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ひとりで美術館ハシゴ旅/6.青森県(前編)ーArtとTalk㊶ー

皆さんこんにちは、宇佐江です。
今回は、1つの都道府県に的を絞り美術館を複数めぐる「ひとりで美術館ハシゴ旅」第6弾、青森編をお送りします!
ちなみに前回はこちら↓

青森。美術ファンなら一度は訪れてみたい憧れの県です。昔勤めていた会社の社員旅行で青森自体は行ったことがあるのですが、団体行動で予定も決まってましたし、美術館はまったく行けず。
ここ数年、ずーっと、「行きたいな。行きたいな。」と思い続けて今回念願が叶いました!
しかもハシゴ旅シリーズ初の飛行機&お泊り。
交通手段等、今後行かれる方の参考になればと丁寧めに書こうと思うので、記事も2週に分けてお届けします。
いざ出発!


☆「ひとりで美術館ハシゴ旅」について☆

・記事の内容は宇佐江個人の主観や感想に基づくものです。公式なものとは一切関係ありません。
・タイムスケジュール優先の旅ですので、各展の適切な鑑賞時間より短い場合があります。
・美術館に関する情報は、各施設のHPや広報等を一部参考にしております。
・館内はスタッフさんに確認の上、写真撮影しております。
・情報は当時のものです。実際に行かれる際は各公共交通機関や施設の最新情報を必ずご確認ください。


(本文はエッセイ形式でお送りします。写真by宇佐江みつこ)


①11:40~12:40/弘前れんが倉庫美術館

◆開催していた主な展示『蜷川実花展withEiМ』

どの角度から見ても素敵。

訪れた日:2024年4月の平日
移動①…名古屋空港8:10発→青森空港9:30着(飛行機)/青森空港9:55発→弘前駅前10:49着(空港バス)/駅から徒歩20分

ついに来たか。
いつかは挑戦しなければならぬ日が来ると覚悟はしていたひとりフライト。もともと飛行機が苦手なので、多少乗り継ぎが面倒でも可能な限り電車でこれまで旅してきたが、今回、「名古屋から東京、東京から青森」という新幹線乗り継ぎプランと最後まで迷った結果、現地で過ごせる時間が長いことを優先し、しがみつける相棒(連れ)がいない代わりに両肘掛けをしっかりと握りしめて離陸の恐怖に耐えた。FDAのCAさんが、笑顔を絶やさないチャーミングな方で勇気づけられた…。接客業の鑑。

青森空港からの連絡バスは意外と混んでた。お手洗いに寄って乗り込むと、ほぼ満席。席にあぶれたら乗車できず1時間もロスしてしまうところだった。汗汗。
弘前駅前もめっちゃ混んでいた。なぜなら、日本一の桜と名高い弘前さくらまつりがまさに今、開催中なのである。会場の弘前公園まで行く100円バスには信じられない大行列。特に、外国からの観光客が目立った。
私はようやく乗り物から解放され、地図を見ながら美術館へとのんびり歩く。天気が良くて暑いくらい。寄り道したパン屋さんで買ったりんごジャムパンを、道端の桜を見ながら食べた。

青森といえば、アーティスト・奈良美智である。
世界的に大人気な奈良さんの、出身がこの弘前市。れんがの建物に入るとすぐ、大きな白い犬の作品があった。青森県美の「あおもり犬」が有名だけれど、ここのつるりとした犬もとっても愛らしい。若き日の、くわえ煙草で絵を描いている奈良さんの写真がかっこよくてしびれた。

弘前れんが倉庫美術館は2020年に開館したばかり。けれど、建物自体には長い歴史がある。1923年に日本酒工場として始まり、その後国内初となる大規模なシードル(りんごの発泡酒)製造に挑み「朝日シードル株式会社」が立ち上がる……。

「えっ、アサヒシードルって、もしかしてあの!?」

図書が並ぶスペースにパネルで紹介されていたこの歴史を読んで、思わず声が出そうになった。ウチの近所でも売っているシードルのラベルのやつではないか!(正確には現在の表記はNIKKA)あれが、ここで作られていたなんてすごい……。
工場としての役割を終えたあと、当時の酒造会社社長と地元出身の奈良美智との出会いにより、2002年以降に3度、なんと市民ボランティアが中心となり奈良さんの展覧会がこの場所で開催され、全国から15万人以上の来場者が訪れた。そのボランティアへの感謝の気持ちを込めて制作・寄贈されたのが、入り口にいたあの犬の作品だという。
これらの開催が大きなきっかけとなり、れんが倉庫は本格的に美術館として整えられて、今に至る。

ほんとうに、奈良美智がこの場所で生まれなければ存在しなかった美術館なんだなあ…。図書スペースには、奈良さんが影響を受けた本が紹介されていて、それが、クラシックなりんご箱に入っているのがなんとも素敵だった。

