海外ニキたちはどうやってホロライブJPの配信を楽しんでいるのか
はじめに
僕は普段から、海外ニキたちと雑談しながら推しの配信を観ています。偶然にも天音かなたさんの海外ファンサーバを見つけて、思い切って参加してからちょうど本日で2年(厳密には8月1日、初めて何かを書き込んだのは8月3日)が経ちました。海外ニキに紛れ込んで過ごした2年の経験から、いろいろわかったことをまとめてみようと思いました。海を超えて同じ推しを応援している彼らが、普段どのように推し活をしているか、興味のある方はお付き合い頂ければと思います。
ちなみに僕は普段、天音かなたさんと鷹嶺ルイさんの海外ファンサーバにいます。たまに猫又おかゆさんの海外ファンサーバや、その他日本語のファンサーバにも出没しています。他にも、Holo Language Exchange (join.hololang.exchange/) という言語交流を目的としたサーバのモデレータをしていたり、ホロリスのためのMisskeyインスタンス「ほろみすきー (holomisskey.net) 」の運営もしていますので、興味のある方はぜひご参加ください。
どこにいるの?
まずは最初の疑問です。チャット欄やスーパーチャットでたまに英語が流れてきたり、日本語で書かれていてもスーパーチャットの通貨記号が円じゃなかったり、配信者さんが「Hey Kaigainiki〜!」って呼びかけたらたくさん出てきたりと、みなさんも度々彼らを目撃していると思いますが、やはりマジョリティは日本人(日本語)です。では、彼らは普段どこにいるのでしょう?
推しを応援するためのDiscordサーバ
多くの海外ニキは自分たちでDiscordサーバを立ち上げて、そこで雑談しながら推し活をしています。英語話者は英語のサーバに、中国語話者は中国語のサーバに、韓国語話者は韓国語のサーバに、といった感じで各タレント・各言語ごとにたくさんのサーバが建てられています。もちろん、言語によってはサーバがない場合もありますが、少なくとも英語のサーバは各タレントごとに設立されており、以下のFan Wikiにまとめられています。
配信チャット
もちろん日本ニキのように配信チャットだけに現れる海外ニキもたくさんいます。TwitterでもDiscordサーバでも見かけないなあという方がそうですね(もちろん、僕の知らない場所にいるかもしれませんが)。中には、すごく自然な日本語を使うから日本ニキだと思っていた方が実は海外ニキだった、なんてこともあります。彼らの日本語を学ぶ姿勢には度々感服しています。僕も見習わねば。
TwitterやRedditなど
海外ニキは日本ニキに比べてTwitterをヘビーに使っている人は少ない印象です。かわりにDiscordやRedditによく出没するように感じています。RedditはTwitterのような短文投稿SNSではなく5chのようなフォーラム形式のSNSなので、雰囲気はTwitterと比べると結構異なります。僕もたまにr/hololive(Redditのホロライブフォーラム、subredditと言います)を覗きますが、面白いミームやジョーク、印象的な配信やその感想が流れてきて楽しいです。
ちなみにr/hololiveはT-chanというホロライブ関係者の方が運営しており、たびたびファンと交流したり、ファンDiscordに顔を出すこともあったりします。えーちゃんがTwitterでファンとリプをやり取りしているような感じでしょうか。T-chanは他にもホロぐらや公式動画などの翻訳・字幕も担当しており、概要欄を見てみるとその名前が確認できると思います。
ちなみに僕はそこまでRedditを見ているわけではないので、あまり詳しくは解説できません……
どうやって推し活をしているの?
では次の疑問です。みなさん思い思いの場所で推し活をする海外ニキたちは、一体どうやって推し活をしているのでしょうか?
ほぼ日本ニキと同じ!
