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窓越しの世界・総集編 2018年6月の世界

6/1【本当の自分】
知らない場所が心地よいのは、本当の自分でいられる気がするから。

同じ場所に留まると、自分を形作るものが、自分以外になってくる。

でもそれは自分自身が作り出している虚像だと想像はつくが、たまには知らない街で映画をみたり、お茶をしたりする。

そうすれば、また本当の自分と向き合う気持ちになれる。

6/2【僕の器】
歌も、スタジオも、カフェも、「場」だ。

僕は、場を作り、そこに集う人々を想像する。僕はそこには居なくていい。

アイディアを形にした後は、誰かが育ててくれる。僕の役回り、というかキャキャパッシティは、きっと、そこまで。

6/3【たちまちにゆく】
おもてのキラキラとした光に誘われて、さっそうと自転車を漕ぎ出した。ギターを弾いていると午前中はたちまちに行き、空腹とともに街へ出かけたのだった。

行きつけのレストランはお昼時で随分待ちそうだったのでパス。同じ並びにある少し値の張るシーフードレストランへ。
価格の割にお腹が満たされないランチだったので、追加でフィッシュ&チップスやビールを注文。

パソコンを開き、一仕事終えると午後もたちまちに行きそうな気配。

そして今度は長い夕暮れ時に誘われて、知らない路地や、エアポケットのような公園で、夕涼み。

6/4【インタビュー】
話尽くせないことばかりだから、あまり話さなくなった。

何をどのくらい話したらいいのかとか、これは必要のない話だとか、考えながら話す。

解釈によっては、とらわれ方が変化するような言葉へのセンサーがフル稼働する。

6/5【古い友人】
古い友人に会って、話をしているような感覚。

時間が経ってみて初めて、あの頃がどんな時代だったのかが沁みてくる。

音楽を通じた古い友人が、僕にもできたのだ。

6/6【季節が動く雨の日】
湿った空気の冷たさの中に、すこし重たさを感じる。

季節が動く雨だと思った。今年の雨の季節は、どうかな。

昼間から缶ビールを開けて、休息とする。

6/7【そのための10年】
やらないためにやること、を考える毎日。

たくさんあることを、収束して、シンプルに生きる。

それに気がつくための10年であったと、思うのです。

6/8【濡れたサドル】
2件目のカウンター席へ座ると、にわか雨が始まる。

その店では何を話していたのか、あまり思い出せないけれど、一軒目の中華料理屋でしていた話しに輪をかけたようなものだったのだろうと思う。

帰り道では、雨ざらしにしていた自転車のサドルが冷たい。

家に着く頃、あいつは今頃どの辺りだろうかと、はるばるこの街まで会いに来てくれた旧友のことを思う。

6/9【よくやっていた】
46曲を続けざまに歌うと、少しだけタイムトラベルをした気持ちになる。

およそ十数年分の記憶と、その時々の思いや風景が駆け巡るので、そんな風に例えられよう。

ただこうして今振り返ってみても、しっかりと向き合えるから、その時々の僕はよくやっていたと思う。
 
6/10【煙の中の住人】
数年ぶりに訪れたそのカフェも、かつては月に一度必ず訪れていた。
 
タバコの煙が想像以上に辛い。

あの頃もタバコはやめていたけれど、まだ白い煙の匂いなんかに得体の知れない幻想を見ていた気がする。

もうあの煙の中の住人ではない僕は、少し寂しくもあるけれど、戻りたいとは思わない。

6/11【母の背中】
さっき新宿で別れた母の小さい背中を思っている。小田原あたりでは、夕焼けが綺麗だそう。

こちらの空では相変わらず、雨が降っている。

今の僕は何もかも背負いすぎて、故郷まで背負って帰れない。

6/12【インタビュー】
家の前で踵を返し、スーパーマーケットまで。よく冷えたビールを買った。

晩酌をしながら、「あの言い方では無い方がよかったかもしれない」とか、くどくど考える。

インタビューはライブと似ている。

6/13【去年の今頃】
中華料理屋で夕食をとり、帰宅すると、ニャーと一声でお出迎え。

今日も夕暮れ時が気持ち良い。

そういえば去年の夏は、梅雨明け前の方が夏らしかった。

トトもまだ生まれていなかった、去年の今頃。
 

6/14【せい】
久しぶりに時間の流れが穏やか。

それは気分のせい。

それは天気のせい。

それはこの街の静けさのせい。
 
それは武蔵野うどんのせい。

6/15【枯渇】
夕食は作ることにした。冷凍してあった米を蒸し、同じく冷凍してあった肉を解凍。適当に切った野菜と炒める。
味付けは塩とバルサミコ酢。その間にグリルで鯖を焼き、全てが暖かい状態で食卓へ。

