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小唄の日記 2月号

文車雨と、かつらいすでお送りする短歌とエッセイの連載「小唄の日記」2月号を公開します。今月号のテーマは「春を感じること、もの」です。

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散る朽ちる桜の身体を持つ吾に触れてください今だけ今すぐ  

 季節感があまりない職場にいるおかげか季節の変わり目がなかなか感じることができないようなそうでないような。

 春を感じること、といえば、ウチの実家の近所に祖父の植えた桜の木があったんですよ。過去形なのはそうなんです。今は根元の幹しか残っていません。 

結構大きくて結構樹齢があったはずなのですか毎年毎年「死体でも埋まってるんじゃないの?」と疑うくらいそれはもう見事な花を満開に咲かせるので大抵のところ咲いた辺りが春になり、家の前の掃き掃除がピークになるとそろそろ暑くなるんだなと思っていました。 

まぁ、いつだかの台風の時に枝の一本がぽっきりといき、そこから病気になってしまい、3年くらい花を咲かせず、結果伐ってしまったんですけどね。

 近場に桜の花見がこっそり出来る穴場が無くなってしまって残念だなぁ、とまた今年も幹を見ながら思うのでしょう。(文車雨)

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 ひとりきり道を歩めばいつまでも照らされている春の外套 

 春の訪れはいつも周りの生き物が気づかせてくれる。こちらがまだダウンジャケットを着込んで寒がっている頃、草や木や小さな生き物たちはもう春の活動をはじめている。早起きなのは黄色いマンサクの花、それから白、濃淡の紅の梅。

今まで枯れ木のような姿だった枝に葉よりも先に小さなあかりが灯り始めると、いかにも春という感じがして嬉しくなる。 

サクラの冬芽もやわらかく膨らんできて、もうすぐハクモクレンの大きな白い花がぽかりぽかりと開き始めるだろう。 足元を見ると、冬の間、茶色だった地面には、ホトケノザの紫、オオイヌノフグリの水色が広がっている。あ、草の間から出てきたのはテントウムシだ。

こんなに寒くても小さい生き物たちは春がやってきたことを知っている。空からはヒバリのさえずりが聞こえている。

 そうしているうちに、こちらの体も春を感じはじめたみたいだ。目頭がむずがゆく、さっきからくしゃみがとまらない。春はいつも嬉しくて、こそばゆい。本当は、いつまでも散歩をしていたいんだけどな。 (かつらいす)

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『小唄の日記』2月号を読んでいただき、ありがとうございました!皆さま、良い春をお過ごしください。