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日本社会党とは何だったのか 番外-伊是名炎上問題を考える①-

(敬称略)

はじめに

 伊是名夏子の旅行中におけるJR職員との間で来宮駅での下車に関するやり取りをしたブログの内容が、伊是名の自分勝手さが表れているとして各方面で炎上めいた反発を招いた。私は伊是名本人の当該文章を読んだが、おそらく、伊是名は来宮駅に降りたいという主張は法律上当然にして認められる権利であり、JR側は来宮駅にエレベーターがないのであれば駅員が対応して対応すべきなのにそれをしないのは理不尽であると主張したいのだろう。それは伊是名が従来から新聞のコラムなどでも主張してきた要求であったが、今回はブログおよびツイッター上に自身の主張を掲載した結果、反発した人たちによって炎上を引き起こしたと言える。

私の見解

 私は、来宮駅で駅員4人が人を併せて200kgある車いすを運ぶことは、万が一駅員がバランスを崩して、駅員および障害者に対する事故、大けが、障害を負うリスクが発生することを考えた場合、たとえ差別的対応であるという批判が当事者や当事者を支持する人たちからが出されたとしても、エレベーターで対応できる熱海駅での下車をJR側は主張するべきだったと考える。代替案として2km程度の距離の差による熱海駅での下車は、来宮駅によるバリアフリーがなされていない状況で車いすを抱えて人を運ぶことで生じる可能性があるリスクを防ぐためにやむを得ない措置ではないかと考える。

 もちろん、JRがコスト面を理由に障害者をはじめとした高齢者、妊婦、ベビーカーを使用する人に対するバリアフリーがなされていないということは問題である。そもそもエレベーターについては一人車いす関係者だけが必要なわけではない。高齢者など慢性疾患を抱えたり、足腰の衰えにより階段の上り下りがつらい人にとってはエレベーターの設置は必要な装置である。特に無人駅は過疎との関連から高齢者が多いことを考えれば、メンテナンス費用なども含めJRだけでは対応できない場合、国、自治体がもっと積極的に費用を出すべきである。そうした状況に対し、私も含め、私たちの一人ひとりの関心が低いことも問題である。

 また、駅員が車いすを載せた伊是名を運ぶ際に事故が起きたら、駅員にも伊是名にとっても大変な事態であるが、そうしたリスクに言及をした者がほとんどいなかったことも問題であると言えよう。伊是名に反発する側は伊是名の主張がパフォーマンスによるものという考えからそこに考えが至らないのだろうが、伊是名の主張に支持する人たちは障害者の人権を重んじるべき立場の人たちなのにである。伊是名本人が来宮駅での下車を希望したとしても、単にJR側の落ち度だけを要求し、現にそこで起きたかもしれないリスクを意識しないで伊是名の行為を称賛することは、駅員が万が一誤って事故を起こしたらどうするのかという想像力に欠けているという意味で、私は本当に障害者一人ひとりへ思いを寄せているのだろうかという疑問を抱かずにはいられなかった。駅員が運ぶときに事故がなくて何よりという言葉がなかったのもリスクを軽視していることの表れではないだろうか。

SNS上で求められること

 伊是名の主張に対する見解を述べる前に、まず炎上した原因に対してSNS特有の事情があったことを先に述べたい。SNSは様々な価値観、思想、政治スタンスを持つ読者を前提とした空間である。SNSにおいては、SNSが登場する以前に行われた匿名の投書よりもはるかに自身の意見を表明しやすいという特徴を持っており、ストレートに当事者に意見を反映させるという意味では従来の一面的な伝達ではなく、双方向的な要素を持っている。したがって意見を主張する場合には、当然自身と異なる意見、価値観を持つ人間がどのような意見を主張するか、また、意見、価値観の違いがなぜ生じるのかを理解することを前提にしたものであることが、従来のメディア以上に求められている。

 その意味で伊是名のスタンスは自身に同意しない意見、価値観は差別に基づく意見でしかなく、聞くに値しないという姿勢で自身の意見を主張したことが余計反発を招いた側面がある。伊是名は