食事を作る時間は好きだけれど、明日からの演奏に備えたいという思いの方が強い。

こんな時、母や祖母のことを思う。家族という集合体の中にも役割分担があり、それぞれの持ち場を全うする機能が、かつてあった。

1日の中で使える集中力の枯渇が進んでいるから、そんなことを思う。

6/16【遠い昔からの友達】
記憶は確かに生きている。まるで過去の自分を映す鏡と対面しているような感覚。

話せば話すほどに、タイムカプセルを掘り起こす心地がする。

遠い昔からの友達。
 
6/17【夏の音の始まり】
蝉が鳴いている。

サウンドが加わると妙に物語るようになる風景。

まだ一匹。明日はどうかな。

途切れ途切れで、空耳が連なっているみたいで、曇り空に不釣り合いな、夏の音の始まり。

6/18【霧雨の向こう】
あの茂みは国有地だという。きっと小さな生態系がそこには有り、ここから見えるすべてを宇宙のように感じている生き物が、確かにいるのだろうと思う。

いつか、何かの弾みで競売にかけられて崩壊するのかもしれないその宇宙から、今日も命が聞こえてくる。

霧雨の向こう。

6/19【まるまる】
トトはguzuriの中と庭を行ったり来たり。たまに尻尾をホウキのようにして物凄いダッシュで帰ってくる。トカゲをくわえていたり、頭に蜘蛛の巣をひっつけて帰って来たりもする。

遊びつかれて帰ってきた後の、深い眠りのなかでまるまるトトを見ているだけで幸せな気持ちになる。

まるまる一日を経理に費やしてた僕も、そっとドアを開けて夕食にでかけた。

6/20【雨の第二東名】
土砂降りの夜の高速道路。雨が激しくボンネットを叩く。

雨足が強くなるにつれてトトの鳴き声も高鳴る。ずいぶん前から気がついているが放置している雨漏りと、視界のわりに路面状況がとてもよい第二東名。

実家に着く頃には雨は上がり、少しひんやりとした空気が清々しい。

6/21【後の祭り】
彼らは呼ばれたから来ているのだと、終わってから気がつく。
 
僕も呼ばれたから来ているわけだけれど、こういう場合は僕の方がリードしなければならないのだと、何度か同じような体験をしているにもかかわらず、また同じ失敗。

とくに手応えもないままの受け答えが続き、後の祭り。

どんなインタビューでも、心して行かなければならない。

6/22【終電車の顔】
真っ黒なガラスに映り込む自分の顔を久しぶりに見た。

かつての、毎日その顔を覗き込んでいた頃を思い出す。まだ何も始まってはいなかったけれど、何かがきっと始まると、そう信じていた頃。

終電車にゆられる今夜の僕は、また違う何かを信じている。

6/23【本当の言葉】
場が用意されなければ、生まれない言葉がある。

インタビューや結婚式のスピーチだったり、第三者が見ている公の場所。

昨日の父の言葉はそれだった。面と向かっては絶対に出てこない本当の言葉。それがショーになるとわかっているから出てくる、そういう言葉がある。

決して嘘ではない、本当の言葉が。

6/24【美しい時間】
夕焼けの美しい時間が流れていた。夕陽を浴びたトトが傍でまどろんでいる。

僕はその間、誰にでも優しくなれた。

タクシーから降りてきた突然の母の姿も、少し遅れて来るときたメールも、全部が自然の成り行きだと、そう感じられた。

6/25【止むを得ず】
暑い日の蝉のまだ鳴いていない景色というのは、どこか拍子抜けというか、それでいて強く心を惹かれる。

音を消した映像を見ているようでもあり、夢の中の風景のようでもあり。

こんな日は、なにもかもやめてしまおうかと思うけれど、罪悪感が込み上げてくるので、止むを得ず立ち上がる。

6/26【正しいこと】
気を抜くと、音楽以外の仕事が山積みなので、そっちに引っ張られてしまう。

だから、しのごの言わずギターを手にして、それ以外はそっちのけ。

正しい、それが正しい。

6/27【今年も?】
行きはスムーズな内回り。帰りの外回りは断続的な渋滞。

環状7号線から目黒通り。

梅雨らしく無い晴天に、去年の、梅雨の方が夏らしい空が続いていたことが思い出される。

今年もそんな感じ?

6/28【風の日】
ここ数日は兎にも角にも、風が吹き荒れている。台風の吹き返しのようで、さらに生ぬるく、異様。

その割に雲の動きが速いわけではなく、風の音さえなければ穏やかな午後の空。

しかしこれでは、夏を待つ風の日。

6/29【先日と同じ】 
先日と同じく御殿場付近で豪雨に見舞われる。

先日と同じように雨漏りが始まり、トトも鳴き始める。

先日と同じように次第に雨があがり、やっぱり心地よい風が吹いた。

6/30【さみしくないように】
口の周りや舌の使い方、腹部の動きを指揮して息を吐き出すと、声は思い通りの響きになってくれた。

その歌声で緊張はほぐれ、自分の気持ちとそしてオーティエンスと向き合えるようになる。

母は僕のことを誇らしいと言った。

この街を離れて、20年。さみしい思いをさせているだろうから、もっと頑張ろう。

僕の歌がいつもそこにあって、さみしくないように。

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