くらげドロップス

なんの取り柄もない人間だけど一応詩人ってことにしてください。

くらげドロップス

なんの取り柄もない人間だけど一応詩人ってことにしてください。

最近の記事

【短編】さよならの意味を教えて

ダイバーシティの意味を教えてください。外国人観光客らの間で通じる、お台場の通称か何かだと思ってましたが、どうやら違うようです。ではダイバーシティとは一体。単語を直訳してみると、ダイバーは潜水士で、シティは街。潜水士の街。つまり沖縄のことでしょうか。それとも岩手でしょうか。あまり自信がありません。 蛙化現象は恋愛にまつわる言葉のようですが、どのような現象なのでしょうか。手が生えたり脚が生えたりするのでしょうか。だとすれば、手も脚も出なかった高嶺の花をとき伏せてものにしたとき

    • 【詩】常識をください

      常識ってなんですか それって必要なものですか わりと重要な感じですか 持ってないとヤバいですか 世間知らずですか 常識というものは どこで買えばよいのですか どこのメーカーの どこのモデルが流行っていて 色はどれがエモいのですか 定価はいくらぐらいですか 必要経費で落とせそうですか まとめ買いしたら 安くなったりしませんか 送料は無料ですか みなさんは常識 持ってますか 家族や友達や恋人も みんな常識 持ってますか わたしは常識 持ってません そして知りません よくわ

      • 【詩】てへぺろ

        ある日世界は てへぺろに目覚めた てへぺろをすれば すべてが丸くおさまり すべてが赦される世界 ぼくもてへぺろ わたしもてへぺろ 毎日てへぺろ ずっとてへぺろ 料理に失敗したって てへぺろ 悪さして怒られたって てへぺろ 仕事で色々やらかしても てへぺろ 宿題ぜんぶ忘れても てへぺろ てへぺろは正義 てへぺろは優しさ 社会現象のてへぺろ 世間が絶賛するてへぺろ 雑誌をめくれば てへぺろ特集が紙面をかざり テレビをつければ 芸能人がてへぺろについて語る

        • 【詩】うさみみ少女、月へ旅立つ

          彼女は月へと旅立った 美味しいお餅を食べるために 彼女はロケットで旅立った ごおごおと音を立てながら 炎と煙を巻き上げて ロケットは月へと向かったが 彼女は興奮のあまり ぴょんぴょん 機内で飛び跳ねてしまった そのせいでロケットは傾いて よくわからない惑星の軌道に乗って そのまま月をぐんぐん抜き去って どっか消えた

        【短編】さよならの意味を教えて

          【短編】たのしいたのしいゴールデンウィーク!

          今日はとても明るい気分。にこにこるんるんだ。待ちに待った大型連休。胸のビートは高鳴るばかり。ぼくの連休はとてもゴージャス。見事なまでにあっぱれ。なぜならぼくの連休は、することが何ひとつとしてないからだ。心踊るスケジュールなんてものは一片もない。もの悲しい人間だね、ぼくは。でも、そんなことはどうだっていい。余り狂った時間を無為に消費する。それは至高であり愉悦。溢れんばかりの開放感。そう、ぼくは日常から解き放たれたのだ。 ぼくの爽やかな一日は、猫のトイレ掃除から始まる。透き通

          【短編】たのしいたのしいゴールデンウィーク!

          【詩】じんせいをやりなおしたい

          まさか きみに暴かれるなんて 思ってもみなかったけれど そうです これがぼくです だれも知らない あさましい不純物 こころの小箱に ずっと大事にしまってた 父も母も知らない 妻も姉も知らない 見るに耐えない不純物 情けない不純物 きみは丁寧に そして冷淡に ぼくの身体にはりついた 汚らしい虚栄の皮を 一枚はがして 一枚はがして 一枚一枚また一枚 ひっぱがして ひっぱがして 中からなんと 欺瞞なんてものが 虚構なんてものが 愚劣なんてものが あれよあれよと愉快に露出 き

          【詩】じんせいをやりなおしたい

          【短編】愚物のアイデンティティ

          今日は皆さんにご報告が何もございません。かねてよりお付き合いさせていただいているnoteに書くことが一切合切ございません。出だしは以前書いたやつの流用。手抜き。能無し。こんな知恵の足らない私だけど、少しはセンスのいい知的なことだって呟いたりできるのよ!ってとこ披露したいものですが、脳がメルトしてて全くなにも思い浮かびません。 せめて風貌だけでも格好よくなりたい。張りぼてで良いから、メッキ貼りで良いから、なんかこう「あの人けっこうイケてない?」みたいなこと言われたい。私の見え

          【短編】愚物のアイデンティティ

          【詩】ないものねだり

          おーいお茶を飲んで、口の中に出現したイマジナリーおにぎりを味わいながら、どうして丸は三角にも四角にもなれないんだろうって憂愁の想いを募らせながら、今にもこぼれ落ちそうなうろこ雲を眺めていた。なにも考えていない顔をしてみたり、たまに思いつめた顔をしてみたり、羨ましくなったり、妬ましくなったり。きっとそれはお腹がすいているからだ。口の中のイマジナリーおにぎり、ツナマヨ味ばかりで飽きてきて、こんぶ味やたらこ味も食べたいなんて思ったりするけれど、空腹はいつまでたっても満たされなくて、

