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資産負債管理(ALM)モジュールの導入について

~分散型ステーブルコインの最終形態~

UXD Protocolは今年1月に独自のステーブルコインを立ち上げたあと、ピークでは4000万UXDの流通量を記録し、現在の流通量は1,500万UXD程度で推移しています。リリース以来、UXDはクリプト市場が乱高下する中でも安定してドルとのペッグを維持しており、この事実がデルタニュートラル・ポジションとその発行・償還システムが現実的な価格安定化メカニズムであることを証明しています。

一方、直近数ヶ月のSolanaエコシステム、特に私たちがデルタニュートラルポジションを構築するのに利用しているMango Marketsにおける取引高は大きく減少しており、UXDが規模を拡大するにつれて私たちのショートポジションがOI(未決済の建玉)に占める割合が大きくなるとともに、ファンディングレート(FR)の下押し圧力が強くなっています。UXDは当初よりこの状況を潜在的なリスクとして認識していましたが、全体としてSolana上の取引量を現状より高めに見積もっていました。

デルタニュートラルポジションはそのポジション自体が利回りを生み、安定性を確保するため、正常な市場環境下で注意深く管理されれば、ステーブルコインのためのすばらしいソリューションとなります。しかしながら、このポジションは自動的に拡大していくわけではなく、取引量の水準によって上限が存在することが私たち独自のリサーチでわかっています。

私たちは、デルタニュートラルポジションはデリバティブDEXの建玉に対して大きくなりすぎないように管理すべきであり、ステーブルコインを維持するための複数あるストラテジーの1つとして扱われることになると考えています。これが、現在私たちがUXDの総供給量に1,500万UXDの制限を設けている理由です。

そこで、私たちは資産負債管理(Asset Liability Management, ALM)モジュール(注1)をご紹介します。この用語はもともと銀行や保険会社で用いられるリスク管理の手法を意味していますが、ここではUXD Protocolが導入しようとしているより汎用的なストラテジーをこう呼んでいます。本来の意味でも、UXD Protocolにおける意味でも「資産・負債バランスを最適化する」という点は共通しています。

私たちはこのモジュールがステーブルコイン市場で革新的なものになると期待しています。ALMモジュールによってUXDは数十億ドルの規模まで効果的に拡大することができ、また同時にアセットサイドでは、様々な収益源から持続的にキャッシュフローを生み出せるようになります。これにより、UXPは単なるガバナンストークンから利回りを生み出すトークンへと変わります。

また、ALMモジュールはクロスチェーン的に展開可能であるため、UXDをチェーンを超えたモジュラー構造に組み換え、複数チェーンを横断した多様なアセットポジションを保持することができるようになります。

注1:資産負債管理についてはこちらの解説ページがわかりやすいですhttps://kabu.com/sp/glossary/1206215_3152.html

資産負債管理(ALM)モジュールについて

ステーブルコインを簡単に説明すると、法定通貨(主にUSD)にペッグしたトークンということになります。さらに詳しく定義すると、ステーブルコインは特定の基準通貨に対する価格変動を最小化することを目指すトークンと言えるでしょう。

この目標を達成するベストな方法は、誰でも1UXDを1ドルで発行・償還できるようにすることだと考えています。デルタニュートラルポジションを担保とするステーブルコインでも同様に、UXDをその価値相当の資産で発行・償還できるようにし、もし価格がペッグを外れそうになれば裁定取引を行える機会を提供することで、ペッグを維持することができます。

ALMモジュールでは、ステーブルコインの価値を維持するために、複数の低リスクなストラテジーを組み合わせます。こうしたストラテジーは利回りを生み出し、その利回りはUXPのステーキングユーザーやプロトコルの保険ファンドへ回ります。以下の図がモジュールの概要を示しています。

デルタニュートラルやレンディングなどを「資産」、発行したUXDを「負債」として管理します

各ストラテジーについて簡単に見ていきましょう。

デルタニュートラルポジション:例えばSOLの現物をロングし、SOLの無期限先物をショートすればデルタニュートラルポジションが完成します。このポジションのデルタ(価格変動によってポジション価値がどの程度増減するかの指標)はゼロとなり、市場がどう変化してもポジションの価値には一切影響を及ぼさなくなります。ファンディングレートがプラスの場合は、UXD Protocolは金利収入を得ます。反対にマイナスの場合は、UXDがこの金利を負担します。

レンディング:ステーブルコインを過剰担保の状態でレンディングプラットフォームに貸し出し、金利を得ます。このストラテジーはMakerDAOのD3M(DAI Direct Deposit Module)に類似します。

過剰担保型ローン:ユーザーは暗号資産を担保として提供することで、UXDを借り入れられるようになります。これにより、トレーダーはUXDを使ってレバレッジをかけることができ、UXD Protocolは借入手数料を得ます。

現実世界の資産(Real-World Asset, RWA)への投資:CredixやMaple、Goldfinch、Clearpoolのようなプラットフォームを活用することで、現実世界の資産を担保としてステーブルコインを貸し出すことができます。これによってUXDは現実世界のクレジットに関連する利益機会にアクセスし、リスクを管理した上で優れた利回りを得ることができます。

