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MIDAS TECH ACADEMY 総会「成長するエンジニアを定義する」(パネルディスカッション前編)

2023年6月13日、「MIDAS TECH ACADEMY 総会 2023年夏」が開催されました。当イベントは、「UTTC並びにミダステックアカデミーに関わる方々の親睦を深め、エンゲージメントを高めること」を目的とし、東京大学発のソフトウェアエンジニアサークルであるUTTCのメンバーに加え、当サークルを全面的にサポートして下さっているミダステックアカデミーの方々にご参加いただきました。このオフラインイベントは、普段オンラインでの活動が多いuttcメンバー同士や普段関わることの少ないテックアカデミーの方との交流を行い、見えていなかいところも多かった互いの活動を共有する貴重な機会となりました。
本記事ではその中のコンテンツの1つである「成長するエンジニアを定義する」と題したパネルディスカッションの前編をお届けします。 株式会社LATRICO CTOの脇阪博成氏、株式会社BuySell Technologies 取締役CTOの今村雅幸氏、株式会社イングリウッド取締役兼CTOの大森崇弘氏がパネリストとしてが登壇し、エンジニアの卵や若手エンジニアに向けて今後エンジニアとして成長していくためのアドバイスをご自身の経験を交えて様々な角度から議論していただきました。




登壇者プロフィール


株式会社LATRICO CTO
脇阪博成氏
2008年ヤフー株式会社にエンジニアとして入社。その後ベンチャー、ディー・エヌ・エー、ZOZOなどを経て現職。ディー・エヌ・エーでは大手ゲーム会社との協業、エンジニアリングマネージャーとして汎用ゲームサーバやフレームワークの開発、組織マネジメントをリード。ZOZOではシステムのリプレイス、新規事業の立ち上げを経て、本部長に就任。プロダクトや組織のマネジメントに従事。2022年9月にLATRICOに入社。CTOに就任。


株式会社BuySell Technologies 取締役 CTO
今村雅幸氏
2006年ヤフー株式会社に入社。Yahoo! FASHIONやX BRANDなどの新規事業開発に従事。2009年に株式会社VASILYを創業し、取締役CTOに就任。200万人が利用するファッションアプリ「IQON(アイコン)」のプロダクト開発やエンジニアリング組織をリード。2017年にVASILYをスタートトゥデイ(現ZOZO)に売却。会社統合とともに2018年4月、ZOZOテクノロジーズの執行役員に就任。CTOとしてZOZOのプロダクト開発やエンジニア採用・教育・評価などのエンジニアリング組織マネジメント、情報システム、セキュリティリスクマネジメントなど、幅広くDXを推進。2021年3月に取締役CTO就任。

株式会社イングリウッド取締役兼CTO
大森崇弘氏
2014年に株式会社リクルートコミュニケーションズに入社。新規Webサービス・社内データ基盤などのエンジニア、ビューティ事業TechLead、飲食事業 開発グループマネージャを経て、2020年よりライフスタイル領域 プロダクト開発部長として新旧・大小様々なシステム開発のマネジメントに従事。2021年5月から取締役兼CTOとしてイングリウッドに参画。東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻卒業。


ファシリテーター
桝田 拓磨 (株式会社ミダスキャピタルアソシエイト)



Q1. 成長したエンジニアに共通していたことは?


ファシリテーターの桝田氏と登壇した大森氏、今村氏、脇阪氏(左から)

桝田
では早速ファーストトピックなのですが、「成長したエンジニアに共通していたこと」とは何か、数々のエンジニアを見てこられたこのお三方にお答えいただきたいなと思います。まずは今村さんからお願い致します。

今村
非常によく聞かれる質問ですね。多分100回は聞かれてると思うんですけど、その度に答えていることが2つあります。この2つはほぼ間違いないかなと思っています。
1つ目は「素直さ」です。これはもう間違いないと思っています。2つ目が「好奇心の強さ」です。
1つ目の「素直さ」というのは、例えば先輩に「何々君これやってくださいね」みたいな仕事の振り方をされた時に、「はいわかりました、やります」って言うイエスマン的な意味での素直さではないんです。言われたことをやる中で「何故これをやるんだろう」と素直に疑問を持てる、そしてわからないときは質問し、自分で納得して仕事を進めていける「斜に構えない」姿勢のことです。斜に構えていいことなんて人生で1ミリもないんですよ。そういう姿勢の人にはやっぱり色々な仕事が回ってくるんですよ。上司も人間なのでいろんな仕事を振る時に誰に何を振ろうかなと思うわけです。 ここにいる人たちもみんなそうなんですけど。その時に素直なやつと素直じゃないやつがいたら素直な人に仕事を振りたくなるんですよ。仕事が振られるって事はそれだけ成長機会が多いということなので、よりエンジニアとしても成長するし、より大きな仕事を任されるようになっていきます。斜に構えず素直でいるっていうことっていうのは、他の人よりも多くの成長機会を得られるということで大事かなと思います。
2つ目は「好奇心の強さ」なんですけど、やっぱりみんなエンジニアなので、これなんだろうと思った瞬間にすぐに調べるとか、何か新しいものが出た時にこれって何で出てきたんだろう、と調べる人は成長する気がします。僕も20年以上エンジニアをやってますけど、本当に学ぶことをやめたらついていけなくなるなって毎日思っています。純粋なインターネットとかテクノロジーに対する好奇心、興味関心がある人はやっぱり周りに比べて成長しているなって感じですね。