結論から申し上げますと、ほとんど日本ニキと同じです。配信が始まったらYouTubeを開き、チャットに参加したり、スーパーチャットを送ったり、Discordで実況したり、Twitterで感想を呟いたり……。3D配信やライブのときは特に大いに盛り上がり、普段は配信をあまり観れない方もチャットやDiscordでお見かけすることがあります。特にライブや歌枠については、言語がわからなくても楽しめるため、海外ニキも積極的に観にくるイメージがあります。
他にも、グッズを買って集めたり、現地ライブに参加したり(海外から!)、ファンプロジェクト(なにか作品を作って配信者さんにプレゼント)を実施したり、ファンレターを書いたりと、日本ニキと同じように推し活をしています。
ただし、残念ながら、すべての海外ニキが等しく日本ニキと同じような推し活ができるわけではありません……。次の節で説明します。
海外ならではの制約も……
海外と日本ではかなり環境に差があります。海外ニキを見ていると、いろいろな制約に嘆いている姿を見ることもあります。
まずは言語の壁です。もちろん日本語をほぼ完璧に理解している方、ある程度は理解できる方、簡単なフレーズなら理解できる方など、推しの言葉を理解しようと頑張る方もいらっしゃいますが、基本的には日本語がわからない方が多いです。そこで救世主となるのがリアルタイム翻訳者 (live translator) です。世界には、配信者さんが言った内容をすばやく他言語に翻訳してYouTubeのチャット欄に投稿してくださる神様が存在します。もちろんボランティアです。たまにチャット欄に [EN] とか [EN/英訳] みたいな書き出しで英文を書いている方いませんか?それがその神様です。海外ニキはツール(後述)を使って、それらのチャットを抽出して配信の内容を理解しています。
誤解のないように伝えたいのですが、推しの言語を理解することだけが推しの愛ではありません。言語がわからなくても翻訳や切り抜きで推しを応援したり、コメント・チャットやスーパーチャットで応援したり、本人なりの方法で全力で推しています。みんなで楽しく、時には言語交流をしながら推し活をしていけるとみんなハッピーで良いですね。
続いては時差です。例えば、日本で夜9時から始まる配信があるとします。一方で、ラスベガスやシアトルなど、アメリカの西海岸は朝4時です(サマータイムの場合は5時)。配信を見るために、ものすごく早起きしなければいけないわけです。また、イギリスでは正午です。夜の配信のはずが、ランチタイムの配信になってしまうわけです。ということで、基本的に配信はアーカイブで観ることが前提になってしまう方もいます。そんな方が偶然リアタイで配信を観ることができる場合「なんてこった!今日はリアタイできるぞ!!」なんて喜んでいる姿もお見受けします。一方で、配信を観るために生活リズムを超朝方(4時起き)にする方も……(日本でもEN勢の配信を観たいがために同じことをしている方もいますけどね)。
そしてグッズの送料問題です。日本ではホロライブ公式ストアでグッズを購入すると、一律で1000円の送料がかかります。しかし、これが海外となると途端に値段が上がるわけです。ホロライブ公式ストアが提供している海外配送は主にDHLですが、これが高いのなんの……。場合によっては、グッズよりも高いこともあります。
ちなみに以下のページで対象エリアなどの情報があります。
また、海外ニキは公式ストアだけではなくGeekJackと呼ばれる通販サイトも利用しています。これはトランスコスモス株式会社という日本の企業によって運営されている、キャラクターグッズ向けの越境ECサイトです。こちらでもホロライブが公式ストアと同じグッズ(一部対象外)を販売しています。こちらはクレジットカードの他にWeChat PayやAlipayなども利用できます。地域やグッズによりますが、こちらの方が安く済む場合もあるようです。また、倉庫が完全に別となっているため、公式ストアで売り切れた数量限定商品がGeekJackではまだ残っている場合もあります。
