「でんでらりゅうば」歌い継がれる魅力を考察
『でんでらりゅう』(「でんでらりゅうば」とも)は長崎に伝わる童歌(わらべうた)として知られます。
仲里依紗と川口春奈が、2012年に放送された自動車のテレビCMで歌ったことから話題になりました。
2023年12月には九州を拠点に活動するアイドルグループ『ばってん少女隊』がニューシングル「でんでらりゅーば!」を発売しています。
長年歌い継がれる『でんでらりゅう』にはどのような由来があるのか、長崎からさらに視野を広げて考察してみましょう。
仲里依紗と川口春奈が共演したCMによって全国的に知られた『でんでらりゅう』。実はその2年ほど前、福山雅治が自身のベストアルバム『THE BEST BANG!! [初回限定盤]』(2010年11月)に「でんでらりゅうば」を収録しています。彼は地元で開催した稲佐山ライブでも「でんでらりゅうば」を入場曲に使っていたそうです。
2012年2月放送のローカル番組『笑顔7県・九州まるごとサプライズ』(FBS福岡放送)では、長崎県の代表的な祭り・長崎くんちでも使われる『でんでらりゅう』について博多大吉が取材しました。長崎にある神社で聞いたところによると、カステラで有名な文明堂の総本店が昭和50年代に長崎限定で流したCM「わらべ歌シリーズ」に『でんでらりゅう』を用いたことから、広まったのではないかといいます。
長崎の方言と思われる『でんでらりゅう』の歌詞を標準語にすると次のようになります。
元々は長崎の花街として栄えた丸山の遊女による歌という説や、日露戦争が起きた明治38年頃に流行った『長崎節』に由来するという説もあります。
柳田国男氏が岩手県遠野地方に伝わる逸話をまとめた『遠野物語』(明治43年)にも触れておきましょう。逸話の一つに「蓮台野(れんだいの)」の姥捨て山伝説が描かれており、地元では「デンデラ野」と呼ばれます。
2018年には柳田国男氏による原作をもとにした絵本『えほん遠野物語 でんでらの』(文:京極 夏彦 絵:はた こうしろう)が発売されました。『でんでらりゅう』と直接関係はないかもしれませんが、「でんでら」という言葉は東北でも使われていたことがうかがわれます。
また1995年には東京都出身のおのりえんさんが、長崎を訪れた竜の「タブラッサ」を巡る物語を描いた『でんでら竜がでてきたよ』(作:おのりえん 絵:伊藤 英一)を発売しています。
童歌としては福岡県久留米市に「でんでらるんなら」という手まり歌が伝えられており、「でんでら」が長崎を超えて広まったようです。
手遊びや手まり、踊りとともに楽しむ民謡や童歌には「ずいずいずっころばし」や「おてもやん」(熊本民謡)、「おちゃらかほい」、アメリカの愛国歌“ヤンキードゥードゥル”を原曲とする「アルプス一万尺」(1936年頃)などがあります。そんななかにあって『でんでらりゅう』は明るいメロディーや不思議な歌詞、テンポのよい手遊びなどが相まって愛され続けているのではないでしょうか。
長崎県川棚町の「森から生まれたオオクワ方の妖精」こと地域活性化アイドルユニット・KUWAGATA KIDS(クワガタキッズ)は、2020年にエスペラント語で「でんでらりゅうば」を披露しています(※エスペラント語は世界から戦争をなくすために作られた人工言語)。
さらに昨年は『ばってん少女隊』がニューシングル「でんでらりゅーば!」をリリースしたわけです(『でんでらりゅう』をもとに、うたうたいのDaokoが作詞、GuruConnect(グルコネクト)が作曲を手がけた作品)。
さまざまな形で歌い継がれている『でんでらりゅう』。これをきっかけにもっと広がりそうな勢いですね。
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