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九官鳥


今日はコーヒーショップで
売買契約を結ぶことになっている
しかしコーヒーをひと口飲んだ途端
売るのだったか買うのだったか
金額はどのくらいで
そもそも誰と何を売買するのか
きれいさっぱり忘れてしまった
まあいいや だけど
何となく気分がスッキリしない
ふいに至近距離から視線を感じたので
となりのテーブルを見ると
鳥類行商人が双眼鏡を眼に当てて
じっとこちらをウォッチしている
私はとても腹が立ったので
強い口調で文句を言った
「きみ、失礼じゃないかっ!」
すると鳥類行商人は
「なにおぅ、このケンカ買った!」
威勢よくそう言うと
鳥籠から売買契約書を出してきた
そうそう思い出した
私はあわてて署名と捺印をし
九官鳥を一羽手に入れたが
頭に特大のたんこぶを作ってしまった
「ちょっとお勉強し過ぎたね」
九官鳥が笑った



*月刊『ココア共和国』2022.12月号(電子版)
*マガジン:「コーヒーショップの物語」




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