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「はじまりの灯り」演奏者紹介・四人目の灯り|ピアノ「中村大史」

「青をえらべば」のピアノは中村大史(アニー)くんです。

(フルバージョンはご支援者へ公開中です)

2020年5月8日。アニーくんからピアノのテイクが届いた。

ああ、、アニーくんだ。。そう思った。

音楽をしていて、僕が一番好きなのは、音がその人らしさを携えている瞬間に出会う時だろう。僕はそれを、無垢と巧みの掛け合わせだと解釈している。

楽器と心が繋がれるようになるまでの時間を、僕は知っているつもりだしそれは単純な技術の問題でないということもだ。

そして、答えはない。

あるのは、自然科学という前提。

その海を僕らは航海する。

たまに宇宙にまで思いを馳せたりもするが、結局大海原に戻ってくる。

音楽って、反応することだと思う。反応して、寄り添うこと。

それは、僕にとっての音楽。

寄り添える喜びも、寄り添えない時の苦しさも、また音楽。

コロナ禍で、僕は思ったことを書いた。

この想いを、誰の音と共有したいかって考えた。

青くさくて、ダサくて、かっこよくない、無防備な僕に向き合ってくれそうな音楽家。

アニーくんが思い浮かんだ。

その日の夕方も、僕は一人公園で空を見上げていた。

アニーくんのピアノが入ったばかりの「青をえらべは」を何度も聞いた。

缶ビールが無くなって、近くの酒屋にもう一本買いに行った。

「冷えてますよ~。」

そういうお爺さんが差し出した缶ビールは、そんなに冷えていなかった。
公園に戻って、もう何度か聴いた。

君の「青」は、「青」のまま伝わらないだろう。
ここにある「青」という文字は「黒い」のだ。

意味でなはく色彩で捉えると、そうなる。

僕の「青」は君の「青」ではない。
その「青」、、色で捉えましょうかね?
そういう前提は、、まあ、必要だけど、

アニーくんは、きっと、僕の言う「青」に、ちゃんと応えてくれる。

例えばそれが、僕の思っていた「青」でなかったとしても、僕はその「青」を僕の「青」に混ぜてみたくなる。

音楽をする時、それが一番大切なことかもしれない。
音楽だけじゃないと思うけど、音を重ねてほしい相手とは、一緒に旅へ出るくらいの気持ちなのだ。

そして実際、音は旅に出る。

数日前、アニーくんが新しいスタジオに遊びに来た。
近況を語り合って、ちょっとだけアニーくんがピアノを弾いた。

密閉されたビルの一室の、一箇所だけ外が見えるようにこだわった窓の向こうで、梅雨空が曖昧な夕闇を迎えていた。

季節外れの冬の曲だった。

アニーくん、いつもありがとう。

中村 大史 / Hirofumi Nakamura
1985年、北海道生まれ。
幼少期より親しんだピアノや、その後出会ったギター、ブズーキ、アコーディオン、マンドリン、バンジョー、ハープ等の楽器を用いて、演奏・作曲をする。
tricolor, John John Festival, O’Jizo 等のケルト・アイルランド音楽バンドでの国内外の演奏活動、アコーディオンデュオmomo椿* での創作活動、様々なライブサポートや録音参加、芝居・コンテンポラリーダンス・映像の音楽を担当する等、活動は多岐に渡る。東京芸術大学音楽環境創造科卒。

アニーくん


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