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窓越しの世界・総集編 2018年11月の世界

11/1【始まりは、終わり】
いつもとは違う道を通るだけで、旅をしているような気分になる。

知らない場所や知らない景色は、新しい気持ちをくれる。

通り過ぎて振り返った景色は、もう決して同じ気持ちを与えてくれることはないだろう。

秋が深まるということは、冬が始まるということ。
始まりは、終わりということ。

11/2【その感覚】
生きていく過程で、「これは違うな。」
そう思うことを受け入れる許容範囲が、少しずつ広がってきた気がする。

それで良かったことも、悪かったこともあるだろうけれど、
きっとどこかがターニングポイントになっていて、
悪かったことの領域が確かに広がっていた感覚がある。

でもその感覚を知れたことは、経験値として必要だったと振り返ることができる。

11/3【僕だけの意味】
歌の音程のこと。
針の穴を通している感覚を目で確かめることができる時代。

プラスマイナス数セントの誤差を見ながら声を出すことに、僕は意味を感じる。
ただ、それを聞く誰も、そこに意味を感じないだろう。

意味は感じないけれど、それが音楽として素晴らしいと体感できるはずだ。
例えばコンピューターの0と1の羅列を知らずとも、快適にPCを使いこなす人達がいるように。

そこには、僕だけの意味がある。

11/4【失敗の効能】
寝付けない夜。

失敗を不甲斐ないと感じて、悔やむこと。

失敗を仕方ないと許して、見過ごすこと。

失敗の効能は、大きく異なる。

11/5【暖かい雨が降る夜】
確かなことを、確実に続けること。細く長く、じっくりと取り組むこと。
誇張せずに、身の丈をわきまえて、自分のするべきことを見つめること。