さらに、そもそも国によっては配送に対応していない場合もあります。公式ストアもGeekJackも配送を受け付けていないエリアが存在します。そういう場合は、転送サービスを利用している方が多いです。転送サービスを使うと、日本国内に自分の仮住所を作ることができ、その住所に届けられた荷物は転送サービスによって自分の本当の住所に転送されます。もちろんこれも、国内の仮住所までの送料(公式ストアであれば1回1000円)、転送サービス利用料がかかるので普通よりも高くなります。結局、日本から遠く離れた海外ニキがグッズを手に入れるのは茨の道なのです……。
以上のように、海外ニキは自分の住んでいる地域やグッズの種類や大きさ、世界情勢などを考慮してグッズを買う場所や決済方法、配送方法などを都度選んでいるのです。各Discordサーバではグッズの配送などについての議論がしばしば行われており、この記事を書くにあたって画像提供をお願いしたところ、そこでも議論が交わされていました。このように情報共有を積極的かつ活発に行うことも、彼らの結束が強い理由の一つと言えるでしょう。
距離の問題はグッズだけでなく、現地イベントへの参加時にも障壁になります。感染症による行動制限も緩和され、ライブなどの現地イベントに参加を試みる海外ニキが増えてきました。しかし、前回の4th fesは発表当初、チケット抽選の応募に日本の携帯電話番号が必要であり、海外ニキたちはすぐに情報交換をするためのDiscordサーバを立ち上げて、どうすれば抽選に応募するのかを調査していました。しかも、その後発表された海外ニキ向け抽選は非常に狭き門だったと聞いています。EXPO2日目のチケット交換列に並んでいるとき、知り合いの海外ニキと英語(たまに日本語)で喋っていたら近くにいた別の海外ニキが話に参加してきました。彼は幸運にも海外ニキ向け抽選を勝ち取ったのですが、後日、他の海外ニキから話を聞くと「海外ニキ向けの別の受付があり、本人確認のためのリストをスタッフが持っていたが、それは想像よりかなり短かった」とのことです。次回の全体ライブでは、彼らが参加できる機会をもっと増やしてほしいと願うばかりです。
海外ニキが活用しているツールなどなど
続いて、海外ニキが配信を楽しむために活用しているツールなどを紹介します。これらもほんの一部で、彼らはあらゆるツールを活用したり、便利なツールの情報共有をしたりと組織的に推し活をしています。
holodex
holodexは、VTuberの配信を探すためのWebアプリケーションです。名前にholoとついていますが、にじさんじを始めとする他の事務所、個人勢の配信の情報もクロールされています。日本語にも対応しているため、日本でも利用している方が多くいらっしゃいます。
特筆すべき機能として、Multiviewがあります。これはその名の通り、1つのブラウザウィンドウで配信やチャット欄を複数開くためのツールです(いわゆる複窓)。UI/UXがかなり洗練されており大変使い勝手が良いため、ぜひ一度使ってみてください。スマートフォンのブラウザでも使えます(OSによっては音声が1窓しか出ない場合あり)。
ちなみに、以前同様のツールがYouTubeの規約違反により公開停止になりましたが、holodexは埋め込みプレイヤーを自動で再生しないことでこの問題をクリアしています。安心してご利用ください。
また、過去の歌枠アーカイブをデータベース化してブラウザで再生できる「Musicdex」も便利でおすすめです。切り抜きに頼らずとも、過去の歌枠から聴きたい曲だけを聴いたり、プレイリストを作成して作業用BGMとして使えます。こちらもUIがかなり良い感じで、歌枠のアーカイブを小窓やウインドウの背景として流すこともできるため、音楽だけでなく動画も観たい方にもおすすめです。
そして、海外ニキがholodexを使う理由がもうひとつあります。それは翻訳リレー機能 (TLDex) です。これを使えば、次のセクションで説明するLiveTLと同等の機能を拡張機能がない状態でもすぐに使えるので、配信は基本的にholodex経由で観る海外ニキも多いかと思います(自分も一時期そうでした)。
LiveTL
LiveTLは、YouTubeのチャット欄から翻訳チャットを抽出したり、画面にオーバレイ表示するアプリ(ブラウザの拡張機能)です。先程も述べたように、"[EN]" "EN:" "英訳" といった文字をチャットの文頭につけて、リアルタイム翻訳を投稿しているリスナーが稀にいらっしゃいます。 これらのチャットを自動でピックアップしてリストとして表示したり、配信画面に載せて表示できます。また、チャット欄以外にも、次のセクションで説明するMChad (TLDex) を使って投稿された翻訳も表示できます。
