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憧れ

私は今年からシンデレラファイトを見始めたけど、出場者のほとんどが知らない選手だった。選手のことを覚えたかったのもあって、私は大会の様子をポストし始めた。

そんなある日、私はR16#1の松田選手の試合をポストする。役なしのテンパイを入れた松田選手が愚形の待ちが手替わりするまで延々と待ち続けた場面。

いったいどこまで待つんだろう。延々とケイテンのまま待ち続ける松田選手。かなり巡目は経ったところでリャンメンとなり、リーチして一発でツモった。上がりも鮮やかだった。でも、よく辛抱強くそこまで待てたものだと感心した。

そして、その私のポストに松田選手自身からの返信があり、手替わりの形を示してくれた。選手からのいいねも珍しい中、丁寧に拾ってくれたことがありがたかった。長文の返信をしたかった。けど相手も忙しい身。ぐっと押さえて「ありがとうございます」と短く返信した。

私は松田選手が精力的にSNS活動に取り組む姿をXで見ていた。ファンを大事にしているのがよく分かった。そしてオフの表情は華やかだった。


この大会の松田選手といえばやはりこの一打。

松田選手が目標とする魚谷プロが解説するセミファイナル。成海選手への3p放銃をぎりぎり耐えていた松田選手に、もう一枚当たり牌の6pまで掴まされる。考えに考えた松田選手は9pをひねり出す。放銃をぎりぎり回避しつつ、テンパイもキープする好打。解説の綱川プロも「(なるほど)9pかぁ」と声が漏れる。この一打で持ちこたえた松田選手はFINALへのチケットを掴んだ。

FINAL当日も、試合直前までSNSを精力的に発信していた松田選手。ポストにはこう書かれていた。

『シンデレラになるのはあやちーです』



しかし、FINALは厳しかった。当たり牌は来る、自身は勝負手。牌は押し出され、相手が上がる。可哀想すぎてもはや私は松田選手の顔を見ることができなかった。1試合目を終えた時点での点数は僅か900点。

試合終了時、松田選手は自分の手牌を伏せ、小さく頷いた。

2試合目東3局。松田選手は親の小四喜をテンパイするが、木下選手リーチの待ち牌である5mを掴んでしまう。親の役満を上がればシンデレラになれる。ここで降りれるはずもなく放銃となり、小四喜は灰となって散ってしまう。

想像を絶する展開。今どんな気持ちでこの試合を戦っているんだろう。私は松田選手の心中に思いをはせた。

そんな苦しさだけが増す南場。私は松田選手の一打におやっと思った。

南2局3本場 ドラが2枚ある手を苦労して一向聴まで持ってきた。しかし、先に新榮選手のリーチが入ってしまう。

8s(索)を切れば勝負を続行できる。ソーズは河に高く危険。だけど強く打てば打てる。そう思えた。

手を止め考えに沈む。

少考の後、選択されたのは8m(萬)だった。

そして小さく頷く。

「今日の主役は私ではない」

そう自分に言い聞かせているようにも見えた。

松田選手は今年が最後のシンデレラのチャンス。まだ親番も残っている。強く行こうと思えばいけた。でも、いかなかった。

脇役に徹した一打。

そこに優しさと、周囲を引き立てようとする思いを感じた。


松田選手は存在感を薄め、試合は新榮選手と木下選手のマッチアップとなる。そしてオーラスに新榮選手の木下選手からのハネ満直撃という劇的な結末を迎え、幕を閉じた。


松田さんが憧れ、目標としていた魚谷プロ。その目標も少しづつ形を変えているのかもしれないと思った。負けはしたが、松田さんらしい試合がそこにはあった。


<本文を加筆させていただきます>

松田選手は大会後も元気すぎるぐらい元気そうです。


私は松田さんが”お守り”としてつけているメガネをかけた姿が実は好きです。だから、なおさら決勝で松田さんの顔を見られませんでした。

物語のシンデレラは散々な目に遭い、それからお城に向かいます。あやちーのシンデレラストーリー。これから楽しみさせて頂きます。


文  のりべん
編集 さぬきち


2023.09.12加筆・修正


★最後までお読みいただき ありがとうございました★




あとがき 松田さんが試合前にリポストしてTLに並べてくれたこの投稿。この絵を描いたさぬきちさんが今回の文書の編集者です。


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