脇道に逸れたことも、行き先違いのバスに乗り込んだこともあったけれど、
時間をかけて育むことの、本当の意味での実感が始まっている気がする。

耳をすますと、たくさんの虫の音、真夜中のヘリコプター。

暖かい雨が降る夜。

11/6【そこへたどり着く手段】
あの頃はわからない。

あの頃は響かない。

だけど或る日突然、理解できたりする。

それは繊細で、紙一重で、がむしゃらさだけが、そこへたどり着く手段。

11/7【瞳たち】
木枯らしにはほど遠いけれど、これから来る季節を確かに予感させる夕暮れ時の風。

大学の構内に見たのは、瞳。たくさんの瞳だった。

今と未来を見つめる瞳。彷徨う瞳、瞳の数だけ輝いている瞳。

僕にはもう二度とできない瞳たち。

11/8【トトもきっと同じ】
トトが捕まえて来る昆虫が変わった。秋はバッタの季節なんだな。

夏にトトが捕まえてきた蝉やトカゲ、秋のバッタ。はたと気がついたのは、
僕も子どもの頃に、それらをよく捕まえていたということ。

田んぼや山を駆け巡って、冒険をするのが好きだった。
いつのまにかそれは部活動や習い事に変わり、自然と触れ合わなくなった。

僕は何のために蝉とかバッタとかを追いかけていたのだろうか。
好奇心の赴くままとしか、説明がつかないけれど、
トトもきっと同じだろう。

11/9【僕なりに】
外へ出るといつの間にか雨上がりで、湿度が高い。
11月だというのに、まだまだ暖かい陽気が続いている。

濡れているとも湿っているともつかないアスファルトを早足で行く。
約束の時間を少し過ぎているけれど、ほんの少しだし、誰かも遅れてくるだろうと思っていた。

遅れたことを誰も咎めなかったし、さらに遅れてくる人も、やっぱりいた。

それぞれの心遣いで、この世界はできている。というか、保たれている。

それを感じて、それとの距離を、ちゃんと感じてみる。

僕なりにしかならないから、僕なりに。


11/10【イミグレーション】
居心地の良い場所を求めて、ここを離れる。

僕の人生は、常に居心地の悪い場所からの移動の繰り返しだった。

振り返れば、放浪でも、旅でもなく、イミグレーション。

もうどこにも行かなくてもいいような、そんな安住の地を求めて。

11/11【居心地】
ファミレスの居心地の良さと、東京の街の居心地は似ている。

親切だけれど、干渉することはなく、相手がどこの誰かなど、誰も気にしていない。

一見、冷たく機械的にも見えるけれど、今の僕にはどうも居心地がいい。

11/12【ワンコードのメロディー】
どこかへ行けそうで、どこへも行けない。

突き抜けそうで、撃ち落とされる。

ごまかしが効きそうで、効かない。

ワンコードでのメロディーの立ち回り。

11/13【あの世とこの世】
酉の市の花園神社は、なんだか、あの世に続いているみたいだった。

華やかな熊手を掲げて歩く人々。
熊手を後ろから見ると、表のお目出度さはなく、安っぽそうな台紙にホチキスのような跡。

僕はちっとも欲しいとは思わなかった。
商売繁盛、光と陰。この世そのもの。

歩き疲れた僕は新宿駅のホームでしゃがみ込む。遅延電車を一つ見送った。
特にこの時間の新宿駅は好きじゃない。
まぶたの裏で、眩しすぎる光がまだチラチラしている。
やっぱり、あそこは半分あの世で、半分この世だった気がする。