しかし、その前に一つ申し訳ないと思っているのが、この一件で、悲しみ、不安を抱える人が出てしまったことです。SNSにたくさんの誹謗中傷が書かれ、私以外の人も苦しみ、外出が怖くなったり、まわりの目をより気にしたりする人が増えています。(あえてその言葉をここで書くのは控えます)私の声のあげ方で、傷つき、不安でいっぱいになってしまった方々、本当にすみません。そしてこれから差別的、攻撃的な声に立ち向かうために、繋がっていくことを考えていけたら嬉しいです。
障害者に対する誹謗中傷、攻撃駅、差別的な言葉はやめてください。書いたことは削除をお願いします。障害があっても、当たり前ですが、電車に乗ったり、買い物に行ったり、旅行に行きたいのです。障害者にもやりたいことをする権利があり、人権が守られるべきです。もちろん誹謗中傷をする方々も、一人の人間なので、その人の人権が守られることも願っています。(※1)

と述べ、障害者を誹謗中傷するSNS投稿がなされていたことを主張した。確かに障害者を誹謗中傷する言葉を投げかけるSNS投稿もなされており、誹謗中傷に対してそれらに対して毅然とした態度で否定をすることは当然求められる。ともすると、私たちはネット上での攻撃に委縮しがちであるが、誹謗中傷に反論をする勇気を一人ひとりが持つことが肝要であることは言うまでもない。

とは言え、伊是名への反発はそうした類のものだけではない。大半は彼女の言動は自己中心的ではないかという指摘も少なくなかった。それに対する回答が(※1)に引用したブログ記事なのだが、そのブログ記事を知らせた伊是名のツイッターへの反応も伊是名への反発に満ちていた。伊是名や伊是名を支持する人たちは差別、偏見があるからだとするのだろうが、私は次の箇所が気になった。

SNSに寄せられた疑問に対する、私の考えです。前回のブログで分かりにくかった点や、書いていない部分もあったので、補足します(※1)

コラムニストならプロ意識を

 伊是名の本職はコラムニストだが、であれば一回で読者にわかるように文章を書くのがプロではないだろうか。こういう言い方は私の傲慢さを感じさせるようで嫌だが、アマチュアの私ですら、自分と違う価値観、意見を持った人に自分の意見の背景をどう説明するかということを想定して文章を作成するよう心掛けているつもりである。また、読者のお叱り、批判がなければ書き手は成長しないとも考える。私自身、このnoteはもちろん、ツイッター、5ちゃんねる議員・選挙板、したらば掲示板で私の意見を表明するときはしばしば精神的な緊張を感じることがあるし、投稿しようと思った内容を感情的、誤解を招くと考え、取りやめたことは何度もある。特に、5ちゃんねる議員・選挙板、したらば掲示板は政治問題を扱う掲示板の性質上、批判や反発を受けたことは何度もある。そうした緊張感が伊是名にあるのかと思わずにはいらなかった。

 私にはこの伊是名の今回の引用個所は、プロなのに自分自身と異なる価値観、意見の人に自分自身の背景、意見を理解するための工夫をするための文章を書く努力をしていないことの表れと感じた。まして障害者の問題を語ることは、差別の解消のために差別問題をわかっていない人にどう理解を得るかが大切なのに、わかりにくい文章しか書けないのは余計に問題である。

 社民党は伊是名の問題については伊是名の主張に沿った反応を社民党の広報で行っているが、(※2)知的障碍者への殺害事件が起こったやまゆり園での採火がオリンピックのパフォーマンスに利用されていることに障害者団体が反対していること(※3)については、4月24日現在特に公式のホームページでは表明していない。このことを踏まえると、社民党は本当に障害者の権利向上、差別解消に取り組んでいるのだろうかと考える。(※4)

 今回は伊是名の炎上問題全体に対する私の見解、SNSで自身のコラムを書く姿勢についての所見を述べた。次回以降、伊是名のJR職員とのやり取り、障害者差別の問題、社民党に対する見解について述べていく。

(※1) 

(※2)

(※3)

(※4) もちろん社民党のみならず他の政党、私たち一人ひとりが向き合うべき問題である。

私、宴は終わったがは、皆様の叱咤激励なくして日本社会党の勉強はない、と考えています。どうかよろしくご支援のほどお願い申し上げます。

皆が集まっているイラスト1


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