まだ昼なので、シードルではなくりんごサイダー。
(隣棟のショップにて)


②14:15~17:00/青森県立美術館

◆開催していた主な展示『フランク・ロイド・ライトー世界を結ぶ建築』

写真にまったくおさまらない程広くてデカイ……。

移動②…徒歩で弘前駅まで戻る/弘前13:06発→新青森13:42着(JR)/新青森駅東口14:00発→県立美術館前14:11着(ねぶたん号)

目と鼻の先にあった弘前公園に寄ることなく、クルリと背を向け次なる美術館へ。JRからみえる外の景色が信じられないほど美しくて、ずっと見てしまう。満席で立っていたのが逆に良かった。座っている旅行者たちは皆、うつむいてスマホを見たり、うとうとしている。

窓越しに何気なく撮った一枚が、まるでポストカード。

新幹線の降車駅でもある新青森駅。美術館へはルートバス「ねぶたん号」で行ける。新青森駅東口から県美術館、その先の三内丸山遺跡、そしてまた県美術館を経由して新青森に戻るシンプルなルート。毎時同じ時間(つまり1時間1本)のペースで運行している。
新青森はちょっと寒かった。先ほどの弘前で脱いだ上着をしっかり着て、憧れの美術館の前に降り立つ。

青森県立美術館は、とにかく広い、デカイ。
建物は広大な原っぱに面しており、バス停からすぐに建物に入るのがもったいなくてしばらく散歩。美術館に近づいてからも、そのまわりをぐるぐると探索。私は(交通手段は除き)事前にあまり下調べしないタイプなので、何がどうなっているのかまったくわからないまま、大きな美術館が地面に落とす大きな影を見つめ、切り取られた青い空を眺め、気づくと目の前に矢印が。本館とは別の建物へ誘われるように入り階段を上ってゆくと、巨大な顔と急に出会って「わっ」とびっくり。奈良美智の《Miss Forest/森の子》という作品だった。
誰もいなくて、ひとりじめ気分をしばし味わう。

2006年に開館した青森県立美術館。入り口が沢山あって、ちょっと迷宮のようでもある。ちなみに制服はミナ・ペルホネン。羨ましい…!
館内は、主な展示室が地下フロアにあるせいか、外の環境を忘れさせるような没入感があった。シャガールの超巨大作品が飾られている「アレコホール」も、この独特の構造ならでは。奈良美智の展示室も見応え充分だったが、やはりあおもり犬に会いたい…と思ったとき、ちょうどガラス越しに
「あ、いた」。
しかし直接会うには、そこからまたかなり遠回りをして行かねばならなかった。すぐには会えない。それがまた、期待感を募らせる。
高さ約8.5メートル。
全体がよく見えるベストアングルよりも、実物と会わないとぜったいに見られないあごの下とか、そういう部分に感動した。

帰りのねぶたん号を待つあいだ、外の原っぱでちょっとだけ寝転ぶ。3時間近く滞在したが、まだぜんぜん観足りない。しかしまもなく閉館時刻。
空は夕暮れに向けて、淡い水色に広がっていた。


ここでも桜が満開でした。



移動③…県立美術館前17:11発→新青森駅東口17:30着(ねぶたん号)
移動➃…新青森18:39発→八戸19:06着(新幹線)19:26発→本八戸19:34着(JR)

新青森駅で1時間ほど、夜ご飯をたべたりお土産を見て過ごす。隣の青森駅から「青い森鉄道」に乗っても八戸には着けるのだが、90分以上かかる。運賃にさほどの差はないので迷わず新幹線に乗った。
八戸から本八戸(もとはちのへ、と思ってたらほんはちのへ、だった)へのローカル線は、思春期を全身でふりまく高校生たちで混んでいた。カップルが、ものの見事にお互いの瞳と瞳だけをみつめあい会話している。

真っ暗な中着いた本八戸。小さな駅かなと予想し、ひと気がなかったら徒歩10分、ホテルまで歩いて大丈夫かなあ…と心配していたが全くの杞憂で、人通りも多く道も分かりやすかった。
明日訪れる予定の美術館を通過し、賑やかな通りまで足をのばしてみる。想像以上にごはん屋さんも呑み屋も多く、ここで夜ごはんにすれば良かったと少し後悔した。新青森で食べたお寿司とホタテフライもおいしかったから、まあいいか。

建物は古いが部屋はきれいなホテルで、テレビでYouTubeが見られるのを物珍しさで操作しているうち、ソファでうたた寝。深夜に目覚め、慌ててお風呂にはいり、広いベッドでストレッチをしてからあらためてしっかり眠った。

明日もまた、美術館が待っている。


(後編へつづく)




今週もお読みいただきありがとうございました。
青森2日目は、次週に続きます。

◆次回予告◆
青森2日目、さてどこの美術館へ?

それではまた、次の月曜に。



*今回訪れた施設*


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