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【詩】やさしいヴェール

真夜中にもかまわず外に出る
空には大きな満月と
砂粒を散らしたような星
通りかかる雲はまるでカーテン

歩き続ける僕に誰も話しかけない
それもそのはず
誰にも気づかれないように
そっと息をひそめているのだから

暗がりの中をわたって歩けば
誰も僕のことは気にしない
暗がりの中から出なければ
誰も僕には気づかない

ああ、なんて楽しいんだろう
ああ、なんて愉快なんだろう

ひとりきりの散歩
ひとりきりの夜
孤独はみないふりをして
劇場でひとりステップを踏むようだ

寂しくなんかない
暗がりは友達
僕に寄り添うパートナー
唯一の理解者だ

小さな愚痴も
こらえきれない怒りも
捨てきれない悲しみも
ぜんぶそっくり見えなくしてくれる

最良の友
最愛のパートナー

太陽は僕にはまぶしい
月は僕にはまばゆい

暗がりからそっと見ているくらいがちょうどいい

でも、満月に雲がかかっている日は
薄曇りの中でにぶく光る太陽は
やさしい光のミストを運んでくれる

そんな日は
そんな日は

暗がりの中から出てもいいかもしれない
太陽も月もヴェールをかぶってるくらいがちょうどいい




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