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映画館に行きたい派。

表題イラスト/©宇佐江みつこ

今年もまもなく終了する。どんな年だったか?というのはまた「あとがき」(毎年の最終月曜)で振り返るとして、ひとつ自分の中の変化をあげるとすると、映画情報をマメにチェックするようになった年だった。

もともと映画館に行くのは好きなほうだったけれど、自分が観たい映画をピンポイントで観に行くだけで、今、どんな映画が劇場公開しているのかというラインナップまでは全く把握していなかった。それが、映画業界の某YouTubeチャンネルにはまり、制作をしながらよくラジオ感覚で流し見して最新情報に触れるうち、映画って、こんなにも沢山の作品が、こんなに短いスパンで次々と公開されているんだなあということをあらためて知ったのである。

実際に意識してみると、映画館に映画を観に行くって、結構スケジュールが難しい。

日数的に言えば、だいたい1~2ヶ月くらいの公開期間の作品が多いようだけれど(ロングランを除き)、それでいうと、美術・博物館の展覧会と同じくらいと言えなくもない。
ただし、映画には「上映回数」という制限がある。
特に公開から日にちが経っていたり、あまり動員数が多くない作品だと、1日に2回とか1回しか上映がなかったりする。休日といえど、映画を観に行く以外にも色々予定が入っていると、その時間帯を空けることがそもそも難しい。その点、美術館ならおおよそ10時頃から18時頃まで、閉館の30分前までならたとえギリギリでも入場させてもらえるので、時間の融通はきく。
しかも、展覧会と違い映画は公開期間があらかじめ決まっていない上に、映画館の公式サイトでもスケジュールは1週間先くらいまでのぶんしか公表されない。
「この映画、再来週なら見に行けそう」
と思っていて翌週に公開が終了しますというお知らせを見た時の悲しさったら。

けれど、映画のそんな刹那的な面に気がつくと、余計に「なんとかして観たい!」という執着も生まれる。

個人的なその最たる例が、秋に公開された『BAD  LANDS バッド・ランズ』。観たいな~と思っているうちにうっかり公開終了週になってしまい、よく行く地元の映画館ではもう間に合わなくて、でもどうしても諦めきれなくて、ふと、翌日予定していた美術館めぐりの地域で上映館を調べると、大型ショッピングモール内にある映画館でちょうど行ける時間に上映がドンピシャである!ということを発見し、行ったこともない土地の、平日昼間のガラガラ貸切状態の劇場で『バッド・ランズ』を無事観られた。映画の中身も期待以上に最高に面白くて、エンドロールが終わってもなんだかぼんやりしてしまい、モールを出て、車通りは多いけれど人通りは全くない郊外ののどかな風景を、映画世界の空気に全身どっぷりとまだ浸かったまま、ふわふわと歩いたのを今もよく覚えている。

そういえば、今年は母とも映画に行った。
父とは大昔、子どもの頃に弟を含め3人で東映かなんかの2本立てアニメを観に行った記憶があるが、母と映画館に行くのは初めて。それもそのはず、「どうせそのうちテレビでやるから」と映画館には行かない派の母は、なんと、今回が30年振りの映画館だという。
ちなみに観たのは山田洋次監督の『こんにちは、母さん』。監督と主演の吉永小百合さんに密着した番組をテレビで観た母自身が「お母さんこれ、観たい」と珍しく言ったのだった。

大きなスクリーンで、人情味たっぷりの大衆映画を観る。隣に自分の家族がいて、劇場内も多くの観客であふれていた。正直、映画館は空いている状態の方が観客の立場では好きだけれど、こうして、沢山の「人」の存在を感じながらひとつの作品を観賞するのも、いいなあ、と思った。





今週もお読みいただきありがとうございました。語るほど数はぜんぜん観られていないのですが、来年は、もっとたくさん映画館で映画を観る年にしたいです。
皆さんは今年、どんな映画を観ましたか?

◆次回予告◆
『今年を振り返る、マイフェイバリット展2023』!

それではまた、次の月曜に。


*宇佐江みつこのよみきり話。その他のお話はこちら↓


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