駅を背に歩き始めると、雨が強くなりだした。ギリギリ傘なしで歩けるから、そのまま歩いた。
想定外に長くなった外出。トトは怒ってるだろうな。早く会いたいな。

家について扉を開けると、トトの雄叫び。
抱きあげて、抱きしめる。

11/14【諦めの悪さ】
僕は諦めが悪い。往生際も悪い。良く言えば、根気強いとか、粘り強いとも言える。

詰まったままの排水管と対峙して二日目。

根本的には、どこかで詰まっていることに間違いは無いだろうし、ただそれだけのこと。

排水管をイメージしてみる。排水管のことを考えてみる。

もう一度ホームセンターで道具を買う。

結局、水の流れた時の喜びが、僕の諦めの悪さに輪をかけて行く。


11/15【ささくれた心には】
ちょうど信号が赤になったので、脇道にあるカー用品店へ立ち寄る。

目当てとは別に清掃用具が気になって、洗車をしようと思い立った。

不機嫌なまま家を出たささくれた心には、掃除、整理、整頓が効く。

11/16【積み上げては崩れ】
あの時のアレと、今のコレを癒合させてみる。
一歩先の未来はそうやって作られていく。

JTの声と僕の声、響きがこんなに融合したのは初めてではないだろうか。

気がつかないうちに、またまた崩れていた声の修正をするうちに見つけたのは、
いつかは断念した筋肉を使った発声。

積み上げては崩れを繰り返しているけれど、崩れた後というのは前よりも高く積み上げられる。

そして高く積み上げるほどに、また崩れるはず。
そしてまた積み上げる。

11/17【宇宙と人体の謎】
古い天文台で宇宙の話を聞いていた僕は思っていた。

宇宙の謎と、僕の体の中の謎は似ている。

果てしなく大きな世界と、限りなく小さな世界。

僕はどうやって、この体を動かしているだろうか。
新しく見つけた歌い方が、どうなっているのか。
僕の体の中では、何が行われているのかを知りたい。

11/18【あしたあたりはきっと筋肉痛】
スポーツ選手は数年先を見据えている。
筋肉も技術も、1日にして成らず。

筋肉を使ったら休めてをして、毎日少しずつ作るしかない。

また始まってしまった新しい試みを、テレビに映る2年後のオリンピックを目指す選手たちと重ねる。

明日はあたりはきっと筋肉痛。

11/19【与えられた幸せ】
外を駆け回るトトを追いかける。どんな行動をしているのか密着しようとしたものの10秒も経たないうちに見失う。

たまに思う。トトにとっての本当の幸せとは何か。

僕にとっても、自分の望むものが本当に幸せなのだろうか?などと思う。たまに。

少なからずも、僕はこの世界の上にある幸せという形を与えられながら生きている。

だから、僕が思うトトの幸せを作ってあげることで良しとさせていただこう。

11/20【塩梅】
炒めた野菜と肉に、牛乳と塩こしょう、バター、小麦粉で、クリームシチューが出来上がった。

味噌と酢、唐辛子で、なんとなく豆板醤ぽくなる。

腹筋、背筋、横隔膜、オトガイ筋、舌、唇、で作られる声。

塩梅によって、違う味になる。


11/21【二つの小】
大を知る小と、大を知らない小。同じ小でも全く違う。

大は小を兼ねるけれど、小は大を兼ねることはできない。

同じ音量でも、大きなスピーカーで聞く音と、小さなスピーカーで聞く音はまるで違う。

声にも同じことが言えるらしい。

リミットを超えてみて、手に入れた小を噛み締めながら自転車で家路につく秋の夜。

11/22【あっさり】
積み上げたものは、あっさりと崩れた。

あっさりと崩れて、あっさりと前よりも高いものが積み上がった。

新しいものが生まれる時は、あっさり。

今までのことが嘘だったかのように、あっさりだ。

11/23【一喜一憂】
昨日は面白いように決まったサーブが、今日はどうにも決まらない。
そんな記憶が蘇る。

今も昔も、体というのは、そう簡単には新しいことを身につけてくれない。

そして少しでも気をそらせてしまえば、折角見つけた感覚もスルスルとこの手からこぼれ落ちる。

ただ、声を出した瞬間、これは違うという感覚だけが頼りで、そこからが修正の作業。
あの頃はがむしゃらにボールを打つしかなかったけれど、今はちょっと違う。

トライアンドエラーを繰り返しては一喜一憂する毎日。

11/24【そのボタン】
テレビゲームの中ではリセットボタンを何度も押して、最初からやり直した。

中学に上がる時、野球からテニスに。高校を卒業する時はテニスから音楽へ。
人生の岐路では、なんとなくリセットボタンを押したような気持ちになった。

それ以前の自分を断ち切って新しい歩みを繰り返すことが、DNAに刻まれているかのように。

それから随分長い間押せていない、そのボタンのことをふと考える。

セーブして、セーブして、上書きして、上書きしてきたこれまでの人生。

今はもう効きそうにないそのボタンのことを、ふと考えてしまう。

11/25【嘘】
自分の中で日々繰り返される、嘘。

その嘘の類は、刻々と変化する。

嘘をつくその痛みから逃れたくて、そのために頑張れることがある。

それは一つ、歌だったりする。

11/26【罪深い気持ち】
生きているだけで生まれる、ゴミ。

例えばここから見える街の、ゴミだけを見えるようにしたら。

おぞましい。

ゴミは隠されて、捨てられる。捨てられたその先でも、また何かに隠されていく。

この机の上に積まれた領収書を見ていると、やみくもに、罪深い気持ちになる。

11/27【磨いている】
昔は歌を作っているということが、歌っているということが、誇らしかった。

でもその心は、いつの間にか社会の風に晒されて、くすんでしまった。

今、それを覆い隠していた沢山の肩書きを取りはらって、もう一度磨いている。

毎日、少しずつ、少しずつ、磨いている。

なかなか光ってはくれないけれど。

11/28【トトを見ていればわかる】
正直になるということは、責任を伴う。

正直になるということは、無責任でもある。

正直になるということは、自分の嘘を暴くこと。

正直になるということは、トトを見ていればわかる。

11/29【また明日】
夕方の散歩。そして昨日と同じリハーサルスタジオ。

昔は苦手だったリハスタの空間が、今は心地いいい。
完全なプライバシーと、時間制限にも集中力が冴える。

これまでを覆すことがどうしても必要。それだけは痛いほど感じる。

疲労と判断力の低下に行き詰まりを感じる頃、時間を知らせるランプが点滅を始めた。

また明日。

鯖の塩焼きを食べて、また明日。

11/30【総動員で】
眉間に集まる音の響き。
違う解釈で同じ響きを知っていたけれど、なかなかうまく行かなかった。

上から見るとただの円だったけれど、横から見たら実は円柱だった。みたいな話。

そして、横からだけだと、長方形にしか見えなかったりする。

約束の時間が1時間遅くなったから見つけられた響き。

眉間に集める意識を持つだけで、導かれる響き。
これまでの沢山のことが連動して、その響きを補助している。

総動員で。

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