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窓越しの世界・総集編 2018年8月の世界

8/1【さよならを告げる日】
公園のはずれにある小さな橋の上からの夕焼け。

あの夏に見た夕焼けを今も忘れないのは、抱きしめたいという歌にその景色を閉じ込めたからだろうか。

あれからの沢山の出来事に別れを告げるのは、今日でなければいけない気がした。

8/2【guzuriという青春】
guzuriってなんだったんだろうかと思い返すと、それは一つの青春だった。

青春は永遠ではない。でも、青春という類の時代は人生のなかで何度も巡るものだと思う。

僕は今、次の青春に足をかけている気がする。

そして、それが本当に青春だったのだと思えるのは、まだずっと先のことで、僕はその時を楽しみにしている。

8/3【スコールの後】
タクシーを探し回ったあげく、結局あきらめて歩き始める。
空は次第に晴れて、くっきりとした輪郭の「夏なんです」と言わんばかりの入道雲が見えた。

スコールのような雨の後は余計に蒸し暑く、スタジオに向かいながらタクシーを探す。
やっと捕まえた頃には、もう随分と歩いたあとだった。

スタジオに到着して、歌いはじめて気がつく。おや?

歌いなれない曲を歌えばさらに分かる、自分の今の状態。

あまり良くない。修正していかなければならない。

8/4【何かが違う】
昨日から続く、あまり良くない状態。なんとなく身に覚えがある。
ある程度まで上達した時に感じる停滞感はスポーツと似ている。
  
毎日練習しているから尚更感じるそれとじっくり向き合う。

まだ何かが違うなと思いながら夜が更けて行く。

8/5【新しい研究課題】
ライブへ向かう車の中でも、いろいろな響かせ方を試す。

鼻腔共鳴は、あまりそれに気を回すとムラがあったので、最近は意識していなかったが、
ここ最近のアプローチに追加する方法で試す。

なかなかよかったのでライブ直前まで予習をしていたけれど、まだまだ難しい。
 
しばらくはこの方法を研究して行くことにする。

8/6【後頭部の響き】
後頭部が響く。声に道ができるポイントを見つける。
その響きに覚えはあるけれど、響きすぎてコントロールできなかったのでこれまで見送っていた。

最近は声帯の筋肉をコントロールすることを意識してきたけれど、それとミックスさせてみる。
響きすぎていた音が落ち着いて、歌になる気がした。

日が落ちて涼しくなった夜道を歩きながら何度も試す。
きっと僕の歌はもっと良くなる。
 
8/7【その多くに】
雨。昨日とは15度も気温差があるらしい。

依然として雨の日はエンジンのかかりが悪い愛車だが、点火プラグを磨くと嘘のようにエンジンがかかった。

こんな風にちょっとした加減で良くなることが、この世の中に一体どれだけあるだろう。

しかしその多くに気がつけない。とても簡単なはずの、その多くに。

8/8【矛盾という秩序】
外は台風の影響で風が強い。生暖かい風と高い湿度のせいでスタジオのエントランスの自動ドアは霧掛かったように曇っている。

嵐の接近する街の雰囲気というものに不謹慎な胸騒ぎがして、この気持ちは子供の頃から変わらないなと思った。

見渡せば、この世界は不謹慎なもので溢れている。この世界そのものが、矛盾という秩序を抱えて見える。
 
8/9【道がないなら作るしかない】
下腹部を意識的に使うことを、この頃はしていなかった。
後頭部から鼻腔共鳴へ導く空気の圧力を生むために、下腹部の使い方を見直す。

10年くらいかけて歌への様々なアプローチをしてきたけど、ここ最近はすべての連動が鍵となってきている。

耳を動かすことが難しいのと同じように繊細で、感覚の掴みにくい様々な筋肉へアプローチをしてきた。
その一つ一つを丁寧につなぎ合わせる。

毎日コツコツやるしか道がない。道がないから作るしかない。

8/10【僕も同じ?】
探し物が見つからない時というのは、探してもいない物ばかりが見つかる。

持ち主から戦力外通告を受けたものたち。来ないかも知れない出番を待つエフェクター。

忘れられたものたち。

もしかしたら僕も同じ? 
なんてことが頭をよぎる。

8/11【雨宿り】
珈琲店から眺める雨。レーダーによるとしばらく雨雲は停滞しそう。

ハウスブレンドを注文したのは、この店の雰囲気を信頼したからで、アップルパイを注文したのも同じ理由。味は、期待通り。

古いアーケードの商店街に佇む小さな珈琲店。
 
いつもは通り過ぎてしまうけれど、
不意の夕立が教えてくれた。

この街で僕の憩えそうな場所を。

8/12【深夜の書店にて】
賑わう深夜の書店も、終電車が終わると次第に落ち着きはじめる。
それでもお盆休みのせいか、ぞくぞくと車が入って来る。やけに高級車が多い。
 
