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ババアになったら何を着よう。

現在29歳、20代最後の1年を迎えている。
人間いつ死ぬかは誰にもわからないので、私もあと何年生きられるかはわからない。

あと40年生きた自分を想像する。
40年後、69歳。
言い方は悪いかもしれないが、その頃私はババアだ。これは今を生きる69歳の女性たちをババア呼ばわりしているわけではなく、ただ単純に、歳を重ねた未来の私自身のことを、私はババアと呼びたいと思っている。カッコイイババアになっていたいと心から思う。
そして考えるのは、40年後の私は、どんな服を着ているだろう、ということだ。

服にこれといってこだわりがなかった小学生時代。母から買い与えられる服をなんの疑問も持たずに着ていた。なぜなら服を着替えなければ小学校へ行けない。パジャマで学校へ行くのは恥ずかしい、それだけだった。
そんな私がただひとつだけ持っていたこだわり。「スカートは履きたくない」だった。
幼い頃から、いわゆる「女の子らしい」こどもではなかった私は、昼休みは校庭を駆け回っていたし、おままごとやお絵描きをするよりはドッジボールや鬼ごっこに精を出していた。
その頃の母は、言葉にはせずとも、せっかく産んだ娘にせめて少しでも女の子らしくしてほしいと多少は思っていたかもしれない。両者の意見の妥協地点はキュロットだった。それもあまり履かなかったけれども。

中学校へ上がると、制服を着なければいけなかったので、6年間履くことのなかったスカートを履くことになった。女子生徒用のスラックスは無かった。
でも不思議と制服ならそれほど拒絶感が無かった。みんな同じスカートだし、それが長いか短いかだけの違いで、履いていることへの違和感も大して無かった。それは高校の制服も同様だ。
ただ、制服以外でスカートを履くことは無かった。そもそも一着も持っていなかったし。

「スカートは履きたくない」に込められている想いは、大きく分けて2つある。
一つは、動きにくい。大股で歩けないし、しゃがむ時や座る時に周りの視線を気にしなければならないのが面倒だ。社会人になってからも一時期制服でスカートを履いていたが、重い荷物を持ち上げたりひざまづいたりする時にとにかく不便だった。

そして二つ目。服装において、私は私に「女性らしさ」を必要としていない。
もし今私が「女の子なんだから可愛い格好をしたらいいのに」と言われたら、即座に「今着ているこのTシャツとデニムが私にとっての可愛い格好です」と答えるが、幸運なことにこれまで私に対してそんなことを言う友人や知人は一人もいなかった。
好きな格好、好きな髪型、好きな喋り方をしている私を否定する人はほとんどいなかったのだ。(仮にいたとしても気にしない性分なので覚えていないだけかもしれない)
髪も短いし、化粧もほとんどしない、男の子に間違われることが多い私に、「女の子らしく」なんてしょうもないアドバイスをする人がいなかったことはとても幸せなことだと思う。

メンズの服を着ることもある。
ユニセックスデザインが好き。
でもスカートを履く女の子も素敵だなと思う。
シルエットの綺麗なドレスを見れば美しいな、と思う。
ただ私がそれを履きたいと思わないだけだ。

「自分には似合わないし…」とか「男の子みたいな自分がスカートを履いたら変だから…」なんてことも全く思っていない。
ただ、履きたくないのだ。
それは私にとっての「可愛い」ではないから。

日々、すれ違う人や電車の向かいに座る人の服を見る。性別や年齢に問わず。
レトロな柄シャツを着ている人を見かけると、思わずどこで買ったんですかと聞きたくなる。
カラフルで個性的なスニーカーを履いている人を見かけると、ついどこのブランドですかと話しかけたくなる。
おじいちゃんが服を買うような紳士服屋さんを覗いて、あのシャツ可愛い…!と目を奪われることもある。

個性的でオンリーワンなデザインも好きだし、シンプルで定番のデザインも好き。ちょっと背伸びしたハイブランドも憧れるし、身近なプチプラも使い勝手が良い。
何にも誰にも制限されない自由がファッションにはあると思う。
髪が長い男性も、髪が短い女性も、スカートを履きたくない女の子も、スカートを履きたい男の子も、どちらにも属さないジェンダーレスも、メイクをするしない、ヒールを履く履かない、それらは全て個人の自由で個人の意志だと思っている。なんでも選べたらいいし、それが当たり前になったらいいと思う。
40年後の日本で、それらがどのくらい変わっているかは想像がつかない。

カッコイイババアがダメージデニムパンツを履いていたら、すれ違う若者に笑われるのだろうか。
私なら絶対一目惚れするけど。

私がババアになったら何を着よう。

ひとまず、レトロな柄シャツを羽織って、ダメージデニムのパンツを履いて、とびきりカラフルなスニーカーを履こうかな。

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