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新年度

みなさんこんにちは。新年度が始まりもうすぐ一ヶ月が経とうとしていますが、いかがお過ごしですか?
私は少し春休みを取って4月9日にオーケストラが再開してからは、演奏やレッスンで毎日あちこちへ行ったり来たりしています。
いろんなところへ行っているおかげで、今年は桜の花をいつもよりも長く楽しむことが出来ました。長い冬を超えたあとの春の訪れは毎年とても嬉しいものです。今年見た中で一番綺麗だったのは、仕事が終わったあとに夜桜と満月を一緒に見たときでした。これぞ日本の春、という風情のある景色ですね。

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さて、今月は先月に引き続きベルリオーズの幻想交響曲に取り組む機会がありました。この曲は仙台フィルの試用期間のときに初めて演奏して、その時は緊張した記憶しかないけれど、回を重ねるごとに楽曲の魅力を楽しみながら演奏できるようになってきました。

この曲は、ある若い芸術家(ベルリオーズ自身でもある)が失恋をして自殺をしようと毒を飲むのですが、毒の量が足りなかったために奇妙な夢をみる、というストーリーの曲です。その夢の中で、彼の美しい恋人はこの特定のメロディーで表されます。最初はフルートとヴァイオリンが奏でるこの旋律、まずは1分ほど聴いてみてください。

彼の脳裏から離れない彼女は、このあと最後まで何度もこの旋律としてあらわれるのです。このように特定の人物やイメージをメロディーと結びつけることは、現代の私達にはとても身近なことに感じます。例えば映画ピーターパンを見ている時に時計の音楽が聴こえてきたらワニが来る、と分かるし、スター・ウォーズのダース・ベイダーのテーマは誰でも知っていますよね。そのアイデアの原点が、このベルリオーズの幻想交響曲から繋がっていると思うととても面白く感じませんか?

作品の最後の楽章で、恋人に殺されてしまった彼女は魔女たちの宴に加わります。かつてあれほどに美しかった彼女は、下品で醜くグロテスクな姿に変わってしまうのですが、それをE♭クラリネットの甲高い音とトリルが表現しています。

E♭クラリネットのパートは実は1番クラリネットに書かれているのですが、このように5楽章だけパートを入れ替えて演奏するのが一般的です。5楽章になって楽器を持ち替えた直後にこのような大きなソロがあるのですが、以前パリ管弦楽団の演奏を聞いた時は4楽章からE♭クラリネットに持ち替えて吹いていました。4楽章ももともとC管で書かれているところをB♭管で読み替えて吹いているわけなので、E♭で読み替えてみるのもありなのかもしれません。そうすればソロの前に楽器の様子を感じることが出来ますし、いつか試してみたいなあと密かに企んでいます。

私がこのソロを練習するときに心がけていることは、トリルに惑わされずにフレージングを大切にすることと、四分音符の跳ね具合を色んなパターンで準備しておくことです。指揮者のテンポにもよるのですが、あまり軽快になりすぎないほうが、この場面のグロテスク感をうまく表現できるようです。
この曲はここには書ききれない魅力に溢れていて、もちろん1番クラリネットにも大切なソロがたくさんあります。有名な曲で演奏会で取り上げられる機会も多いので、全曲通して聴いてみてくださいね。

先週は悲しい大きな事故のニュースがあり、毎日入ってくる続報には私も辛い気持ちになってしまうのですが、こうやって演奏をしたり、好きな曲を聴いてまた明るく前向きな気持ちを持つことができました。音楽はいつも私にパワーをくれるなあと思います。

最後にひとつお知らせです。来月5月10日発売の雑誌Band Journalにインタビューが少し載る予定です。表紙にもいる…かも?またTwitterとInstagramのほうでもお知らせするので、ぜひご覧ください!




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