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【2022年度版】百合CP人気度ランキング!【pixiv小説】

 文: 銀糸鳥

 2022年度、あなたの推しCPは誰と誰でしたか?
 ちさたき、ぼ喜多、スレミオ……。
 文字通り、百人に聞けば百通りの答えが得られそうです。

 それでは質問を変えましょう。
 2022年度の百合界隈で、最も人気のあったCPは誰と誰でしょうか?

はじめに

 ごきげんよう、銀糸鳥です。
 某アニメの最終話を見届けた百合界隈に、今年も夏がやってきました。心なしか、いつもより熱いですね。

 ところで皆さまは〈pixiv小説〉をご存知でしょうか。
 ……愚問ですね。皆さまご存知の通り、〈pixiv小説〉とは、イラスト・小説投稿サイト <pixiv> の小説部門の通称です。

 この記事では、〈pixiv小説〉に投稿された二次創作小説を対象とした、百合カップリング(百合CP)の人気度ランキングをご紹介します。

 さらに本記事では、作成したランキングをもとに、2022年度の百合コンテンツの日本国内における動向を振り返ります。国内最大級の投稿サイトとして知られる〈pixiv小説〉ですから、百合界隈全体の動向を反映していると考えても差し支えないでしょう。

 なお、2021年度分の調査成果はこちらの記事から読むことができます。
 ぜひ結果を比較しながらお読みいただけると嬉しいです。

注意点

 本記事では、テーマの性質上、VTuber・アイドル などの nmmn 系コンテンツに言及することがあります。過度な言及はなるべく避けますが、カップリング名・キャラクター名は伏せられていません。後ほど共有する Excel ファイルでもこれは同様です。SNS での共有は大変ありがたいですが、各方面に迷惑が掛からないよう注意していただけると助かります。

 また、以下の記述には「○○というカップリングは去年に比べて二次創作が減少した」という類の記述が登場します。これらの記述に際して、当該カップリングと、そのファンコミュニティを中傷するような意図がないことを、あらかじめお断りいたします。

ランキングの作成方法(要約版)

 結果公表の前に、調査方法を説明します。
 時間のない人のために簡単に要点だけを述べておきます。

 はじめに、2022年度に一定程度の二次創作が制作されたカップリングを、pixiv小説の検索結果をもとにリストアップします。百合のタグが紐づけられた作品には、このステップでほとんど目を通しています。全てのカップリングを調査対象とすると切りが無いので、ここで足切りを設けているような感じです。

 次に、それぞれのカップリングに対する「合計ブックマーク数の概算値」を算出します。この数値が高ければ高いほど、多くの人がそのカップリングに対して注目を示したということになります。あくまで概算値なので、正確な数字ではありません。「AよりBのほうが2倍くらい人気がある」というようにスケール感の分析を可能にするための数値です。

 それらの概算値をもとにランキングを作成して、百合CP人気度ランキングといたしました。あなたの知らない、意外なカップリングが上位にランクインするかも…?

 以上となります。簡単ですね。
 もう少し詳しく知りたいという人は、以下の説明文をお読みください。

ランキングの作成方法(詳細版)

 pixiv小説でプレミアム会員限定の詳細検索機能を使用して調査を実施した。参照日は 2023年の4~5月ごろ。まず、キーワードを「百合」、対象を「タグ(完全一致)」、期間を「2021年4月1日~2022年3月31日」、ブックマーク数を「50~99」、本文の文字数を「すべての文字数」、作品の言語を「日本語」として詳細検索を実施した。次に、出力された小説作品を参照し、それぞれの小説にタグ付けされたカップリングを順番にリストアップした。このとき、調査の簡略化のために、ブックマーク数が「50~99」の小説作品が 10件以下であるようなカップリングはリストに追加していない。リストアップされたカップリングを順番にキーワードへ入力し、ブックマーク数を「50~99」「100~299」「300~499」「500~999」「1000以上」に設定して検索を行い、それぞれの条件で出力された小説作品の数を記録した。カップリングの名前に表記揺れがある場合(「まふえな」と「えなまふ」など)は、OR検索を使用した。最後に、ブックマーク数が「50~99」の作品を75pt、「100~299」の作品を 200pt、「300~499」の作品を 400pt、「500~999」の作品を 750pt、「1000以上」の作品を 1000ptとみなして、各カップリングに対応した合計ブックマーク数の概算値を算出した。たとえば、「リョウ虹」の概算値は、「50~99」が 159本、「100~299」が 182本、「300~499」が26本、「500~999」が11本、「1000以上」が0本で、(159*75+182*200+26*400+11*750+0*1000=)66975ptとなる。さらに、得られた数値をもとに2種類のランキングを作成した。ひとつめのランキングは、合計ブックマーク数の概算値が大きい順に各カップリングを並べたものである。ふたつめのランキングは、コンテンツを単位として同様の序列化を施したものである。

