マガジンのカバー画像

誰も知らない国から

19
転校生の天野君は、なんだか不思議な人だった。 有泉は、一緒に掃除当番をしながら、彼に興味を持っていく。 「僕はね、誰も知らない国から来たんだ」 「……はあ」 「そこは、名前のな… もっと読む
運営しているクリエイター

記事一覧

誰も知らない国から 19

再び山の上⑤ 「サリリは、陽が出るところを何度も見に行ってたの?」 「うん、戻って来たら…

高田朔実
14時間前

誰も知らない国から 18

再び山の上④ 「この国には、旅人がたくさんいるの?」 「旅人も他の職業と同じで、ある程度…

高田朔実
1日前
1

誰も知らない国から 17

再び山の上③  家族の顔を思い浮かべてみる。多分彼の言う通りだろう。私ですら、黙って一人…

高田朔実
2日前
1

誰も知らない国から 16

再び山の上②  本といえば、あの少年は、ここでゆっくり腰を落ち着けて本を書きたいとか言っ…

高田朔実
3日前
1

誰も知らない国から 15

再び山の上①  日向ぼっこを始めてからいったい何時間経ったのだろう。もうあくびしか出てこ…

高田朔実
4日前
1

誰も知らない国から 14

モナムを訪ねて⑤ 「その鳩は、どうなったの?」 「旅の途中で、新たな居場所を見つけて、そ…

高田朔実
6日前

誰も知らない国から 13

モナムを訪ねて④   私も、袖の下で旅人の石をはずそうとしてみる。手芸屋さんで買ってきたゴムでつないでいるにも関わらず、ゴムは伸びようとしなかった。  向こうの世界を去る直前の光景が思い出される。ファミリーレストランで私たちを見るなり急に様子がおかしくなった彼ら。彼らは校舎の裏でこの石を見たことがあったから、なんだかわからないながらも引き寄せられてしまったのかもしれない。あのまま石を奪われたらどうなっていたんだろう。なんだか様子がおかしかったし、よくいる考えるより先に手が出

誰も知らない国から 12

モナムを訪ねて③  今は何時くらいなんだろうと思う。腹時計によると、午後三時をちょっと過…

高田朔実
8日前
1

誰も知らない国から 11

モナムを訪ねて② 「毎日同じ景色の中で、同じことをして、同じような日々がずっと続いていく…

高田朔実
9日前
1

誰も知らない国から10

モナムを訪ねて①  目が覚めると、窓の外の平原をダチョウが駆け抜けて行くのが見えた。  …

高田朔実
10日前
1

誰も知らない国から9

山の上の住処③  それから二人は、私がいた世界のことについて話し始めた。  こっちには、…

高田朔実
12日前

誰も知らない国から8

山の上の住処②  樹には、つやつやした赤い実がなっている。りんごを少し小さくして、より赤…

高田朔実
13日前
1

誰も知らない国から 7

山の上の住処①  誰かの声がすると思ったときには、もう目が覚めていたのだろうか。  家族…

高田朔実
2週間前
1

誰も知らない国から 6

いつもの街⑥  その時、ガラッとドアが開いた。 「まだ帰っていなかったの?」  先生の声に、ムッとした。 「いつもきれいに掃除してくれてありがたいけど、そろそろ勉強も、ね」  いいところだったのに、またもや中断されてしまった。 「全然終わんないじゃない……」 「すぐ終わると思ったんだけど、けっこう長いね」 「あのさ、夏休みに入ったら、隣町の喫茶店へ行かない?」 「なんで、隣町まで行くの?」 「ここだと、いろんな人に見つかってうるさいし、話を聞かれたら、私たちがおかしいってう