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【詩】無人駅

太古より刻まれし記憶という絞首台に常駐しながら
この虚は自己の記憶を持たない

あなたは知らない
私があなたの指先でソナタを弾いたことを
私は知らない
あなたが私の指先でエチュードを弾いたことを

時を殺すため余儀なく冷然と暗黒をうかがう

跡形もなき空を滑り
発作的にして難解な罪を追い越し
違法な満月を今ここに抱いてみる

しかし時は
この虚の濁り目さえ歯牙にもかけず
煮え切らぬ悪意の切れ端を機織り続けるだけである

再び空を紡ぎだせば
それは背徳の呼吸と 不合理の放射に余念がない

かくして今夜も 危急な序章は救生なき茶番に終わる


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