調査結果の公表

 調査結果のデータファイルを無料で配布します。
 タイトルに「2022ver」とありますが、2022年度(22年4月~23年3月)の調査であることにご注意ください。

 ダウンロードしたファイルは、引用・二次配布など好きにご利用いただいて結構です。ただし、数値を書き換えたものを配布したり、あたかも自分が作成者であるかのように配布されたりすると悲しいのでやめてください。

 この記事の執筆者は、以前から同様の調査を実施しています。
 2010~2020年度の Excelファイルは↓の記事から DL できます。

 昨年度の記事はこちらになります。

 もしも本記事を読んでご興味をお持ちいただけたなら、これらの記事にも目を通してくださると嬉しいです。

百合CP人気度ランキング(1位~10位)

 それでは、上位10位までの発表です。10位以降のカップリングが気になる方は、ぜひ上記 Excel シートをダウンロードしてください。

 1位に輝いたのは…?(括弧内は前年度比)

  1. ちさたき(錦木千束×井ノ上たきな)
     799,025pt

  2. ぼ喜多(後藤ひとり×喜多郁代)
     427,150pt

  3. ぼ虹(後藤ひとり×伊地知虹夏)
     268,300pt

  4. まふえな(朝比奈まふゆ×東雲絵名)
     193,550pt(+11,575pt)

  5. やまかき(山下美月×賀喜遥香)
     129,600pt(+128,275pt)

  6. miComet(さくらみこ×星街すいせい)
     120,025pt(+101,025pt)

  7. スレミオ(スレッタ・マーキュリー×ミオリネ・レンブラン)
     118,650pt

  8. チリ主♀(チリ×女主人公)
     90,550pt

  9. ぼリョウ(後藤ひとり×山田リョウ)
     75,675pt

  10. 奏まふ(宵崎奏×朝比奈まふゆ)
     69,150pt(-62,200pt)

 2022年度に人気度1位のカップリングに輝いたのは「ちさたき(リコリス・リコイル)」でした。799,025pt という得点は調査を始めて以来の最高得点。pixiv 小説史上、「ちさたき」はもっとも人気を集めたカップリングということになりました。

 人気度2位にランクインした「ぼ喜多(ぼっち・ざ・ろっく!)」は 427,150pt。例年の上位陣(180,000pt程度)を大きく上回る高得点を叩き出し、「ちさたき」に次ぐ歴代2位の得点となりました。3位には「ぼ虹」、9位には「ぼリョウ」がランクイン。『ぼっち・ざ・ろっく!』というコンテンツの人気ぶりと、主人公・後藤ひとり総受け(攻め?)ぶりを感じさせる順位となりました。

 7位には『機動戦士ガンダム 水星の魔女』から「スレミオ」がランクイン。対象期間の22年4月~23年3月は2期放送の直前であるため、多くのオタクの実感よりは低い数値が出ているものと思われます。ほか、毎年恒例のポケモン新作から「チリ主♀」など、今年は新規コンテンツからのランクインが相次ぎました。

 『プロジェクトセカイ』からは、前回1位の「まふえな」が4位に、前回3位の「奏まふ」が10位にランクイン。ランキング全体としては16組がランクインし、地盤の強さを見せました。他方、前回ランキングを席巻した『ウマ娘』からは「ブラトレ♀」が40位と、上位陣から姿を消しています。

 5位には『乃木坂46』から「やまかき」が、6位には『ホロライブ』から「miComet」がランクイン。それぞれ前年度から大きくポイントを伸ばし、上位に躍り出ました。個人的に『乃木坂46』の百合二次創作には明るくないので、ここまで大きな結果が出たことを意外に感じています。

