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【読書感想文】たいせつなこと

サン=テグジュペリ / 河野万里子 訳『星の王子さま』を読んだ。

調べたら、何冊も版があるようだ。

私が読んだのは、平成18年に発行された新潮文庫のもの。

『星の王子さま』は読まず嫌いしていた。

昔から評価は高い本だし、読んだ人は絶賛する。

へそ曲がりなところがある私は、じゃあ別に私がわざわざ読まなくてもいい、と思っていた。

でも最近、そういうことをいつまでも言っているから、私の世界は狭いのだと思いなおした。ネットの古本屋のラインナップで見つけたのを機に、買って読んでみた。

感想。。。

難しい本だ、と思った。

ものすごく平易な日本語だし、物語もどんでん返しがあるとか、凝った作りで息を飲むスペクタクル! というタイプではない。

小さな王子さま(実際にスモールサイズ)が、砂漠に不時着した飛行機乗りの「僕」の前に突然現れて、摩訶不思議な交流をするというお話。

この王子さまと出会うなら、私は不時着した砂漠ではないところがいいと思ってしまったけど、そういうところでないと、出会えない人だったのかもしれないとも思う。

「いちばんたいせつなことは、目に見えない」

ボアという巨大な蛇がいるそうだ(「僕」の話)。どんな巨大な獲物も丸呑みして、そのままじっとしていて、消化を待つような、すごい蛇。

図鑑で見たその蛇の絵を描いて、その蛇の腹の中を描いて、幼少の「僕」は笑われる。周りから理解されない。

でも王子さまはひと目で「僕」の絵を、ボアの絵だと見抜き、描いて欲しいのはボアじゃなくて小さいひつじだと、細かく要求してくる(なんでバラを知らない王子さまがボアを知っているのかと思うけど、それはそれ)。

王子さまとの出会いとは、「僕」の自分を取り戻すための出会いだったのではないか。

大人や周りの言うことに従って、絵をあきらめた「僕」。

自分の本当の気持ちや、子供みたいだからと「なんで、なんで」と問うことをあきらめた自分を思い出す。

大人になるとは、あきらめること。

大人になるとは、多少の分からないことも飲み込むこと。

大人になるとは、変なことも当たり前にしてしまうこと。

大人になるとは、たいせつなものが分からなくなっていくこと。

なんと切ないことかと思うけど、私もそうだなと思う。

あきらめて、いつしか見失って、目に見えないたいせつなことを蔑ろにする。

でもそれは、本当は「大人になること」と同じじゃなくて、ただ人生を上手く乗りこなそうとするための、処世術を身につけただけ。

上手く乗りこなすといっても、周りと同調できるから、生活しやすいというだけのこと。

それも大切なことではあるけど、たいせつなものや、たいせつなことは、自分で繋がりをもち、絆を繋いで、動いてこそ見つかるもの、分かるもの。感じられるもの。

だから目に見えない。

目に見える、そこに既にあるものが、あなたにとって本当にたいせつなものかどうかは分からない。

唯一無二のたいせつなものかどうかは、あなたが感じなくては、判別がつかない。

目に見えないのは、たいせつなものが、そこにあるのが当たり前ではないから。人それぞれ違うものかもしれないから。

そういう直感のような感覚や、疑問や、あなた自身がたいせつにしたいことを見失わないで。

大人の「僕」は、王子さまとの出会いでそれに気付く。

私も自分がたいせつにしたいものって、何だろうと思う。

見えなくなっていること、きっとある。

たいせつなものは、自分の感覚を研ぎ澄まして、そして疑問を持って、考えて、分かっていくものだから。

難しいなという感想を持ったのは、王子さまの問いかけが、一筋縄ではいかないものばかりで、私が「まとめる」のは、間違っていると思うから。

目に見えるもの、目に見えるようにしたものだけが、この本で伝えたいことではないと思うから。

何度も読み返したいという人の気持ちがよく分かった。

私も一度だけの読みでは、物語をなぞることもできていないなと感じる。

よき出会いでした。

【今日の英作文】
霜焼けの手を保護するために四六時中手袋をしている。
I'm wearing gloves the whole time for the purpose of protecting my frost-bitten hands.

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