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迷ってるなら行くべし 佐伯祐三展@東京ステーションG、ガレとドーム兄弟展@三越

気になっていた美術展ふたつをハシゴしてきました。

その1
『佐伯祐三 自画像としての風景』 @東京ステーションギャラリー

美術館の公式サイトに掲載されている「展示概要」より

街に生き 街に死す
描くことに命を捧げた伝説の洋画家
大阪、東京、パリ。3つの街で、画家としての短い生涯を燃焼し尽くした画家、佐伯祐三(1898-1928)。2023年に生誕125年を迎える佐伯の生涯は、多くのドラマと伝説に彩られています。彼が生み出した作品群は、今なお強い輝きを放ち、見る人の心を揺さぶらずにはおきません。
(中略)
佐伯にとってパリは特別な街でした。重厚な石造りの街並み、ポスターが貼られた建物の壁、プラタナスの並木道、カフェ、教会、さらには公衆便所までが、傑作を生み出す契機となりました。また、多くの画家たちや作品と出会い、強い刺激を受けたのもパリでのことです。一方で、生誕の地・大阪、学生時代と一時帰国時代を過ごした東京も、佐伯芸術を育んだ重要な街でした。本展では3つの街での佐伯の足跡を追いながら、独創的な佐伯芸術が生成する過程を検証します。

BS日テレの「ぶらぶら美術・博物館」で紹介されているのを見て、「あまり好みの画風ではないのに、なぜか惹き付けられる」と感じ、迷った末に出かけてみました。

東京ステーションギャラリー 入り口

展示内容は、まさに引用した「概要」のとおりで、佐伯の息遣いが伝わってくるような、生々しい筆遣いが非常に印象に残りました。
ルノワールの温かな色彩と柔らかい筆触、ヴラマンクのフォーヴィスム、セザンヌの造形性、ゴッホの厚塗りと荒々しいタッチ、ユトリロのメランコリックなパリの街角……
佐伯は結核を患って30歳で夭折しているため、本格的な画業は4年余りと、とても短いのですが、こうした先人の影響を受けながら目まぐるしく画風を変遷させ、骨太で力強い、そして同時に孤愁を感じさせる独自の画境に達しています。

<主な追記>
私が好きだなと思った作品を制作順に挙げておきます。
・東京美術学校時代の「勝浦風景」
 曇った空、白波の立つ海とごつごつした岩の描写が丁寧
・渡仏前に幼い娘を描いた「弥(正しくは旧字体)智子像」
 ルノワール風の色合いとタッチで、温かい気持ちになる
・第一次渡仏時の「コルドヌリ<靴屋>」
 下町の店先の石壁を厚塗りで描いた、いわば「壁のパリ」期の代表作
 17世紀オランダ黄金時代の風俗画にも通じる雰囲気を感じる
・第二次渡仏時の「レストラン<オテル・デュ・マルシェ>」
 奔放な線と文字の作品を憑かれたように描いていた「線のパリ」期の一枚
 放埓なようで、しっかり画面が構築されているデザイン性が印象的
・最晩期の「扉」
 病身の画家の魂の声が聞こえてくるような、一種異様な迫力に満ちている
<以上主な追記終わり>

東京では18年ぶりとなる本格的な回顧展。
個人蔵の作品も数点含まれていて充実の内容ですし、佐伯祐三と同時代の1914年に創建された東京駅丸の内駅舎(重要文化財)の、レンガに囲まれた空間で、パリを題材にした絵を鑑賞するという贅沢な体験ができます。

迷っている方、おススメですよ。


その2
『エミール・ガレとドーム兄弟』 @日本橋三越

ガレやドームのコレクションで知られる北澤美術館の開館40周年を記念した特別展です。
公式サイトに載っていた数点の写真は、あまり自分の好きなタイプの作品ではなかったので、行くのをためらっていたのですが、ネットで他の方の感想をみていたら案外良さそうだったので、佐伯祐三展との二本立てで鑑賞することにしました。
展示物がガラス作品ということで、美術展には珍しく作品の撮影がOKです。

ガレの作品は、虫や花をリアルに表現するあまり、ちょっとグロテスクな物が結構あって、そうした作品は苦手なのですが、今回は穏やかな作風の作品も並んでおりホッとしました。

エミール・ガレ 昆虫文水差ほか
エミール・ガレ 花形ランプ<睡蓮>


そして私のお目当ては、ドーム兄弟のプレリアルやすみれ文、雪景色などをモチーフにした繊細な作風のガラス作品。
なお、プレリアルとは昔の暦で「牧草月」を表し、現在の5月20日から6月18日頃に相当するのだそうです。

ドーム兄弟 花畠文鶴頸花瓶<プレリアル>
ドーム兄弟 雪景風車文卵型小花瓶<雪の夕暮>、雪景風車文花瓶<雪の夕暮>ほか
ドーム兄弟 すみれ文の花瓶、手付蓋物、ミニチュア水差ほか


ということで、さほど期待していなかった割に、とてもよい美術展のハシゴでした(^^♪


ロシアによるウクライナ侵攻が始まって丸一年。ロシア側もウクライナ側もそして欧米にも、戦闘収束に向かう気配はありません。
一方日本では、「新たな戦前」の現実化を思わせるような、きな臭い動きがあちこちに。さらには先日、財務省が2022年度の「国民負担率(国民所得に占める税金や社会保険料の割合で、公的負担がいかに大きいかを国際的に比較する指標の一つ)が47.5%になる見込みだと発表したことを受けて、江戸時代の年貢率を表現した「五公五民」がツイッターでトレンド入りしていました。国民負担率の統計が始まった1970年度は24.3%、2002年度でも35.0%だったのが、高齢化にともなう社会保険料の増加などで、2013年度に40%を超えたのだそうです。

うやむやの内に姿を消した「令和版所得倍増計画」なぞ、夢のまた夢 とは思っていましたが、「五公五民」とは…。
北欧諸国のような高福祉を受けられない一方、それら福祉先進国と同等以上の負担を強いられているわけです。思わず絶句しました。
いわゆる「ゆでガエル」現象に陥らないよう、心して目と耳と口をきちんと働かせなくてはいけませんね!

そのためのエネルギーを、私はアートその他のエンタメから貰っているのだと思います。

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