特に目当てはないけれど本屋をうろうろするのは楽しいし、なにかしらの出会いが待っている気がしてすこしワクワクする。

僕はインターネットで手軽に入る情報よりも、本で得たものに運命を感じてしまう。そこには手触りがあってページをめくる動作や、紙の擦れるおとなんかが一体となって体に入って来る感覚がやっぱり好きだ。

そして今夜も一冊の本と出会ったわけで、その本が僕に何を与えてくれるのかを、とても楽しみにしている。

 
2階のラウンジでゆっくりするのは今年始めてだろうか。

8/13【浮き足立った街】
スーツ姿が少ない休日の電車。世間は連休の真っ只中。
駅で買ったビールを飲みながら乗車しても周囲の目が気にならないムードが漂っている。

映画を観てから夜の街へ。

連休で街は賑わい、人々もどこかしら浮き足立っていて、
そう、僕はそんな雰囲気がとても好きだ。

8/14【朝一番のオアシス】
先日の雨の日に見つけた珈琲店。ランチタイムは想像以上の賑わい。

一人で来ると、この時間はお気に入りの席に座れないことや、相席で混み合っている場合はPCお断りだということ、この街に古くから住んでいそうな常連客が多いという事がわかった。

14時以降は喫煙可能なので少し居心地が悪くなる。
この店は朝一番のオアシスにしようと思う。
 

8/15【タバスコ】
このところ酢がマイブームで何にでもかける。
昼飯の冷やし中華にも、サラダにも、野菜炒めにだってかける。
 
とにかく酸味が欲しい。そして辛味。

今、好物はなにかと聞かれたら、タバスコと答えてしまいそう。

8/16【同じことのようで】
声の出し方をノートに書き留めるようになってどのくらい経つだろうか。

記憶の限りだとかれこれ15年になる。
はじめの頃はタバコを吸っていたので、その因果関係とか食べ物とか。キリがない。
 
最近書き留めることは、よくよく読み返すと同じようなことが繰り返し書かれている。

でも、同じことのようで少しだけ前へ進んでいる。

8/17【強い風】
季節の変わり目というのがはっきりとわかる朝。
空気と光の質が明らかに変わって、なんとなく自分まで生まれ変わったように気持ちになる。

今日みたいに気持ちのよい空気が生まれるためには、台風や昨日の嵐のような風の後だったりしなければならない。

僕の生活も大きく変わろうとしている。
 
強い風を感じる。

8/18【どっちなのか】
振り向けばトト。

僕がギターを弾き始めると目を閉じ眠り始める。

遊んで欲しいのを諦めてふて寝しているのか、それとも気持ちよく聴いているのか。

どっちなのだろうか。

8/19【その瞬間から】
この季節にしては珍しく富士山が望めるのは、季節がだいぶ傾いてきたということ。

日が沈むほどに燃え上がる空。刻々と姿を変える雲。
さっきまで賑わっていた海の上には夕暮れ時の凪を横切るヨットが見える。

海岸沿いにチラチラと車のヘッドライトが輝いていることに気がつく頃には、夕闇がグラデーションを始めていた。

確かに美しいものを見たけれど、僕はその瞬間から何かを失ってしまったような気がしている。

8/20【諦めと決意】
通り雨。
 
傘を持ってきていないので只々濡れるしかない。

こんな時の無力感は嫌いではなく、僕そのものを意識できる良い機会になる。

何年か前に指を切ってしまった時も、僕という「物そのもの」を感じた。
雨が止むのを待つしかないのと同じように、傷の治癒に向けてひたすら待つしかないのだった。
 
そして僕が望む状態になるためには、しのごの言わずそのために尽くすしかない。

諦めて、潔く決意をもつだけ。
今日も歌いギターを弾くだけ。

8/21【悩ましい】
今は不必要だけど、いつか必要になりそう。そんなものに囲まれて生活している。

物を減らすのに四苦八苦しているのに、ボロボロのギターケースにたまりかねて、
新しいギターケースを買った。

スピーカースタンドも必要だし、ツアー用のキャリーバックは壊れている。

今まではすぐに両方買っていたけれど、今とても考えている。
とりあえず、キャリーバックはリュックや手荷物で代用できるし、日常生活でとて
も邪魔になることが目に見えているのでやめておこうと思う。

