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ブランドが直面する「値付け」について工場側から見てみた

服作りの相談をお受けするときにもちろんコストの話なるのだけどその時に「ん?」と思うことが多い。
もちろん価格は安い方が手に取りやすいし、生活必需品やインフラを売っているわけではないから競争において価格を重要視するのも理解できる。

しかしそれでも「ん?」と思うことが多いのであえて少し辛口で書かせてもらおうと思う。
もちろん前提としてはヴァレイもブランドの運営を通して物販を行なっているので値付けはとても難しいなぁと感じるので全てのお客様の声も理解はできるのだけど、あくまでも「作る」を担う工場目線での内容であることをご了承いただきたい。


「上代が決まっているんです」

これはめちゃくちゃ言われる。
というか、ほぼこれだろうなと思う。
わかる!
非常にわかる!

市場にあるユニクロとまではいかないまでもそこそこのセレクトショップで12,000円くらいで売っているような商品を「無名のスタートアップのブランドの商品で2万円で売る」のはハードルが高い、だからなんとか1万円で売りたい!

という気持ちはわかる。
しかし工場からすると「知らんやん」なんですよね。

逆にいうと工場が見つかっていなかったり、いくらで作れるかもわからない状態で「上代を決める」という時点でかなりおかしな話だ。

ただ上代が決まったところで工場の工程が少なくなるわけではない。

よく「安く高品質な商品を!」という言葉を聞くのだけど、それがどれほどの企業努力によってなされているのか、工場に「お願いする」というだけでそれが叶えられるとするとそもそもそのブランドの価値はないのかもしれない。


「サンプルにこんなにかかるんですか」

これも意外と多い。
ちょっと想像すれば当たり前のなのに意外と盲点になっているのは、

安くクオリティの高い商品を販売するための「企画費は高い」である。

企業は商品を安くするための研究開発をめちゃくちゃコストをかけてやる
どうやったら工程が少なくなるか、どの素材だと安っぽく見えず機能的にもいいのか?何も考えずに使いたいものを使うだけ、かっこいいものだけを作るサンプルよりも当たり前だけど研究開発にコストがかかるんだ。

上代が安い=サンプル代も安いは間違えている。
むしろ逆だと思った方がいい。
より安く、そう見えない方法を考える努力も、安い素材を見つける時間も手間もかかるわけだから当然ながらサンプル代や企画費は高くなる。

サンプルが安い、量産も安い、しかも小ロット。

というのはなかなかハードルは高いのだ。


「自分で作っていたのでコストが合いません」

これもそこそこ聞くことがある。
コストというのは「変動する」ということを前提に計算しなくてはいけない。
工場が変われば当然ながら価格は変わる、しかし上代を上げるわけにはいけない。
だから余裕を持った原価率で計算する必要があるのだ。

その最たるものが「自分で縫っていたが、たくさん売れて縫えなくなった時工場に頼んで上代が合わなくなりました」という話だ。

ビジネスのスタートの時の値決めはめちゃくちゃ重要だ。
外注を使わず自分が動くことで利益が出るというのは確かにスタートアップにとっては必要だ。

だけど、自分で動くということはあくまでも「動く自分のコスト」と「運営側の利益」を考えておく必要がある。

自分の人件費をそのまま計算して原価計算している場合、工場にいけはその倍くらいの料金になることもある。
だって職人さんが縫った上で会社にも利益を残さなきゃいけないから。


コスト構造の考え方

ブランドを運営し始める時のコストの考え方はいろいろあるだろうけど、僕なりの方法がある。
・小ロットの価格でもハマる上代にあらかじめ設計する
・ある程度売れることを前提とした価格で設計する

基本的には上記の2パターンだ。

小ロットの価格でもハマる上代にあらかじめ設計する

こちらはシンプルに小ロットで原価計算する。

卸の場合6掛けで卸すこともあるだろうからそれでも20%の利益を残そうと思うと原価率は30-40%くらいに設計する必要がある。

そうすると例えばサンプルに10万円かかるとすると20着生産して1着で割り戻すと5000円になる。
加工賃が6000円で資材が4000円だとすると原価は15,000円になる。
それが原価率30-40%だとすると上代は45,000円〜37,500円になる。

もしその価格で販売できるように設計して、例えば直販で売れた場合の利益は3万円〜22500円である。
さらに「自分で縫製した場合」は洋服販売の利益とは別で加工賃の6000×20着である12万円が「縫製者」としての利益になるのだ。

このコストを分けて考えて値付けしないといけない。

「自分だったら3時間で縫えるから縫製賃は3000円にしておこう」といのは非常に危険な考え方なのだ。

ある程度売れることを前提として価格で設計する

この場合はある程度売れることを前提に「最初は利益が取れないが後からきちんと利益が取れる」ということを目指すパターンである。

この場合初回の利益率はあまり気にしない。
例えば100着発注できた場合に利益率が合うように設計する。

サンプルは10万円だから100着で割戻して1着1000円になる。
100着の場合か工賃が4000円、資材が3500円になるとすると原価は8500円だ。

これを30%-40%の原価率に設計すると上代は28,333円〜21,200円である。

しかしこの場合もちろん初回から100着売れるわけではなく現実は20着だったとする。
そうすると28333円-原価15000円(前項参照)=13,333円の利益になる。
(21200円上代の場合6200円の利益)

これを卸販売するとなると6掛けになるから28333円の上代の商品は16999円で卸すことになるので、1着卸してもおよそ2000円の利益になるのである。


この場合、20着を売っている限りは原価率が非常に高く商売にはなかなかなりづらい。しかし価格を抑えることによってお客様は当然呼びやすいし、買っていただきやすい。
売り上げは上がりやすいし100着作れるようになってくるとあらゆる価格交渉もしやすくなる。


実は僕は後者のこの方法をお勧めしている。
10着20着の量産を縫えるようにする仕組みを運営しているものの、将来に枚数が売れるようになるための価格設計と利益構造の計算を「今食べるため」ではなく中長期的に設計しているのである。
特にスタートアップのブランドにとっては「今10着でも利益を出す」というための価格設計はお客様にとってはハードルが高い、だから将来の着数を100着なのか50着なのかに設計して、それで見積もりをしていく。

それまでの間を「本来払うはずの加工賃」で食い繋ぐのか、別の仕事をしながらやっていくのかなど考えていく必要はあるが、少なくとも工場が「知らんがな」とかお客様が「知らんがな」にならない価格をつけていかなくてはいけないのだ。


最後にブランド運営側として

いろいろと工場側の意見をいろいろ書いたものの、ブランド運営側としては値付けは非常に難しい。
少しコストが変わると売れるものも売れなくなるし、安くすると「そういうブランド」と思われてしまうし売れると思っていたものが売れなかったり、売れないと思っていたら追加発注で余計なコストがかかったり。

本当にいろいろある。

うん、めっちゃわかります。

だけど「設計していて外れた」のと「なんとなくその数字だった」というのは天と地ほど差がある。
だからまずは設計しることをお薦めするし、もしわからないことがあればどんどんと相談してください!

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