MChad (+TLDex)
MChadはYouTubeのチャット欄を使わずに翻訳を投稿することができるツールです。MChadを利用することで、YouTubeの投稿規制(シャドウバン)に引っかからない、投稿に失敗しない、遅延が少ない、といったメリットがあります。
現在では、TLDexとMChadがマージされたそうで、翻訳を投稿する機能は完全にTLDexに移行されています。またMChad (TLDex) で投稿された翻訳はLiveTLでも表示できます。少しややこしいですが、TLDexは「投稿」と「表示」の2機能があることに注意してください。ちなみに、TLDexで投稿された翻訳をYouTubeチャットにも投稿する機能もあるようです。
Luna's Translation Bot / MChatXBot
これはDiscord botです。どちらも主な機能としてYouTubeチャットに投稿された翻訳チャットを拾って、Discordに転送(リレー)できます。厳密にはTLDexで抽出した・投稿された翻訳コメントをリレーしています。
Luna's Translation Bot(通称Lunabot)はフランスのルーナイトであるTamさんが開発したbotで、翻訳の転送だけでなく、YouTubeのコミュニティポストなども取得できます。また、他の配信者がもしあなたの推しの話をしているとき、その翻訳を自動で拾って推しのファンサーバへ転送する機能もあります(サーバごとに設定可能)。
また、あなたの推しが誰かの配信チャットになにかを書き込んだ場合も内容を転送できます。突発的なてえてえやコラボを見逃しません。
一方でMChatXBotは、MChadの開発者が提供しているDiscord botです。これも同様に翻訳を転送できます。こちらの方が安定して動作するため、どちらのbotもサーバに入っている事が多いです。
実はこのあたりのツールについてはあまり明るくないため、今回は簡単な解説にとどめます。もし需要がありそうであれば知り合いのMChadユーザやholodex開発者に連絡をして、もう少し詳しく調べてみます。
Korotagger
こちらもDiscord botです。配信を観ながら面白かった瞬間や記録したい瞬間にタグ付けをすることができ、配信が終わった後にタグとそのタイムスタンプをエクスポートするものです。僕がこのbotの存在を知った時は結構不便で、タグの内容を間違えたら一旦削除して付け直さなければいけなかったのですが、現在では該当の投稿を編集するだけで編集内容が適用されます。また、タグのタイミングを調整するためにオフセットを指定することもできるため、サーバにいるタグ付け職人はこれらの機能を使いこなしてアーカイブを便利に観返せるようにしています。
他にも……
他にも、自分たちのサーバのために使いやすいDiscord botを自分たちで作ったり、翻訳字幕を簡単につけられるツールを使って切り抜き動画を作ったり、特定のタレントさんの情報をまとめたWebアプリケーションを作ったり、いろいろ作り・使いながら便利に推し活をしています。ある意味で言えば、言語の壁を技術で超えているのかもしれません。彼らの推し活にかける情熱は、私たちのそれに負けていません。
おわりに
今回は、海外ニキに紛れ込んで過ごした2年の経験から、いろいろわかったことをまとめてみました。海を超えて同じ推しを応援している彼らが、普段どのように推し活をしているかが、少しでも伝わったのであれば幸いです。長くなってきたのでこのあたりで締めますが、まだまだ伝えたいことはたくさんあります。今後の更新もぜひご覧ください。
スペシャルサンクス
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記事のサムネイル:https://www.youtube.com/watch?v=KREIuJac5mY のスクリーンショット
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