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スタートアップ転職を考えてる公務員の方へ

隣の芝は青く見える。お堅い組織の公務員から見ると、自由そうなスタートアップは魅力的に見えませんか?
スタートアップ企業っておもしろそう、かっこよさそう、行政より意思決定がヘルシーそうと思い転職を考える公務員は私だけじゃないと思います。

世の中はだいぶ変わりました。今ではスタートアップ企業で働く = ギャンブルみたいな考え方は少なくなっています。スタートアップでも大企業に引けをとらない収入が得られるようになりました。

3年前に初転職でスタートアップに転職した私ですが、「公務員辞める前に誰か教えてといてよ!」って思ったことを、経験を振り返りながらお伝えできればと思います。

結論:3つの大事な要素

スタートアップ転職における特に大切なことは、次の3つです。

1/ 次の仕事を決めてから退職する

仕事が決まらないときの不安は凄まじく大きいです。必ず次の仕事を決めてから退職しましょう(大半の方は退職前に次の仕事を決められると思いますが…)

「何が得意ですか?」と聞かれたときに、
「多くのステークホルダー間の調整が得意です。」と答えるあなた、ビジネスにおける調整は、10部署の合議を取る調整より断然大変なのでその調整能力は差別化要素になりません。

「マネジメントが得意です。」と答えるあなた、公務員は退職する人も少なく、年功序列制度があるのである程度決まったフレームの中で人事異動が行われます。つまりピープルマネジメントの重要性が非常に低いです。あなたが考える「マネジメント」と民間企業が求める「マネジメント」は同じものではありません。

組織内で重要な仕事をしていた・重要なポジションに担っていたとしても、過信は禁物です。「私ならたぶん大丈夫」なんて思わずに必ず次の仕事を決めてから退職しましょう。

2/ いい会社を選ぶ

いい会社の定義はさまざまですが、「キラキラしてそう」や「かっこよさそう」みたいなイメージで決めるのは避けましょう。"何の事業"で、"誰と"働くかでその先の人生は大きく変わります。

「スタートアップ」という粒度ではなく、事業は成長しそうか、事業に自分自身が共感できるか、そのチームで働きたいか、この人と働きたいか、といった具体的な粒度で判断しましょう。

スタートアップは大企業と比べ不安定ですし、成長速度が速いぶん、絶えず変化が起こります。そんなとき、その会社で働く意義を自分の中に持てていないととても大変です。

「自分にとっていい会社」を選びましょう。

3/ 年収に固執しない

終身雇用・年功序列制度の中で得ている年収は、能力に比例したものではありません。極論、立ち振る舞いだけでも出世できることもあるので、そういう人はスタートアップでは全く通用しません。

全てをリセットする覚悟を持ちましょう。それができない方は退職しないことをおすすめします。

スタートアップは年功序列制度じゃないので、成果が伴えば年収の上がり幅は公務員の比じゃありません。入社時は低くても、成果を出せば上がります。なので、会社を探す段階では年収にこだわり過ぎないことをお勧めします。

ただし、人事制度が一定整っている会社であるかどうかは確認しましょう。


ここからは私のスタートアップ転職の経緯をお伝えできればと思います。
きっと3つのうち1つくらいは共感いただけると思います。

私の経歴

公務員と一言で言っても職種は数多くあります。
ご自身と似たところがあるかを見つけていただくために私の公務員の頃の経歴を簡単に説明します。

高校卒業後、国家三種(税務)で採用されました。
税務署(8年/内2年は研修) → 国税局(4年)→国税庁(3年)と、合計15年勤めました。

経験した業務は大まかに以下のようなものです。
税務署:窓口業務、研修会講師、税務調査、総務
国税局:組織運営、年間事業計画策定、情シス
国税庁:組織運営、国会対応、記者発表、システム開発

いざ、退職

2018,2019年はいろんなことがあり、激務真っ只中でした。消費税軽減税率、元号改正、森友学園問題、住宅ローン控除計算誤り、etc…
33歳の国家三種公務員の月給が100万円くらいになるほど残業手当がついていた、と言えばイメージできるでしょうか。給料の半分以上は残業手当です。

それでも、自分がやるしかない、という謎の責任感のみで働き続けていましたが、ある日プツンと糸が切れ、退職を決意しました。
少しでも組織に迷惑かけないよう定期人事異動に合わせたこともあり、決意から退職までは数週間くらいだったと思います。

このとき、妻は妊娠4ヶ月でした。
私は、妊娠中の妻がいるにも関わらず、次の職を探す前に退職したのです。「明日仕事辞めるって言おうと思うんだけど?」と聞くと「いいと思うよ」と一言。
妻には感謝しかありません。

正直なところ、国税組織の中ではかなり評価されており、それなりの役割を担っていたこともあり、仕事は何かしら見つかるだろう、とたかを括っていました。

転職活動スタート

有名転職エージェントを頼るも見つからず

いざ、転職活動を始めたものの、初めての転職活動で何をしたらいいかわかりません。

とりあえず転職エージェントに登録して相談しに行ったのですが、どのエージェントも示し合わせたかのように「高卒、元公務員、33歳は紹介が難しい」と「紹介できるとしてもリクルートくらい」の2つを言います。

当時の私は「リクルートってじゃらんとスーモの会社」くらいの認識で、「冷たくあしらうエージェントが口を揃えて言うくらいだからちょっとヤバい会社なんじゃ…」と思い、お断りしました。

