AV新法に関する昨今の流れ


読むのが面倒な方は、最後のまとめだけで結構です。

概要

 2022年4月法改正によって成人年齢が18歳に引き下げられました。
今回の内容とは直接関係がないため、どういう経緯で施行されたかは省略します。
 さて、18歳成人になったことで一番懸念されていたこと。それは契約です。まだ高校生であっても、親の承認を得ずに契約が成立しこれまで有効であった未成年者取り消しが使えないという事態が起きてきます。私も昨年まで高校生だったため、国や自治体など様々な機関から契約に関する注意を促すリーフレットをよくいただきました。そんな中、3月の国会で立憲民主党の塩村文夏議員が「18歳19歳(主に高校生)が成人向け動画作品(以下AV)に出演ができてしまい、仮に強制的に出演させられたとしても、契約書があれば未成年者取り消しが効かないという自体になるのではないか」「日本のAVは海外でも人気がある」などと注意を促しました。
 そういった一連の流れを受けて先日、適正な倫理観に基づいたAVの制作や、出演者とのきちんとした契約、撮影前にシナリオを十分出演者と確認をするといった内容の骨子案が作成されました。その内容に反対する勢力が現れたのが今回のムーブメント #AV新法に反対します  だ。

では詳しく見ていきましょう。


今回の法改正で何が変わったか

 今回の法改正で、成人年齢が従来の20歳から18歳に引き下げられました。これによって、2022年4月1日に18歳、19歳の方は2022年4月1日に新成人となります。しかし、酒、タバコのようにこれまでと同じく20歳まで禁止が据え置きとなっているものもあります。

政府広報オンラインページより引用

 ざっくりいうと、18歳で公的な手続きができるようになったということです。


成人年齢引き下げの主な問題点

 成人年齢の引き下げについて、これまで主に2つの問題点が挙げられてきま    した。
1:成人式はいつ行うのか
2:高校を卒業したばかりの若者たちが消費者、契約トラブルに巻き込まれ 
  る危険性が大きくなる。
 
1について、18歳の時に行うとなると、大学受験を控えた学生たちはそんな余裕はないのではないか。という意見が多く出され、結果自治体ごとに時期を決めることとなり、殆どの自治体が「成人の集い」として20歳のときに行うことになりました。
 2の契約に関するトラブルについては、政府や各省庁が高校や大学に向けて注意喚起のリーフレットを配ったり、特設のページを作ったりしています。さらにネット上では、お金に関すること、契約に関することなどを学校の授業で取り扱ったり外部から講師を招いたりして、しっかりと学ぶ機会が必要なのでは。といった意見も出てきている。
確かに、私もお金のことや契約に関することはあまり学ぶ機会がなかったという印象があります。


成人年齢とAV出演

 これまでは、AVに出演できるのは、18歳以上でした。(高校生は不可18歳以上でも未成年の場合、保護者の同意が必要)そのため、AV出演の強要や、違法な行為があった場合に一方的に契約を破棄できました。しかし、今回の法改正により18歳以上であれば、保護者による一方的な契約破棄が無効となるので、AV出演に関する違法行為などがあった場合、救済できなくなってしまいます。そこで今回のAV新法の話が出てきたわけです。


AV新法(案)とは

骨子コッシ




つまり
撮影前に十分な説明や同意がなされた上で撮影を行わなければならない。
契約→撮影→販売までに時間を置くことで、出演者が何らかの行動を取り人権や尊厳を守れるような対策や行動が取れる。また、一定期間は契約違反やその他何らかの行為により一方的に契約を解消し映像の削除などをプロダクション側に請求できる。
という内容である。普通の契約とは違い、良い意味で法的拘束力がなくなるというわけです。


何が問題なのか。反対派の意見


 ここからが本題です。今回なぜ、このようなムーブメントが起きてしまったのでしょうか。大前提として、#AV新法に反対します といっている人々は決して「現状のAVを楽しみたいからこれ以上規制をするな」と言っているわけではありません。「これじゃあ甘い、もっと規制すべきである」という意味の反対運動です。