スピーカースタンドは、とても悩ましい。
 
8/22【理屈という潤い】
乾いたスポンジが水をたくさん吸い込むような感覚。

今までやっていたことに、理屈という潤いが入ってくる。

何だろう、この懐かしい感覚。
そうだ、授業だ。予備校の教室だ。
 
あの頃と違うのは、僕はたくさん予習をしていて、復習もするだろうということ。
  
8/23【形を変えて】
午前中の快晴から空は目まぐるしく、台風接近のムードが漂う。

場所を作るということは曲を発表するのと同じで、自分だけのものから、それに関わる
それぞれのものになる。
 
guzuriもそれに違いなく、guzuriがあることで繋がった関係、またguzuriがあり続けけることで繋がり続ける関係がある。

今日の話し合いで、guzuriは今後形を変えて存続する方向になった。
そして、僕の作り上げたguzuriという場所は、一つの曲のように僕の手の中にありながら、誰かの物語に変わっていく。

8/24【伝えるということ】
いざ人に伝えようとすると、分からなくなることがある。

それを説明する術を持っていないこと、それに対する理解力が未熟だったことを痛感する。

そんな時は、また少し成長するきっかけを得たと、そう思うことにしている。

人に伝えるということは、伝えたいそのもの以上のことが求められる。
 
8/25【もっと知りたい】
知らない街の知らない街角。

初めて会う風景や人々。

でも、僕の音楽はずっと前からこの街に来ていて、彼らは僕に出会っている。

そんな街や人々を、もっと知りたい。

8/26【盾】
目を開けて歌えなかった頃。
視界と歌の世界のギャップで、歌うことができなかった。
曲間のMCなんかは戸惑いでしかなく、ぶっきら棒だった。

歌が上手くなりたいと思った理由の一つは、照れ隠しだったのかもしれない。
 
誰もが納得する品質を盾に、歌の世界に没頭できるような。
 
最近は随分と目を開けられるようになった。次は目力だと思っている。
 
人前に立つからには。自分を守りながら魅了する強さが必要だ。
無防備な歌の精神を貫ける強さが。

8/27【新しい感覚】
自分の弱さを見つけることが楽しい。

それを克服するには時間がかかるけれど、どうにもならない事だと思えないことが嬉しい。

じっくり丁寧に、少しずつしか変われない。
 
少しずつ変われることの喜びを感じている。

ギターを爪弾く右手の人差し指に、新しい感覚。
 
8/28【クッとなる】
バス停で手を振る彼らを、心の中で抱きしめていた。

想像するのは、僕の居ない彼らの日常。
なぜかは分からないけれど瞼の裏にそんな風景を想像してしまう。

台所や、店のカウンター。街角のスーパーマーケットや、海。夜の街灯の下を歩く後ろ姿や、川沿いのファミリーレストラン。

少し胸がクッとなる。

8/29【旅の跡】
昼食をと外に出ると少し涼しい。ビーチサンダルをパタパタと言わせながら歩く。

けたたましいサイレンが街道を飛び交うのが耳につくほどに、大分の空が恋しい。

なんとなく手に取った小説の中の風景描写も佐伯の海にかき消されるので、なかなか文字を追って行けない。 

天気予報を見ていても、視線がふらふらと九州地方へ泳いでいる。

旅の後、しばらく残る、旅の跡。

8/30【居場所】
集まる人を見ていて思う。

人は自分の居場所を求めている。

僕は自分の居場所からそれを眺めていた。

「あなたの居場所がちゃんとありますよ。」

そう伝えることから始めてみようと思う。

8/31【大粒の雨】
車が動かなくなって立ち往生。雷が鳴り響き、暫くすると大粒の雨が降ってきた。

涙を必死で堪えていたような限界まで溜め込んだ最初の一粒がこぼれ落ちると、
堰を切ったように止めどなく降り始めた。

その後の青空は美しかった。

今日の空のように、最後に泣きじゃくったのはいつだっただろうか。
すぐには思い出せないけれど、
ふとした瞬間、小さな涙が溢れていることが増えている。

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