「あーあれなんだったっけ」を卒業し未来の私へ届ける記憶

映画を見たり、旅行に行ったり、漫画を読んだり、舞台を観たり、ドラマを見たり、ドライブをしたりすることが好きなのに、とにかくその時の出来事を覚えておくことが苦手だ。
「あの時楽しかった!」というざっくりした記憶だけが残って、それが一体どんなストーリーだったのか、誰がどんな風にしていたのか、どこで何をしたのか、そういう具体的なことをいつも忘れてしまう。
これじゃいけない、思い出はきちんと残しておきたい、そう思って、いつも何かに書き記しておこう、と心に強く刻み込むだけ刻み込んで、そのことさえも忘れてしまったりする。

だからこれは、私自身のための備忘録。
ほかの誰のためでもなく、未来の私のための記録として、書こうと思う。

あーあの時見た映画、どんな話だったっけ。
あー京都旅行の最後に行ったあのお寺、どの辺りだったっけ。
あーあの時借りた漫画、結末はどんな感じだったっけ。
あーあの時金欠なのに無理してチケットとった舞台、誰が出ていたんだっけ。
あー去年録画して繰り返し見ていたあのドラマ、なんていうタイトルだったっけ。
あーあの時みんなで行ったドライブの途中、偶然見つけた美味しいカレー屋さんどこだったっけ。

とか、そんなことを。
事細かに全てでなくても、印象に強く残ったことだけでも、絶対忘れたくない気持ちだけでも。
「あーあれなんだったっけ」を少しでも減らすために。


小さい頃から、文章を書いたり読んだりすることが好きだった。きっと、幼少期に沢山の児童書を与えてくれた両親のおかげだと思う。
小学生の頃から作文を書くのに手間取った覚えはないし、高校生の頃に書いた読書感想文は卒業文集か何かに掲載された。

密かに小説家を目指していた時もあった。いや…密かではなかった。どちらかといえばおっぴろげだ。
小学生の頃は同級生を登場させた自作の小説を書いていたし、卒業式には児童一人一人が卒業証書を受け取る際目標か夢を発表する決まりがあって、私は声高らかに小説家になる!と宣言したような気がする。

だけどそのうち、こう思うようになる。
あれ、私…ユーモアがないな、って。
全然面白味のない人間だな、と中学生の時点でなんとなく自分を諦めた。
だからこうして文章を書いても、オチもドラマチックな結末もあっと驚く展開もないかもしれないけれど、いいのだ。
だってこれは私のために書くのだから。
統一感なんてこれっぽっちもなくて良い。忘れたくないな、いつか思い返したいな、そう思えることを、なるべくなるべく、鮮明な記憶のままに残しておきたい。

書き残しておかなければ簡単に記憶から薄れてしまうような出来事ばかりの人生だけれど、忘れたくないという気持ちをせめて忘れないでありたいと思う。


未来の私へ、覚えているかい。
そういう気持ちで、私は今、書いているよ。

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