アセットサイドの様々なストラテジーに付随するリスクを適切に管理することで、多様かつ低リスクなポートフォリオを構築することができます。これによってUXDはさらに安定するとともに、プロトコルのステークホルダーに利回りを生み出すことができるでしょう。

リスクについて

UXDの価値が複数のストラテジーによって担保されるようになることで、プロトコルはスマートコントラクトや流動性、ソルベンシー(支払い余力)などの面で様々なリスクを負うことになります。しかし同時に、多様化されたストラテジーはリスクを分散することに繋がり、1つのストラテジーで損失が発生してもプロトコル全体が致命傷を負うことはなくなります。

アセットサイドが損失を出した場合は、保険ファンドがそれを補填します。損失が保険ファンドの支払い能力を超えた場合は、ステーキングユーザーがステークしたUXPをオークションにかけて支払います。

「生産性のある」トークン

純粋なガバナンストークンをキャッシュフローを生むガバナンストークンに変えることは、DeFiにおいて長らく追い求められてきた聖杯といっていいでしょう。ほとんどのガバナンストークンは投票権以上の価値を提供することはなく、これは長い目で見てステークホルダーに持続可能な価値を提供するには十分ではありません。私たちが考えるところでは、トークン保有者にキャッシュフローを継続して生み出す分散型のガバナンストークンこそがDeFiの未来です。

UXD Protocolの新しい構造のもとでは、UXPはキャッシュフローを生むトークンとなります。別の言い方をすれば、「生産性のある」トークンとなるのです。プロトコルのアセットサイドがデルタニュートラルポジションやレンディング、過剰担保ローン、現実世界資産への投資など低リスクなストラテジーで金利を生み出し、UXPホルダーがそのキャッシュフローの受益者となります。

この利益還元については、まず単純で実装も簡単なバイバックモデルから開始する予定です。このモデルでは、アセットサイドの運用で生じた金利収入をUXPトークンの公開市場からの買い戻し(バイバック)に利用し、買い入れたUXPはコミュニティプールに送られます。将来的には、UXD ProtocolはveREVモデルへと移行し、UXPのステーキングユーザーがキャッシュフローの主要な受益者となります。

UXD ALMモジュールの当初の構造

UXD Protocolはまず、SolendやMango Markets、PortといったSolana上の様々なレンディングプロトコルと接続しているイールドアグリゲーターのMercurialを統合します。MercurialのVaultはUXD Protocolのステーブルコイン準備資産を自動で管理し、複数のレンディングプロトコルに資金を投入して利回りを得ます。この利益は公開市場からのUXP買い戻しに使われますが、将来的にはveRevモデルに移行する予定です。

当初は運用対象としてUSDCのみをサポートしますが、プロトコルの規模が拡大するにつれて他のステーブルコインも扱う予定です。発行手数料は無料、償還手数料を0.05%に設定していますが、将来的に変更される可能性があります。

新システムにおける保険ファンドの機能

UXD Protocolは現在5,400万ドル相当の保険ファンドを有しており、この資金は現在のところ、デルタニュートラルポジションのファンディングレートがマイナスとなった場合の支払いに利用されることになっています。プロトコルがALMモジュールに移行した後は、保険ファンドはファンディングレート支払いだけでなく、プロトコルそのものの最終的な衝撃吸収材のようになります。つまり、バランスシート上の「資本」として機能することになります。

移行フェーズについて

負債資産管理(ALM)モジュールはUXDのアーキテクチャに重大な変更を加えることになるため、その前にまず移行の可否を確かめるためのコミュニティ投票を実施します。投票期間は7日間で、賛成票がUXPの総供給量の1%を超え、なおかつ賛成票が反対票を上回れば、UXD ProtocolはALMモジュールへの転換を実行します。

UXP保有者とステーキングユーザーはこちらのページから投票に参加できます。https://governance.uxd.fi/dao/UXP/proposal/HLt18XamrvTFGUKaaEVS6wRBL3eLNfzVZAaxFapNMdoy 

なお、ステーク中のUXPを使って投票に参加する場合、ステーキング画面で追加の操作が必要になります。こちらのガイドに従って投票をお願いします。


ここまでお読みいただきありがとうございました。以下のリンク先のサイトでは、UXD Protocolに関するより詳細な情報を掲載しております。

公式ウェブサイト:http://uxd.fi/

Twitterアカウント:https://twitter.com/UXDProtocol_JPN

Discordサーバー:https://discord.com/invite/BHfpYmjsBM

<注意喚起>この記事は情報提供を目的としており、いかなる行動を推奨するものでもありません。何らかの投資判断を行う際には十分な調査を行ったり、財務アドバイザーに相談したりした上で行動するようにしてください。また、記事の正確性には万全を期していますが、内容に何らかの瑕疵があった場合の責任を負うものではありません。

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