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窓越しの世界・総集編2017年3月の世界

3/1【春の足音】
朝からせわしなく働いていたが、ふと公園に目をやると、冬枯れた野芝のところどころが明るい。

春の足音は「風」から「芽吹き」に歩みを進めている。
 
3/2【曖昧な空】
昨晩の冷え込みから本格的な雨に変わり、ストーブを焚く喜びと再会。

夜になり雨が上がると、また少し暖かくなった気がする。

曖昧に動き続ける、空。

3/3【春のあとさき】
朝のムーミン谷。

紅葉したあけぼの杉の、なんとも言えない穂先が風になびいている。

さっきまで暖かかったコーヒー。ひんやりとしたムーミンの家。

石のベンチに腰掛けてギターを爪弾くと、メロディーが生まれた。

ひだまりと風がぎこちない、春のあとさき。


3/4【覚悟】
夜の高速道路。夜景の美しいサービスエリアで少し休んだ。

嫌な予感がしたから、大切な人に電話をした。

私が消えてしまう日は、突然おとづれるのかもしれないから、覚悟して毎日を過ごそう。

そんな気持ちが生まれた夜。

3/5【失望と期待】
梅の花が香る。
 
春ほど一年の経過を感じる季節はない。

私は私に失望もするが、同じくらい期待もしている。

3/6【どちらだろうか】
直前まで判断をしないことがよくある。

計画を立てることができないのか、計画をぎりぎりまで立て続けているのか。

どちらだろうか。
 

3/7【思い浮かばない】
目まぐるしく変わる空模様。夜になって冷たい風が吹くと、忘れかけていた冬が顔を覗かせる。

街道沿いのハンバーグレストランへ、なんとなく車を左折させた。店舗下の駐車スペースは。あの時と違ってガランとしている。

今夜、大震災のすぐ後に来た以来のこの場所に吸い込まれてしまったのは何故だろう。空腹のせいだけでなはい。

6年という歳月を刻んで、あの頃と変わっていないことを探してみても、すぐに思い浮かばない。

3/8【ささやかな幸せ】
寄り道をしたい気分を引き止めたのは、冷蔵庫の中のハイボールと唐揚げ用の鶏の肩肉。

醤油に浸し、小麦粉を雑にまぶして油に飛び込ませた。

ついでに野菜の素揚げと、はんぺんの素揚げ。

冷蔵庫の中が満たされている、ささやかな幸せ。
 
3/9【そんな瞬間】
私が伝えたいことを、君は知りたいだろうか。

君が伝えたいことに、私はしっかりと耳を傾けているだろうか。

嘘はついていないけれど、本当のことも話してはいない。

少なくとも、そんな瞬間は存在する。

3/10【まっすぐな仕事】
人を幸せにする仕事を見た。

誰かの為の、まっすぐな仕事だった。

3/11【読書の森】
そこに留まるということ。

そこから離れるということ。

選択肢があるのは、この森が変わらずに、ここにあるから。

3/12【大切なほど】
名残惜しいくらいがいい。

大切な時間ほどに。

3/13【大黒ふ頭】
港の仕事人達の横顔に、どこかしら異国情緒を感じるのを、なんとなく楽しんでいた。

大黒ふ頭を往来するピックアップトラック達。私もその中の一台に紛れ込んでいるが、83年製のシボレーではその景色に馴染めない、か。

3/14【夜のスーパーマーケット】
食品がライトアップされた陳列棚の照り返しに浮かぶのは、仕事を終えた人たち。

夜のスーパーマーケットの、こんなに居心地が良いのは、私も同じように疲れているからだろうか。

それとも。

3/15【36回目の季節】
奄美のラム酒お湯割りで温まった体に、冷たい風。
 
タクシーの大行列に並ぶのをやめて、歩くことにした。
 
そんな選択ばかりして歩いてきた。ときどきはその行列が羨ましくて、眩しかった。

36回目の季節。

3/16【人の心】
心の移ろいは、徐々にだったり、瞬間であったりする。

まるで、季節のように。

3/17【しんしんと積もる】
便りのない日々が続く。

もう二度と会えない人の事を考える。

悲しみや寂しさは、しんしんと積もる。

3/18【つまらないこと】
遠い記憶をたぐり寄せると、私が笑顔でいた理由はいくつもあった。

本当に嬉し時というのは、笑顔にはなれないのかもしれない。

でも、本当って、なんだろう。考え始めると、つまらない。

3/19【何頭でも】
続けていることが、増えてきている。

二頭追うものは一頭も得ず、とは実に短時間的な発想。

長い時間をかけて、何頭でも追い続ければいい。
 
3/20【どちらでもありたい】
留まる人でいるか、動き続ける人でいるか。

どちらでもない。

ということは、どちらでもありたい、ということか。

3/21【幸せの種】
巡り逢えた「喜び。」

時が経つと、巡り逢えたという「幸せ」に変わり始める。

幸せの種は、日々撒かれている。

3/22【我慢するということ】
慌ててストーブを焚いた。

我慢できる寒さというのは、実は一番芯まで冷えてしまうようだ。

人の心も同じだと思う。

3/23【日々を捧ぐもの】
久しぶりに来た珈琲店の高い窓。まだ冬枯れた木々が象徴的な窓越しの景色。それでも、木々の梢を拡大してみれば、無数の蕾をたたえているに違いない。

私のしていることにも、春は訪れるだろうか。

簡単なことが、一番難しい。

歌うだけのことに、こんなにも日々を捧げている。

3/24【コロッケ】
デコボコしたコロッケが食卓に並ぶ。

デコボコしているけれど、とても美味しい。

丸くなってほしいとは、全く思わない。

3/25【ハンバーグ】
デコボコしたハンバーグが食卓に並ぶ。

デコボコしているけれど、とても美味しい。

そのうち丸くなっても、味は変わらないでいい。

3/26【見物料】
代々木公園前でタクシーに手を挙げた。運転手に話しかけると、その何倍かの情報量が返ってくる。無愛想よりはいい。

渋滞を避けても、また渋滞。

歩けば良いのだけれど、窓越しにごった返す雨の渋谷の街を見ているのが心地よかった。

メーターがどんどん上がっていく。
 
この景色の見物料だ。

3/27【過去も未来も】
海を見ていたのは数分だった。

高い波と青い空の太平洋が目に入って、とくに何かを回想したりしなかったののは、今が素晴らしいということに違いなく、過去も未来もすべてがここにある。そういうことだったと思う。

3/28【当たり前のようでも】
言葉が通じるということと、話が通じるということは違う。
 
当たり前のようで、見落としていることが沢山ある。

3/29【子供の頃よりも】
腹ペコでたどり着くと、積もる話と暖かい食卓。

私はもう大人だけれど、子供の頃よりも、子供でいることを受け入れている。

3/30【坂道を選ぶ理由】
急な坂道をわざわざ選ぶ理由がある。

この街に帰ってきたら、この場所へ来よう。

そう思ってシャッターを押す風景がある。

3/31【季節を埋める雨】
春にしては肌寒く、冬にしては暖かい。

季節を埋める雨が降っている。今年もどこからか聞こえるのは、軒先から滴る雨粒が手すりを叩いているような音。

ガムランのような、カリンバのような音。

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