          【詩】ないものねだり

          【短編】間違いだらけ

          「俺たち男はみんな変態だから」というきみの不適切な発言を赦すことはできない。変態なのは常にきみひとりだけであって、きみを除くすべての男性はきみより上品で聡明だ。きみは事あるごとに、巨乳は美しい、貧乳は麗しいなどと、くだらない戯言を口から発射させることに勤しんでいるようだが、きみのように「エロは世界を平和へ導く」と本気で思い込んでいる能天気屋の珍妙な幸福論は聞くに堪えず、ただ虚しいだけだ。 きみがあんまり白痴めいた言動を繰り返すものだから、ぼくはきみが女房からも娼婦からも

          【短編】間違いだらけ

          【詩】ハッピーバースデイ

          とうめいな炎 ケーキのろうそくに そっと おすそわけしてあげる とうめいな炎は だれにだってやさしい炎 だからなにも奪わない そしてなにも残さない きみの誕生日が来るたび とうめいな炎をあげる きみはただ いつものように なにもしないで 座り込んでればいい 余計なことしたら どうせ大惨事 だからきみはもう 座り込んでればいい ハッピーバースデイ ハッピーバースデイ みじめですね 苦しいですね とうめいな炎が 焼き尽くしてくれる きみの救いようのなさ 無力さ不埒

          【詩】ハッピーバースデイ

          【短編】ともだちがほしい

           女友達が欲しい。猛烈に欲しい。恋愛感情とか上下関係とか、そういうしがらみが介在しない女友達をつくりたい。お互い打算のない純粋で無垢な友情を育みたい。男の友人でも別に構わない。美しき友情の手前、性別などただの記号に過ぎないのだから。そもそも僕ぼっちだから友達欲しい。友達ひとりもいないから欲しい。寂しい。震える。  僕の求める理想の友達像とは、容姿端麗で頭脳明晰で高学歴で優しくて親が資産家で上品な人。そんな人が時折、格式の高いディナーショーに僕を誘って

          【短編】ともだちがほしい

          【詩】沼で溺れるわたしを微笑みながら傍観するきみ

          わたしは沼で溺れていた 沼で死にそうになっていた 満開の桜に囲まれた沼の中心で 春の風に吹かれながら 泥と花びらにまみれて溺れていた きみは優しい目をしていた 沼のそばでふんわりたたずんでいた 桜の花びらを頭にたくさんのせて 春の風に吹かれながら 沼で溺れるわたしに微笑みかけていた そんな危機的状況下 わたしの頭のなかでは きみがくれた遠いことばが 未練がましくリフレインしていた これは 実に都合の良い 悲観的エンドロール 縁どられたふたりの虚像は かすかに 到底叶

          【詩】沼で溺れるわたしを微笑みながら傍観するきみ

          【詩】ぜんぶ嘘

          嘘にまみれたこの日常 嘘が舞い踊る街のなか 僕も私もみんな嘘つき 嘘に喜び嘘に泣き 気づけば嘘に生かされている 嘘が転がる時代の片隅で 嘘を買い漁り嘘を着飾り ありふれた嘘を求め安堵する若者たち 嘘が無ければ満たされない ありふれた嘘という嘘 最近の若いやつは嘘まみれとのたまう じいさんばあさんももれなく嘘まみれ 嘘を食い荒らし嘘を飲み尽くし 湯水の如く嘘を消費し続ける毎日 振り返れば嘘 前を向いても嘘 だって仕方ない嘘なんだもの コンビニは嘘しか売ってないし テレビは

          【詩】ぜんぶ嘘

          【短編】神様お願い

          1 神様聞いてください。私が好きになった人は、みんな私のことを嫌いになります。また、私は変な人からはしばしば熱烈に好かれたりするのですが、私は好きな人から変な人扱いされてしまいます。私は一度好きになったら一途に想い続ける情熱的な性格で、常に献身的であるにもかかわらず、大抵好きな人から嫌われます。しかもその理由は「君、重いから」です。このような理不尽で横柄な仕打ちは到底受け入れられません。原因は私ではなく恋愛至上主義にあるのです。「重い」のは私ではなく恋愛至上主義です。ど

          【短編】神様お願い

          【詩】言われた通りのことができなくて

          未開封のカセット きみはぼくにくれたけれど ぼくは使い方がわからなくて 詩はどこかへ消失してしまった ぼくは言われた通りのことが どうしてもできなくて あの日きみがかけてくれた言葉を 今はもう思い出せないやさしい言葉を 録音するふりだけしている あの日ぼくが燃やしていた理想を 燃えつきて灰になったちっぽけな理想を 再生するふりだけしている ぼくは言われた通りのことが どうしてもできなくて 情けなくて 涙ぐんでしまいます

          【詩】言われた通りのことができなくて

          【詩】アパホテルになりたい

          幼い頃、大きくなったらアパホテルになりたいときみは言った。アパホテルで働くのではなく、アパホテルの建物そのものになりたいときみは言った。それは紛れもなく無邪気で広大な夢に違いなかったし、あの頃のきみであればおそらく実現可能な、現実味を帯びた素晴らしい夢であることに違いなかった。 天真爛漫な可憐さを勢いよく炸裂させるきみの世界は限りなく澄み渡っていた。打算もなければ思惑もない。きみの世界は美しかった。純粋無垢だった。そして無限の可能性が秘められていた。 遠くのアパホテルを

          【詩】アパホテルになりたい