭でクリア。クリアボールはファーサイドでフリーになっていた木戸の目の前に飛んだ。そのボールに合わせてダイレクトで左脚を振る木戸、シュートはゴール右隅目掛けて飛ぶ、左に横っ飛びする相手GK、その目の前には田村、瞬間的に反応しコースを変えて押し込む。ついに先制!

木戸のダイレクトボレー!



再三に渡ってゴールに向かってロングスローを投げ続けた池田、すらしてセカンドボールからの攻撃を何度もトライし続けたDF陣、そして木戸と田村、二人のストライカーがその嗅覚をフルに働かせて生み出した劇的ゴール。これも木戸の移籍後初ゴールとはならなかったがエース田村の勝利への欲求が全員の諦めない気持ちを実らせた瞬間だった。両手を広げてベンチに駆け寄る田村と木戸、チームメイト全員で称え迎える。この瞬間を待ち続けたサポーター、ファンも喜びを大爆発させスタンドはこの日一番の盛り上がりを見せた。

共鳴しあった二人のストライカー

アディショナルタイムは5分、選手もスタッフもサポーターもすべての力を振り絞って闘う。最後に寺尾に代えて饗庭を投入、守備を固めて1点を守り切る。ゴール前でのフリーキックをしのぎ、その後も前からプレッシャーを掛け続け、ディフェンス陣も集中を研ぎ澄ませ、身体を張って相手を抑える。最後は燃える闘魂・森主が相手に身体をぶつけて倒れたところで試合終了のホイッスル。厳しく苦しい試合を最高の形で勝ち切った。

痺れる勝利、ナイス勝点3!

誰一人、あきらめてなかった証拠。

苦しい展開から勝ち切り、貴重な貴重な勝点3。前半は得点の匂いを感じさせる場面が何度かあったが、後半は苦しかった。相手にボールを保持されゴール付近まで迫られる場面が多かった。しかし守備陣の闘志を感じる守りに不安はなかった。苦しかったのはなかなか決定機を作れなかったことだ。89分の決勝点を決めるまで後半のシュート本数はわずかに1本。ジリジリと時間が過ぎていく中、梁のアグレッシブな突破、安西のフリーキックから伊従→田村と繋いでゴールネットを揺らした場面で会場を沸かせてはいたがファールで得点は認められなかった。このままドローで終わるのか…。そう思っていたファンは少なくなかったはず。私も少なからずそう思って試合を締める準備をしかけていた。

後半のシュートはここまでわずか1本だった

そして89分、エース田村翔太の劇的ゴール、スタジアムは大歓声に包まれた。90分のうち89分ものあいだ待ち続けていただけに、観衆の感情は堰を切ったように溢れ出た。これぞサッカーの醍醐味。

いつも応援に来る仲間と、子どもたちを連れて家族と、いつものスタジアムで、もしくは初めて来たサッカー観戦で、初めて会った知らない隣の人と、思わず叫びながらのハイタッチ、いつもの仲間と大の大人が喜びを爆発させてハグ。こんなに感情を露わにできる機会は普段の日常生活にあるはずもなく、現地でのスポーツ観戦以外には存在しない。これこそがサッカー観戦の醍醐味。

エースのゴールに沸くゴール裏サポーター


試合後の監督インタビューを終え、ボイスレコーダーの録音を止め会見場を出る。間瀬監督の後を歩きながら「失礼ながらこういう試合展開には諦め癖がついてしまっていて…。こういう勝ち方は嬉しさが何倍にもなるんだと教えてもらいました。」と監督に話しかけた。それに対して間瀬監督はこう答えてくれた。

「僕らは誰一人諦めてなかったし、サポーターも子どもたちも、あの応援は誰一人として諦めてなかった証拠ですよ。」

最後まで勝利を求めて闘う選手たち。僕らはそんな彼等を信じて声を、チカラを届け続ける。諦めたらそこで…ですよ。

これぞヴィアティン三重が誇るゴール裏の景色


公式記録


試合後コメント・フォトギャラリー


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