 今回の反対運動を行っている人のツイートまたは記事では、主に次のような主張・論点があります。
・性産業は性的搾取に当たるため、そもそも法律で禁止すべき。
・AVは契約により性行為を行っている。それはつまり、売春に当たるのではないか。ということは、国がルールを作ったということはそれにお墨付きが与えられるということ。国が売春を許すなんでどういうことだ。
・AVには、通常の性行為以外に、肛門性交・痴漢・レイプなどの激しい演出があり、これは出演者にとって苦痛なうえ性犯罪を助長しかねない。
・映像作品において、殺人や暴行の表現は実際に行われないのに、なぜ、性行為は実際の行為をする必要があるのか
・海外では、性的搾取を減らそうとする動きがあるのになぜ日本はそれに逆らうのか
・AVに出演して実際に被害にあった人がいるそういう人を守るための法律ではないのか

 など、多くが、AVの存在自体に懐疑的な立場から今回の法改正に対して意見をしているように思えます。さらに言えば、この方達は、妊娠目的以外の性行為は違法であるという解釈の方もいらっしゃるみたいで、ゆくゆくはAV業界を潰そうと考えている可能性も示唆されています。

法改正に賛成 #AV新法に反対します  に反対している人の意見

 では、反対に新法に賛成派の意見はどうなっているのでしょうか
・AVを禁止にしたからと言って性犯罪が減るわけではない。むしろ、アメリカの禁酒法の時のように、裏でそういった行為が横行し実質的には、性犯罪が増加する。
・女性を守るためと行っているが、いまAV業界で働いているセクシー女優さんのことは見捨てるのか。そういうことなら、あなた方のほうが女性のことを思っておらず、結局は自分の気に入らないものを無くしたいだけなんじゃないのか。
・性行為自体に違法性はなく、むしろ生物として当たり前のこと。なぜそれを禁止されなければならないのか。
・表現の自由・経済活動の自由を侵害するのでは。
・そもそも今のAV業界は厳しいルールや自主規制のもと超ホワイトに行っている。今更そんな法律を施行したところで、アンダーグラウンドでやっている奴らには効果がない。
・もともとは、きちんとしたルールを作ろうとそちらが言い出して、ルールを作ったのに、なぜ今度はAVの存在を潰そうとしているのか。
・海外と比較しているが、どちらかといえば海外の方が卑猥だったり激しい内容のものが多い。

という意見が飛び交っています。


どこかで見たことがある

 ここまで読んで気づいた方もいるのではないでしょうか、今回の一連の流れは、献血ポスターやキャラクターを用いた温泉PRイベント、新聞広告やファミレスのイラスト、警察とVTuberのコラボ企画などの一連の騒動と同じく、フェミニズムを語る人々と表現の自由や人間の自然な思想や活動を守ろうとする人々との対立構造とほぼ一緒なのです。ただし、今回はAVというグレーゾーンのものを対象としていますので、もともとAVが嫌いだった人は新法反対派に回っているので、はっきりどちらの立場のほうが多いということは、現状ではわかりません。


なぜ対立しているのか

 ではなぜ今回も対立しているのでしょうか。まずはこちらをご覧ください


自称フェミニストの勝部元気さん
自身の水商売や援助交際などの体験をもとに
支援活動や出版活動を行っている中山美里さん

 これは反響が大きかった一例ですが、他にも
・犯罪と演出上の表現の区別がついていない
・フェミニストを語っている割には、自己の主観で論を進め、男性やAV業界で働いている女性を差別しているような発言。
・明確なデータもないのに、犯罪の増加の危険があるなどと主張
・被害者の話は当事者としてよく出すのに、現在AV業界で働いている女優さんや社員さんなどのことは全く気にしない
・「女性は」「男性は」といった大きな主語を使い、あたかもすべての人がそうであるように語る。
法律で規制することで、性犯罪が減るというような浅はかな考え

