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通過点に立ち会っただけ 【のり15】


シンデレラファイトシーズン2が終わった。

正直に言うと最初はまったく興味なかった。全体的にピンクの配色のyoutubeを見続けるのもなんかしんどかったし、1日3試合っていうのがけっこうきつかった。

通常速度で飛ばさずに見ることはまずムリで、基本1.25倍速でスキップしまくりながら見ないと、夜の12時から3試合見てから寝る時間を確保しようとするなら。

それでも1試合目と2試合目の脱落を確認したら、もう3試合目を見る気力はほとんどない。なので3試合目の1着・2着勝ち抜けの記憶はあまりない。シンデレラファイトを見ていたつもりが、気づいたら朝布団の中だったということがたびたびあった。

試合自体は期待していなかった。しかし、最初に見た火野プロの試合で予想を裏切られる。今から考えると火野プロは数少ない予選から上がってきた選手だった。それでも、麻雀自体はかなりしっかりしていた。

もう一つシンデレラファイトに惹かれた理由は勝負が決したときの選手の姿だ。

火野選手は1試合目のオーラスでラスとの差を15000点ほどつけて、3着で3試合目に行けそうだったが、桃瀬古都プロに大まくりされて1stステージで脱落する。

まさかの条件リーチを入れられてのツモ宣言。火野選手はすぐには下家を見ず、うつむいていた顔をゆっくり、とてもゆっくり下家の方に向けた。私はその数秒がとても長いものに感じた。今から考えれば、自分を納得させる時間だったようにも思う。

絶頂から絶望

麻雀漫画などで絶頂の主人公がどん底に落ちる描写は枚挙に暇がないが、その瞬間にリアルに立ち会えるのがシンデレラファイトでもある。

数秒後には仲間の通過を笑顔で祝福する火野プロがいた。


多くのトッププロが毎日棋戦を戦うのと違い、彼女たちの戦いの場は明日という日が基本的に約束されていない。それはプロ入会7年以内という縛りや、若手女流の大会の少なさや、希少である放送対局であることが背景にある。まして、人数の多い若手の中でその出場チケットを得るだけでも大変だ。

最初は当然絶望する。でも、同じ仲間の勝利を笑顔で見届ける。そんな1瞬の心の移り変わりがプロ達の姿にはあった。

西川莉子プロと同時に脱落した酒寄美咲プロが、気丈に退場するシーンも印象に残った。


ここまでがんばって試合を見続けたという苦労と、そこで見てきた出場選手のドラマが蓄積されていた私も昨日ついにFINALの日を迎えた。

決勝戦が始まる前のyoutube配信された試合前インタビューの段階から私はすでに感極まっていた。ここまで来ると、もはや4人とも自分の子のようなものだ。

誰も負けて欲しくない。

こんな気持ちになる試合ははじめてだ。決勝は1.3倍速にせず、スキップもしなかった。

そして大会は終了した。


今の私はどこか寂しくもあり、大きな台風が過ぎ去って平穏な日々に戻ったような気もする不思議な感じだ。

あんなに見るのに苦労した大会なのに、終わってみるとあっけない。

そして思う。

今年の彼女たちはもう来年にはいないんだなぁと。


私はその通過点に立ち会っただけ。


でもそれでいい。

これを1年中やってたら間違いなく生活が破綻してしまうから。


★最後まで読んでいただき ありがとうございました★

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