この時点でエージェント経由の道は閉ざされました。

※その後、リクルート社の偉大さを知って当時の自分をぶっ飛ばしたいと思いました。私に仕事を教えてくれた上司・同僚はほとんどが元リクルート社員で、リクルート社ですさまじい実績を出されている方々です。

スタートアップ向け採用媒体はスルーの嵐

困った私は知人に相談し、当時流行りのスタートアップ向け採用媒体に登録し、かなり丁寧に職歴を記載しました。

気になる会社に「話を聞いてみたい」と連絡するも、90%の会社から返信がありません。
反応いただけた学生ベンチャーが1社あり、オフィスにお話を聞きにお邪魔したところ、「うちは一定の学力が必要だから」と言われ、学力テストを受けることに。当然、現役東大生が出題する学力テストを高卒の私が解けるわけもなく、悲しい気持ちで帰路につきました。

この時点で採用媒体経由の道は閉ざされました。

友人の仕事を手伝うことで食いつなぐ日々

全く仕事が見つかる気配がないし、どうすれば仕事を見つけられるのかもわかりません。
幸い、Excelをめちゃくちゃ使いこなせたので、コンサルティングをしている友人の会社でアルバイトをしながら食いつないでいました。

とても稼ぎのいい人で、かなりの高時給で雇ってもらえたのでなんとかなりました。彼には感謝しかありません。

とはいえ、半年後には子どもが産まれる私は定職を見つける必要があります。

奇跡的に職を手に入れる

ふとした瞬間に、こんなやりとりがあったことを思い出しました。

公務員退職前の1年間は激務の日々で、私の上司たちは心の病でお休みされていました。そんな事情もあり、本来であれば上司が出るような会議に私が出席することもありました。

私が退職する数日前、とある会議で1度だけ話をした某省の方から「人事異動になりました。その節はありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。」と丁寧なメールをいただきました。

私は、「来週で退職します。仕事はこれから決めるんですけどねw」と返信したところ、
「個人的には、xxxってスタートアップがおすすめですよ。もし興味あるなら行ってみてください」とある会社を教えていただきました。

記憶の片隅から必死に会社名を思い出し、ネットでその会社を見つけ出し、HPから応募しました。

面接では不合格の評価をした人がいたらしいんですが、COOが「いや、雇ってみよう」と言って雇ってくれました(入社後にこの話を聞いてゾッとしました)。
雇用契約内容は、アルバイト、月給30万円でした。

よく考えてみると奇跡の連続です。
1/ 上司が仕事に来なくなる
2/ 代わりに出た会議で1度だけ会った方が人事異動となる
3/ その方が丁寧にメールをくれる
4/ 会社を教えてくれる
5/ 不合格になったけどCOOの直感でギリギリ雇ってもらえる

何一つ自分でコントロールできない偶然の連続で仕事を見つけることができました。これを奇跡と呼ばずしてなんと呼べばいいのでしょうか。

当時、周りの反応はこんな感じでした。
「10人ちょっとの無名のスタートアップだよね?www」「頼りにされる男で月給100万円だったのに、アルバイトで月給30万円?www」「辞めなきゃ偉くなれたのにもったいないなーwww」

そんなの関係ないんです、仕事が見つかっただけで万々歳だったのです。

就職から3年間

入社後は、転職エージェントで受けた対応や採用媒体でのスルーの嵐を思い出し、「この仕事を失ったら終わりだ。」、その恐怖と戦いながら必死に働きました。

数ヶ月が過ぎたころ、子供が産まれ、同時にCOVID-19時代の幕が開けました。妻子はコロナが落ち着くまでは地方の実家に疎開してもらい、単身赴任生活の始まりです。

自分一人だったので、基本的に寝る時間以外は土日関係なく仕事か勉強ばかりしていました。

周りの人が非常に優秀だったおかげで、3年の間に社員数は5倍、売上は数百倍(元々が少なすぎw)になり、会社もそれなりに有名になりました。
私自身、アルバイトから正社員となり、BizDev→マネージャー→執行役員といろいろな仕事を経験させてもらい、収入もかなり増えました。

藁にもすがる思いで入った会社がこんなに成長し、tech企業で全く役立たずだった私が素晴らしい同僚のおかげで多くの経験を得られたのです。

採用媒体で「話を聞きたい」と連絡したどの会社よりも小さかった会社が、3年でどの会社よりも大きくなりました。

こんなフェーズに立ち会えたのは、入った会社が良かった、これ以外の何物でもありません。ただの奇跡です。

おわりに

現在、私は転職活動中です。
3年前とは違い、いくつかの会社や知人からお誘いいただけるようになりました。この中にはスタートアップだけでなく超大企業もあります。

私は運が良かっただけです。
もちろん努力はしましたが、努力をすれば必ず良いようになるなんて甘いものではありません。"どこで"努力するかは非常に重要なファクターです。

国税の仕事は、振り返ってみると、ものすごくやりがいがありました。辞めなきゃ良かったかなーなんて思うこともたまにはあります。
離れてみないとわからない魅力は間違いなくあります。

そして、スタートアップはそれはそれでとても魅力的です。

どちらを選ぼうとも、自身が幸せならいいと思います。仕事は幸せ実現の一要素でしかありませんから。

スタートアップへの転職を考えている公務員の方の一助になれば幸いです。

隣の芝生は青く見える。

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