百合コンテンツ人気度ランキング(1位~10位)

 次に、コンテンツごとのランキングを発表します。
 これは百合コンテンツか…?というのもあるかもしれませんが、あくまでご参考程度に…。

  1. ぼっち・ざ・ろっく! 
     921,150pt

  2. リコリス・リコイル
     801,200pt

  3. プロジェクトセカイ
     485,175pt(-126,900pt)

  4. ホロライブ
     310,800pt(+149,200pt)

  5. にじさんじ
     183,625pt(-175,100pt)

  6. 乃木坂46
     158,100pt(+146,050pt)

  7. 機動戦士ガンダム 水星の魔女
     118,650pt

  8. ポケットモンスターSV
     98,850pt

  9. ウマ娘 プリティーダービー
     76,975pt(-113,875pt)

  10. ラブライブ!スーパースター!!
     58,900pt(-41,825pt)

 人気度1位に輝いたのは『ぼっち・ざ・ろっく!』でした。

 カップリングの場合と同様、新規コンテンツが上位にランクインする結果となりました。他方、『プロジェクトセカイ』『にじさんじ』『ウマ娘 プリティーダービー』など、前回調査で上位陣にランクインしたコンテンツは『ホロライブ』を除いて軒並み失速。ランク外には『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』『アサルトリリィ』『少女☆歌劇レヴュースタァライト』『BanG Dream!』なども下位に付けています。

 『ぼっち・ざ・ろっく!』『リコリス・リコイル』『機動戦士ガンダム 水星の魔女』など、新たにランクインしたコンテンツに共通するのは、調査対象となるカップリングの少なさ。『ぼっち・ざ・ろっく!』が7組、『リコリス・リコイル』が2組、『水星の魔女』が1組と、16組の『プロジェクトセカイ』や32組の『ホロライブ』に比べるとその差は歴然としています。ここ数年の上位コンテンツを見ると、キャラクターの関係性が提示されてその中に「百合」を読み込むという消費形態が主流でしたが、今年に限っては別の傾向があるようです。

 いずれにせよ、とりわけ『リコリス・リコイル』や『機動戦士ガンダム 水星の魔女』のような、ごく少数のカップリングしか選択肢のないコンテンツが上位にランクインしたことは、百合コンテンツのこれまでにない可能性を示したと言えます。これまでにも『アナと雪の女王』や『コード・ブルー』のようなコンテンツはありましたが、主として異性愛描写が多いこれらのコンテンツに比べ、今年度の新規コンテンツには、女性同士の関係性に重きが置かれているように感じます(それを「百合」と呼ぶべきか否かは意見の分かれるところでしょう)。

 また、『リコリス・リコイル』『ぼっち・ざ・ろっく!』に関しては、例年の平均値を大きく上回るポイントからもわかるように、百合文化圏とは大きく離れた領域にも届いているように思われます。皆さまも、これら二つのコンテンツに関して、所謂「非百合のオタク」から話題を振られたことがあるのではないでしょうか。

2022年度の「百合の世界」と展望

 以上、カップリングとコンテンツごとに人気度ランキングを発表しました。それぞれ、カップリング部門は「ちさたき(錦木千束×井ノ上たきな)」、コンテンツ部門は『ぼっち・ざ・ろっく!』が人気度1位を獲得しました。

 2022年度は『ぼっち・ざ・ろっく!』と『リコリス・リコイル』、そして『機動戦士ガンダム 水星の魔女』が登場した年として、後世に記憶されることでしょう。

 2023年度の百合の世界には、どんな未来が待ち受けているのでしょうか。新年度がはじまり3カ月が経過しましたが、ここまでに登場してきたコンテンツ以外にはまだ新しい動きは見られないように思います。

 前半に紹介したランキング全体の Excel データでは、ここまでに紹介してきたカップリングのほか、調査対象となる全136組を閲覧することができます。おそらく、その中にはあなたがまだ知らないカップリングも存在することでしょう。

 本記事を通じて、あなたが、あなたの知らない「百合の世界」を知り、まだ見ぬカップリング/コンテンツに興味を抱いてくれたのなら、これほど嬉しいことはありません。

 それでは、ごきげんよう。

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