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蒼穹のフリューゲル完

改修版


ラスト
エピソード

モノリス



下層の
風が吹く

ルース



私の
故郷

私は

エノクの父

ガラキである

我が家の
地下に
続く階段を
降りる

此処は
私のラボ

作業用
卓上にて
項垂れる

私も人間


死期を
悟ったのだ

ノック

モニターに映る
扉には

心配して
いたのだろう

妻サラが
立つ

ガラキ
「サラか‥」

サラ
「貴方‥少し休んだ方が」


ガラキ
「問題無い‥終わった所だ」

サラが
ラボに入る

卓上には

仕上げた
小指の
爪程の
金属板

私とサラ
だけで
共有した
ラボ

サラ
「これが‥?」
ガラキ
「む。量子金属板」

そう

モノリス



ガラキ
「我々を、もう見ている」


サラ
「 」

精神感応
粒子金属板
アルゴリズム
プロトコル

モノリス

有限に生き
有限に閉じる

生きた
量子金属生命板

察して
モニターを
写し

姿を見せる
モノリス

私の感情は
手に出る

腰に
腕を組む
癖で語る

ガラキ
「さて、少し話しをしよう」


モノリス
『はい、マスター』 

『顔色が‥』

普段つかない
溜め息

重い口を開く

ガラキ
「精神感応か‥結末を見た。下層に住まう人類が沢山犠牲になる‥
私に夢を見させたな」


モノリス
『不本意ですが』
『あくまでリアルではありません
此方の演算データとしてお見せしました』


ガラキ
「星喰いめ‥私の研究の代償か」


モノリス
『いいえ、マスター。決して』
『非はありません。狙いは私です』

サラ
「モノリス、この事は‥娘には」
モノリス
『肯定です』
『知らない方が良いでしょう』


力を込め

拳を
握り締める

それでも

ガラキ
「生涯かけた。ラグラの救世主を
娘と共に、上層へと送り出す」


モノリス
『察します。覚悟を決めた
父親としても‥出来る事では
ありません』


ガラキ
「 」
モノリス
『必ず救います。お任せ下さい』

ガラキ
「娘を‥ラグラを。頼む」

歯を
食い縛る

組んだ
腕を解く

そっと
モノリスを
ケースに
入れた

サラに
向き直り

抱きしめる

肩が震える

私も
人間なのだ

サラ
「貴方、愛してるわ」

ガラキ
「私もだサラ。愛している」
「エノクを呼ぼうか」
サラ
「はい」

ガラキ
「行くぞ、モノリス」
「娘との対面だ」
モノリス
『はい、マスター』



そして

娘の
旅立ち

空港で
エノクと
別れた

私に誇ると
エノクは
語る

返す
言葉も
無く

だが

父親として
悔いは無い



モニターに
映る

腕の無い
涙の
エノク



言葉を失う

必死に
生きようとする

モノリスと
エノクの姿

そんな娘が

私を
誇るだと?

何を言う

お前が誇りだ

達観した

ラグラの
救済として
娘を
モノリスを
送り出した

サラと
上空を
仰ぎ見る

眩い



ルースが
真っ白に
染まる

私とサラに
迫る結末

それは
絶望感
ではなく

希望の
輝き
そのもの
だった


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