 こういった不信感から、「やっぱり、自分の気に入らないものを排除していい気になろうとしているだけなのではないか」というような疑問を持つ人がが出てきてしまいます。

 この流れを許してしまうと、おそらくどんどん他の行為も規制されていくのではないでしょうか。また、性行為の描写があるのはAVだけではありません。ドラマや映画のいわゆる濡れ場も規制、胸や下半身が露出した服は禁止、というように段々と表現の自由が剥奪されかねないという懸念もあります。こういった理由から、「女性の権利を守ったり、出演者の尊厳を守ったりするような運動には大賛成だけど、この人達の意見はいただけない。」「理想だけで現実的な考えをしようとしない」というように対立が生まれています。


まとめ

今回の一連の流れをまとめてみました。


 今はまだ原案ということで、今後加筆修正がされていくと思いますが、表現の自由と出演者の保護をどういった具合で折り合いをつけていくかが争点となることが予想されます。特に、今回は『性』という人間にとってなくてはならないもので、どんな趣味嗜好(頭の中に限る)があっても誰にも侵害されないものです。それが規制されるとなると、性別関係なく反発が起きるのではないでしょうか。
 何れにせよ、何でもかんでも規制するのではなく、より人々が幸せになれるような、そんな法案であることを願うばかりです。


加筆

 この記事を投稿したあとに何名かの人にご指摘を頂いたり、自分でももう少し調べてみて足りなかった部分があったので補足と修正をします。

1:そもそも18歳19歳がAVに出演されることはプロダクションにとっても迷惑なことのため、近年はそういった事例は無い。
 
これまでも18歳以上であればAVへの出演が可能でしたが、高校生がAVに出演して(させられて)問題になったことはここ数年ではないそうです。これは上でも述べていますが、現在一般的なAV市場で販売されている作品の制作会社は、法令遵守かつ厳しい自己ルールを決めていまのAV市場を築いてきました。そんなところで、18歳19歳が出演して問題にでもなったら、たまったもんじゃないでしょうね。今まで築き上げてきたものが崩れてしまいます。何より、セクシー女優さんは年間約100人デビューしているらしいです。わざわざ、18歳19歳の演技もままならない未熟な少女をデビューさせようなんてことは、表でやってる会社ではありえないということがわかります。
 では、なぜ18歳19歳の高校生がAVに出演するといった話が出てきたのでしょうか。明確な発信源は突き止められませんでしたが、やはり議員さんや活動家の口から出ていたようで、いわばデマであった可能性が高くなってきました

2:性行為でお金を稼げるような人たちが、女性(男性)をぞんざいに扱うはずがない
 
しみけん(伝説のAV男優)さんのYouTubeチャンネルなどを見てもらえればわかりますが、関係者(スタッフ、男優さん,etc)は本当に女優さんのことを気遣って撮影に臨まれています。例えば、手淫は激しくやっているようなフリをしている。尻と腰が激しくぶつかる音はわざと鳴りやすいようなやりかたをしている、など。確かに、性行為が上手な人が相手の体をわかってないはずがないですよね。またこれは初めて知ったのですが、今のAV業界では使用禁止な単語がいくつもありました。例えば「レイプ、痴漢、催眠」(男女間で性的同意がないとみなされるから)さらに、「野外」(背景が写ってしまうから)だそうです。(https://youtu.be/Bqk86UAl104)なんだ、規制するまでもないじゃん。というのが私の個人的な感想です。

3:AVの出演被害というより、もっと別の言い方があるのではないか
 
ここからは私の考察ですが、おそらく「AVの強制撮影による性被害を受けた」と言っている方々、それは
 AVのプロダクションとは全く関係のない団体が、モデルの撮影と声をかけ、それについて行ったら、いきなり性行為をさせられた。
ということではないでしょうか。
 つまり彼らは、最初からAVを撮ろうなんて考えておらず、タダ同然で撮影したエロい動画を、違法な場所で売って儲けようとしている団体。である可能性が大きいです。ならばAV業界は、自分たちを悪者にされた被害者なのではないでしょうか。また「被害者がいる!いる!」と新法反対派の方々は言っていますが、全くと言っていいほど具体的な数字が出ていません。それが多ければ問題なのでしょうけど、数名程度であればそれはAVの制作会社とは別の団体による被害であると考えられます。

加筆修正は以上です。


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