(掌編)電車は走る(約650文字)
窓の外に見える沿線の町並みは瞬きする間に勢いよく流れゆく。戸建ての家に公園、子供を前後に乗せて走る電動自転車の母親、町工場、マンション、美容室、不動産らしきショップ、走り去る乗用車やトラックと、知っているようでまるで知らない営みを置いてきぼりにして。
今朝の電車は生憎いつもより混雑していて座れなかった。そういえば案内板には遅延の表示があったような気もするがその影響だろうか。これもいつものことだと大して気にもせず、私は扉の近くで不意に押し寄せる揺れに合わせて、ひんやりとした