同級生S君の夢《Dream Diary 32》
xxxx年/05/27(x)
大型の宇宙船の船内で、大勢の女性達が沢山のお菓子と一緒に無重力遊泳をしていた。プカプカ浮かぶスイーツの中を、フワフワと上下左右に進んだり、斜め方向にクルクル飛び回ったりして、彼女達は皆何かが始まるのを待っていた。私も無重力遊泳をしながら、小学校時代の同級生のS君を探していた。色とりどりのスイーツをかき分けて、私は数人の女性にS君を見掛けなかったか尋ねてみた。彼女らは皆エクスタシーに達した表情をしていたが、S君の名前を聞くと急に顔をしかめたり、肩をすくめたりした。
場面が変わり、私は何処か目的地を目指して歩いていた。ふと見ると、大学時代の友人Tが、バス停の標識の鉄柱に自転車のロープキーで縛り付けられている。誰かに騙されたらしい。どうしたんだ? 私が訊ねると、Tは「Sの奴にやられた」と忌々しげに言った。私はTに、ロープキーの解錠番号は『8823』だと教えてやった。「ハチハチニイサン? カイテイジン? そうか、あなたが海底人ハヤブサだったのか!」。Tは自分で解錠しながらそう叫んだ。「いや私はそのような者ではない」。私は慌てて否定すると、思わせ振りな含み笑いをしながら歩き続けた。「フフフフ‥‥」。私はS君を捜さねばならない。
また場面が変わった。私は高い石垣だけが残っている城跡のような場所にいて、石垣の上から遠くの景色を眺めたり、下界を見下ろしたりしていた。やがて私は石垣から降りると、城跡の横に立っている、石垣と同じくらいの高さの半鐘台の下まで歩いて行った。半鐘台の天辺には鐘が吊り下げられ、地上から登って行くための鉄の梯子が付いている。その梯子を小学生の男の子が登って行く。高所を恐がる様子もなく、とても身軽そうにスイスイ登って行く。あれは同級生のS君だ。私とS君は小学校時代のイタズラ仲間だった。登れるかどうか自信が無かったが、私もS君の後を追って梯子を登り始めた。登っている途中で、歳を取ったが私にも登れるぞと思った。鐘の所で合流した私とS君は、交代でT字型の撞木を持って鐘を何度も叩いた。「カンカンカンカン‥‥」。けたたましい音が辺り一帯に響き渡った。その後二人は慌てて半鐘台から降りると、竹藪の中に走って逃げ込んだ。火事だ!と村人達が血相変えてやって来るかと思ったら、虚空からバタバタポトポト落ちて来たのは、宇宙船の中で無重力遊泳をしていた女性達と、モノクローム色に変わった沢山のスイーツだった。鐘を鳴らした途端に無重力じゃなくなったのだ。スイーツの魔法が解け、濡れ雑巾で逆撫でされたような彼女らの表情を見て、私とS君は顔を見合わせて大笑いした。
『海底人8823』
1960年代。大映テレビ室制作。フジテレビ放映。
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