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UXDの基礎 Part1—デリバティブとデルタについて

メインネットローンチを間近に控えた私たちは、UXD Protocolの本質に関する教材を提供することがコミュニティの役に立つと考え、この教材を作成しました。

この記事と次の記事では、デリバティブデルタ(デルタニュートラルとも)、更に無期限先物の考え方について、第一原理から説明します。

私たちが調査した範囲では、多くの記事ではこうしたテーマに関して十分な説明がなされていませんでした。そこで私たちは、自分たち自身の手で、UXDのコミュニティやより幅広いクリプトのコミュニティに資するような情報を提供したいと考えました。

今回はまず、デリバティブ(金融派生商品)とデリバティブ・プライシングの概念から、デルタとその実務での使われ方について説明します。次回は先物、無期限先物、ファンディングレート、無期限先物の実践例などについて解説します。

この記事では、数学的な内容は割愛して概念的に理解できるようにしています。楽しみながら読んでください!

デルタとは?

UXD Protocolのホームページを開くと、ちょっと変わった言葉が出てきます。

”UXD is an algorithmic stablecoin , backed 100% by delta neutral position”

「UXD Protocolは無期限先物を利用したデルタニュートラルポジションによって100%価値が担保された、アルゴリズム型ステーブルコインです。」

デルタとは何か、そしてなぜステーブルコインにとって重要なのでしょうか?

デルタというギリシャ文字は、金融派生商品の分野では最も基本的な概念の1つです。では、金融派生商品とは一体どんなものなのでしょうか?

金融派生商品(デリバティブ)

要約:金融派生商品とは、原資産を所有することなく、原資産を参照して行う二者間の賭けである。

一歩引いて考えてみましょう。デリバティブとは、ある資産を所有することなく、その価格に賭ける方法です。例えば、テスラの株価が来年2倍になることに私が10ドル賭けると、あなたと私の間にデリバティブ契約が成立することになります。

この賭けをするために、私とあなたはテスラ株を所有する必要はありません。しかし私たちの賭けでは、テスラ株という別の資産を参照しています。言い換えると、この賭けは参照元のテスラ株から最終的な結果を「導き出す」ものであり、そのためこの賭け全体をデリバティブと呼びます。

1年後、あなたと私はテスラ株の価格を確認し、株価が2倍になっていれば あなたは私に10ドルを渡し、2倍になっていなければ私はあなたに10ドルを渡します。

より一般的なデリバティブは、コールオプションやプットオプションなど、トレーダーには馴染みがあるものかもしれません。オプションは、株式を参照するデリバティブです。オプション契約を結ぶと、他の誰かが反対側に賭け、原資産の価値を参照して賭けの勝敗を決定することに両者が合意します。

デリバティブが参照するものを、金融用語で「原資産」と呼びます。

デルタ

要約:デルタとは、参照する原資産の価格変動に伴うデリバティブの価格変動の量である。

さて、デリバティブとは何かを知った上で、デリバティブの価格設定について少し理解を進める必要があります。

デリバティブ自体も、人と人との間で取引・交換されることがあります。これは一体どういうことでしょう?

前の例に戻って、2022年1月1日に、あなたと私が 2023年1月1日までにテスラの株価が2倍になることを賭けたとします。株価が2倍になれば、あなたは私に10ドルを渡し、2倍にならなければ、私はあなたに10ドルを渡します。

9ヶ月が経過し、私が何らかの理由でこの賭けから抜けたいと思ったとします。あなたは「いや、私たちは取引をした」あるいは「あなたはナプキンの上に契約書にサインした」などと言います。では、私の友人であるボブが私の代わりに賭けに参加し、賭けは私の代わりに彼と行うというのはどうでしょう。あなたは「賭けが成立している限り誰と賭けても構わない」と思っているため、同意します。

今度はボブに電話して「僕の代わりに賭けに参加しないか」と聞いてみます。彼は「もちろん」と答えました。しかし、この賭けが始まってから9ヶ月の間に、テスラの株価は95%上昇し、ほぼ2倍になっているとします。

ボブは、この賭けに参加すれば、株価のパフォーマンスを考えるとおそらく勝てるだろうと考え、この賭けに参加するために私にお金を払ってもいいとさえ思っているかもしれません。私自身は、ボブが10ドル儲ける可能性が相当に高いことを理解しているので、5ドル払えばこの賭けに参加できると伝えました。 ボブは、テスラ株が今後3ヶ月で5%以上上昇すると確信しているので、同意しました。

さて、ここで何が起こったのでしょうか。ボブは私に5ドルを支払い、2023年1月1日までにテスラ株が2倍になるという10ドルの賭けに参加しました。テスラ株はすでに95%上昇しているので、ボブは私に5ドルを支払うことで、10ドルを稼ぐために、テスラがあと5%上昇することに15ドル(支払った5ドル+潜在的損失10ドル)賭けていることになります。あなたの視点からは何も変わりません。あなたの賭け相手は私ではなくボブになりましたが、違いはそれだけです。

ボブが私に支払った5ドルは、デリバティブ価格です。これは、誰かが私の代わりに賭けに参加するために支払うであろう価格を表しています。ブラック・ショールズモデルなどを用いての実際のデリバティブ価格の設定は数学的に非常に複雑ですが、基本的な考え方は非常にシンプルです。誰かがテスラ株の賭けに参加するために払ってもよいと思う額は、どのような要因に影響されるでしょうか?