桝田
 ありがとうございます。ちょっとこの後やりにくいかもしれないんですが、大森さん、この点を踏まえてお願いできますか。

大森
笑いが起きてるんですけど、僕は斜に構えていると人生で言われ続けてきた人間なんですよ(笑)。僕からしたらお前らが曲がってんだよと思ってました(笑)。正直今村さんが言ったことには共感しかないです。「素直」であること、ただし「人に対して素直」というよりは「目的に対して素直」であるというところは非常に大事だなと思います。
「好奇心の強さ」に関しては、ちょっと言い方を変えると、僕は極論エンジニアの適正って「視野の狭さ」だと思っています。何かができないけど、その代わりにあるエンジニア分野のこと、プロダクトのことでもいいんですけど、それに没頭できることが伸びる子の特徴だなという風に思っています。
成長したエンジニアに共通していることは、「真理を追求する心」というか、「正しさを追い求める心」みたいなところかなと思います。楽しみながら自分がいいと思うようなものを作っていくというところをやってほしいなと思います。新卒っていう意味で言うと今まで多分100人以上見てきました。何年か経って振り返った時に生意気だったけどやっぱり自分が好きなことに没頭できる人は伸びているなと思うので、そこは是非心に留めておいてもらえればなと思います。

登壇者の話に真剣に耳を傾ける参加者たち

桝田
ありがとうございます。脇阪さんはYahoo!などではかなり同期がいたと思うんですよね。その同期がどうやって成長していたかというところにつきましても数々見られてきたと思うので、そこら辺を教えていただければなと思います。

脇阪
はい、わかりました。ちなみに僕もかなり斜に構えているタイプでした(笑)。 同期はたくさんいたのですが、その中でも尖って斜に構えていた集団がいて、その中で僕は成長しました。自分は「先輩も同期も大したことない」と思っていて、素直さは全くなかったんですけど、転職した先で数年経って素直さを得ました…(笑)。転職した先で周りのレベルの高さを感じて素直さを得た結果、成長していったなと思います。ただ当時の同期たちは斜に構えていてもアウトプットの量とかエンジニアとしてのレベルがすごい高くて、それは「好奇心」というところがめちゃくちゃ強かったからだと思うんですね。なので仕事だけではなくて趣味でもとにかくコードを書いて、そこで得たことはブログで書いたり、色々なところで登壇したりとかでアウトプットを出して、とにかく好奇心の強さでなんとかカバーしていた人たちでした。ちなみにこんなこと言ってますけど今村さんもかなり斜に構えてました…。

今村
それはそう(笑)。

脇阪
みんな好奇心があって、どこかで挫折して素直さは大事だなって気付いて成長していたなと思います。なので今はとにかく好奇心強めでとにかくコードを寝る間も惜しんで書いて、ブログを読んでまた書いて、オープンソースにコミットして、みたいなところをやるのがまずはいいのかなと思いました。

桝田
ちなみにアウトプットする適正なコード量と言うか、こういうエンジニアの1日がいいとかはありますか?
そういうイメージがあった方が皆さん明日から過ごしやすいのかなと。

今村
自分が20代前半の時に何してたかって言うと、土日も平日も帰ったと同時にすぐにパソコンを開くんですよ。その時の自分は好奇心の塊みたいな感じだったし、仕事と関係のないプライベートでのサービスやアプリの開発するとかそういうのはめちゃくちゃおすすめします。結局会社にいる間だけ勉強しても、よほどの天才じゃない限りはなかなか差ってつかないと思うので、土日も含めてプライベートの時間でもWebアプリケーションとか作ったりしてる人の方が伸びるとは思います。今日ここにいる人たちは天才っぽいから違うかもしれないんですけど…(笑)。そこで学んだことをまた仕事に活かしてとか、仕事でやり込んだことをまた自分の趣味に活かしてとか、そういうループを習慣として持ってる人っていうのは、人の倍インプットもできるしアウトプットもできるので成長速度も全然違うなっていうのはめちゃめちゃ思います。


Q2. 新人エンジニアの典型的な失敗パターンは?


