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リサイタルのお知らせ

皆さんこんにちは。お元気ですか?
今年は春の訪れが早く、咲き始めた花々ともにあっという間に新年度が始まりました。仙台フィルでのオーケストラ生活も9年目に突入。9年だなんて、ここに書いている自分が一番びっくりしています。

さて、お知らせしましたとおり、7月8日の土曜日にリサイタルを開催します。

クラリネット奏者にとって大切なレパートリーのうちのひとつ、ブラームスのクラリネットソナタ第一番。ようやく自分の年齢や経験がこの曲を演奏するのに追いついてきたような気がして、今回のリサイタルで取り上げることにしました。このソナタを中心に、今回は思い切って、私の好きなロマンティックな歌を盛りだくさんでお届けしよう!と考えたのがこのプログラムです。
ドイツのライプツィヒで活躍していた音楽家たち。そしてピアノを弾いてくださる田中絢子さんも、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のアカデミー生として舞台に立っていた方。ロマン派の作品を通して、ありのままの自分を表現するのは今の私にとってとても大きな挑戦です。

今回クララ・シューマンの3つのロマンスop.22を取り上げるにあたって、クララの本を読み、古い映画を見たりしながら、クララについてずっと考えています。夫であるロベルトから見たクララ、とか、ブラームスからみたクララ、ではなく、クララ自身の視点からみたクララの人生について。知れば知るほどに、クララは幸せだったのだろうか、と思わずにはいられません。
ピアニストとしては小さい頃から60年にも渡って第一線で活躍し、万人に認められ大成功だったクララですが、一方で私生活は苦悩ばかり。幼少期から彼女を演奏家として成功させようとする父親の厳格な管理のもとにあり、父親の反対を押し切ってようやくロベルトと結婚できたあとはひっきりなしに妊娠しながら家族の面倒を見、経済状態を支え、思うように練習ができない葛藤をかかえています。クララには自由がありません。
作品は短調のものが多く、過度な装飾がなくシンプルで、美しさの中にいつも憂いと陰りを帯びている印象です。でも何度も繰り返し聴き、何度も繰り返し楽譜を眺めていると、私はときどきとても自由に感じる場面に出会うことがあります。現実では制約の多い生活をしていたクララですが、音楽の中では心が解き放たれていたのかなあ、などと思いを馳せながら練習しています。
夫のロベルトを亡くしたあとは作曲することをやめ、ブラームスとの特別な友情関係に支えながら亡き夫の曲を各地で演奏し続けていきます。子どもたちを病気で失ったり、自身もリウマチに苦しめられ彼女の困難は終わることがありません。でも、ブラームスの作る素晴らしい作品を受け取ったときや、彼が成功を収めたとき、クララは泣いてしまうほど嬉しく、深く感動したと書き残しています。ブラームスがクラリネットソナタを書き上げたのは彼が61歳、クララが75歳のころ。彼はクラリネット奏者ミュールフェルトを連れてクララのもとを訪れました。二人の演奏するソナタを聴きながら、彼女はどう感じていたのでしょうか?大きな喪失感を抱え続けていたはずのクララの心にも、きっとこの曲が深く染み渡っていったことでしょう。

今回のリサイタルで演奏する曲とは違いますが、クララの作ったピアノ三重奏曲はとても素晴らしいので、ぜひ聴いてみてくださいね。

7月の演奏会では、音楽に詳しい方も、そうでない方もお楽しみいただけるように少しお話を交えながら進めていきたいと考えています。ぜひお気軽にお越しくださいませ。ご予約、お問い合わせ先は以下のとおりです。

一般社団法人ミュージックプロデュースMHKS
070-6625-9244
info@mhks.jp


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