春しぐれ一行の詩はどこで絶つか   加藤郁乎

細かな針のようなやわらかい雨が降ったり止んだり。止みそうな気配に期待していると、いつのまにやらまた降り出している。雲の流れが速く、目まぐるしく変化する。春らしい陽光が雲の隙間からあふれ、氷の粒が解けて光り、輝くばかりの雨の姿にうっとりする。詩を書きながらどう終わらせようか考えあぐねる詩人は、いつのまにかこの部屋から抜け出し、一筋の雨となって自然を満喫し、咲き誇っている花の精と魂の交歓をする。

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