登壇した大森氏、今村氏、脇阪氏(左から)

桝田
ありがとうございます!続いてセカンドトピックに参りたいと思います。逆に「失敗するパターン」というのがあったりするのかなと思いますが、大森さんいかがでしょうか。

大森
入社して半年とか一年の時に新人にフィードバックすることが多かったかなと思う失敗パターンっていうと「インプット過多」「アウトプット過多」の両方あると思っていて、特にここにいる人たちアウトプットが少なくてインプット過多になりがちな人たちが多いんじゃないかなと思います。はまってしまって面白いからインプットをとにかくしてるんだけど、アウトプット量が少ないから学ぶ機会が十分じゃなくて身につかない、消化しきれてないってことがよく見る頭のよい人の失敗パターンかなと思います。どうしても技術的なところは体系を学ぶこととか原理原則を学ぶことってめちゃくちゃ有効だと思うんで、僕自身も本は読めってひたすら言います。一方で物を作って、それに対してのフィードバックを得て使えるものにするっていう過程がないと、その学んだ技術は全く意味がないです。

桝田
具体的なアウトプットと言うとどんな感じなんですかね。

大森
結構これを言うと悩む子も出てきちゃうんですけど、UTTCの方にもアドバイスしてたのは、実際Slack作ってみればいいじゃん、YouTube作ってみればいいじゃん、LINE作ってみればいいじゃん、ということですね。自分で作りたいものがあるならそれを作って、フィードバック受けるのが一番だし、 それがないって言うんだったらとにかく自分が使うだろうものや広く使われているものを徹底的に分析して作ってみることがインプットに意味付けをして吸収をしやすくする一番いい方法なのかなと思っています。インプットとアウトプットの時間の比率だけ意識して、アウトプットできてないなと思ったら、アウトプットに時間を割くって決めて、何をしたらいいかわからなかったら世の中で広く使われているものを作る、が自身で出来る工夫だと思っています。

桝田
ありがとうございます。脇阪さんお願いします。

脇阪
アウトプットとインプットの話ですけど、失敗を怖れてアウトプットに完璧さを求めすぎると、より良いものを出したいからと色々ウジウジして損してしまいます。若い内の方が失敗しやすいし、チャレンジもしやすいですよね。ここにいる人たち、CTOってもう失敗があまり許されないので…(笑)。一方で新卒とかインターンの時っていくら失敗してもメンターとか先輩たちがフォローしてくれるので、この時こそチャレンジしてアウトプットして、できるものは失敗までしてしまってそこから得た学びの方がすごい血となり肉となると思います。なので逆にそこビビって、失敗できる時にチャレンジしなかった人はすごく縮こまったエンジニアになっちゃうかなっていうのが僕の印象です。

桝田
ありがとうございます。最後に今村さん、総括を兼ねてお願いします。

今村
個人的には今ってめちゃめちゃ便利な時代だと思うんですよ。UTTCのカリキュラムもそうだと思うんですけど、例えばReactを使ってください、Docker使ってください、AWS使ってくださいって言われて使ってるじゃないですか。でもそもそもその技術が何で出てきたのか、何で使ってるのかって多分説明できる人の方が少ないんですよ。僕が典型的な失敗パターンで一番多いと思っているのは、「何でこれ使ってるの」っていうのを聞いた時に答えられないことだと思っています。なぜこの処理を書いてるのか、何でこれを使っているのか、何でそれを選んだのかっていう問いに対して、説明・根拠がないっていうのは若手にも多いですね。ただ流行ってるから使ってるとか、前こうだったからこうです、みたいな感じです。「自分の意志がないコード」と僕は呼んでるんですけど、そういうのを書き続けちゃうと形だけものはできるけど、例えば環境が変わった時とかに全然ついていけないとか、根本的な低レイヤーにあるものを理解できないということが起こるんですね。それこそ新卒2年目、3年目とかで結構差が出てきたりするので、もっとちゃんと深掘って、それが生まれた仕組みとか、何でこれが使われているのかっていうのを説明できるようになるみたいなものは必要だと思いますし、そこをすっ飛ばしてなんとなく使うみたいなのは、よくある失敗かなって思いますね。

桝田
ありがとうございます、確かにそうですね。皆さんもMIDASの企業群でインターンされていると思うので、改めてこの技術選定がなぜ行われたかみたいなところを振り返ってみると …。

今村
詰められる(笑)。


後編ではレベルアップのためにできることやChatGPTとの付き合い方について伺っていきます。

 

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