  1. 賭けが終わるまでの時間
    今日が2022年12月31日で、テスラ株の価格が2022年1月1日の価格の4倍であれば、翌日の価格は年初の価格の少なくとも2倍になる(つまり私が賭けに勝つ)可能性が非常に非常に高いといえます。なぜなら、一夜にして株価が50%以上下落することは考えにくいからです。つまるところ合理的なデリバティブ価格は、10ドルに非常に近い価格、例えば9.95ドルということになります。

    一方、3ヶ月目(賭け期間は残り9ヶ月)で価格が年初の4倍であれば、年末までに株価が2倍の価格を上回る可能性はある程度あると思われます。しかし、この9ヶ月の期間は不確実性をもたらし、賭けに勝つ確信が「非常に高い」から「やや高い」に変わるため、合理的なデリバティブ価格は10ドルにやや近い価格、例えば7ドルになります。

  2. 参照資産の価格
    賭け終了までの時間に関係なく、デリバティブの価格はその時々のテスラの株価に左右されます。仮に賭けの開始6ヶ月(残り期間6ヶ月)の状況だとします。

    この6ヶ月の間にテスラの株価が10倍になっていれば、私は賭けに勝つとかなりの確度で信じられるので、誰かが私に9ドル払ってでもこの賭けを引き継ぐかもしれません。逆にこの時点でテスラの株価が年初から99%下がっていたら、私が賭けに勝つ可能性は非常に低いので、誰も私にお金を払うことはないでしょう。むしろこのリスクを誰かになすりつけるためには、10ドル近く払わなければならないといえます。

    どちらの場合も、賭けの終了までの時間は同じで、変わったのはその時点でのテスラの株価であることに注目してください。

  3. 参照資産のボラティリティ
    ボラティリティとは、ある資産が一定期間内に上昇または下落する量のことです。例えば、金は価格の変動がかなり遅いため、ボラティリティも通常かなり低くなります。逆にビットコインのボラティリティは通常かなり高く、これはビットコイン価格が短期間で2倍や半分になることがあるからです。

    仮にテスラ株が非常にボラティリティの低い資産で、その歴史上、毎年2%しか上下していないとします。これは、価格があまり変化しないことを意味します。そうすると、通常は2倍になるほど価格が変化しないので、テスラが2倍になるという賭けはあり得ません。したがって、この賭けのデリバティブ価格は低くなります。

    一方、仮にテスラの株価が1日に10%動くことがよくあるとすると、テスラ株が1年で2倍になるシナリオはより可能性が高いように思えます (常に10%上下する場合は、最短7、8日で2倍になる可能性があります)。つまり、十分な時間があればテスラが2倍になる可能性が高いと直感的に感じられるため、この賭けのデリバティブ価格はずっと高くなります。

要約すると、デリバティブに価格がつくことの意味や、その価格に影響を与えうる基本的な変数のいくつかを定義しました。しかし、最初の質問に戻ると、デルタとは結局なんでしょうか?

デルタとは、原資産の価格に応じてデリバティブの価格が変化する量のことです。例えばデルタが1であれば、原資産が1ドル動くごとに、デリバティブの価格も同じように1ドル変動します。デルタが0.5であれば、原資産が1ドル動くごとに、デリバティブの価格は0.5ドル変動することになります。

これは上記で説明した2つ目の変数「2.参照資産の価格」に関連します。デルタはそれ以外の全ての数値が同じであるとき、原資産の価格というレンズを通して、デリバティブがどれだけの価値を持つか考える基本的な方法の1つです。なお、1つのデリバティブ契約においてデルタは固定された量ではなく、先述の変数によって、時間の経過とともに変化していくものです。

デルタ、デルタニュートラルの実用的な使用法

要約:デリバティブは、資産価格が変動してもデリバティブ価格が変動しない場合、資産に対してデルタニュートラルとなる。

デリバティブのトレーダーは、原資産に対するエクスポージャーのことを、しばしば「デルタ」という言葉で表現します。ビットコインに対して「10 デルタ」のエクスポージャーを有している、というような言い方をする人がいるかもしれません。

これは、ビットコインの価格に対するエクスポージャーの尺度です。他の条件がすべて同じであれば、10デルタのエクスポージャーを持つことは、本質的に10ビットコインを所有することと同じです。

もちろん、デルタエクスポージャーを得るにはさまざまな方法があります。

単純に 1 ビットコインを購入し、1 デルタのエクスポージャーを得るためにそれを保持することもできますし、ビットコインのコールオプションを購入し、何らかインプライド・ボラティリティ(予想変動率)のデルタ(例えば0.75デルタ)を持つこともできます。

重要なのは、任意の時点での「デルタエクスポージャー」を理解することで、その時点で原資産の価値が上下した場合に、ポートフォリオの価値がどの程度上下しうるかを把握できるという点です。ポジションの価値がその資産の価値に依存しない場合、すなわちデルタエクスポージャーが0の場合、ポジションはある資産に関して「デルタニュートラル」であると言われています。

具体例:私の家の価値が2倍になった場合でも、それはテスラの株式への賭けの価値には影響がないでしょう(経済全体が好調であるというような相関関係を除く)。したがってテスラ株へのベットは0デルタを持ち、私の家の価格に関してデルタニュートラルです。


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ここまでお読みいただきありがとうございました。以下のリンク先のサイトでは、UXD Protocolに関するより詳細な情報を掲載しております。

公式ウェブサイト:http://uxd.fi/

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