物語が運ぶもの 2024.5.11

「物語作品は、歴史を伝えることができると思います。教科書で習う政治的事実だけではなく、人々の感情のレベルで。」と昨日の投稿に書きました。社会の状況と、人々が何を感じたのか、をどちらも知ることができるのです。だから史実ものや昔の作品に触れることが好きなのかも、と気がつきました。

たとえば戦争なら、後世にはどうしても被害の状況が歴史的事実や数で伝えられることが多く、「何人は帰還できた」と聞けば「良かった」という気分になります。もちろん命が助かったことは素晴らしいけれど、当人たちは必ずしも「嬉しい」という気持ちだけではなかったことも多いだろうし、歴史的には終わっても、彼らの中では全く“終わって”はいなかったと思います。
様々な、個人的な、だれかの感情を乗せた作品や記録が運んでくるのは、そういう細部だと思っています。現代の作品ですが、バビロンベルリンというドラマがあります。第一次世界大戦後、戦間期のベルリンを舞台にした作品で、時代考証をかなりしっかりしているらしいです。主人公のゲレオンは戦争のPTSDを患っていて、フラッシュバックするとモルヒネを打つ、というシーンが度々あります。そういう部分から、戦争から帰ってきた人の姿を感じることができるよな、と思います。

記録といえば、まだ全然読んだことはありませんが、昔の手紙にも興味を抱いています。まさしく生活や感情の細部が表れていそうですよね。ヘミングウェイとフィッツジェラルドの往復書簡集があるみたいで、早く読んでみたいです。

また、昔の人が同時代を描いた作品からは「作り手が世の中をどんな目で見て、何を感じ、どう表現したか」を感じることもできて好きです。まあ、作品の全部が全部を「作り手の人生のこの部分が影響している」と判断することは、本人がそう発信していない限り、正しいことではないと思います。ただ、たとえば、ヘミングウェイの『日はまた昇る』では、第一次世界大戦のことを登場人物が「あのいやらしい戦争」と形容しています。じゃあヘミングウェイはそうやって考えていたんだ!とまでは言えないにしても、ひとつの、実際に経験した人が持ち得た感覚として、この“戦争評”を受け取ることはできると思っています。訳文を読んだので原文のニュアンスはわかりませんが、「いやらしい」と訳出されるような単語ではあるはずで、妙な手触りや温度感がある言葉だな、と印象に残っています。

ちなみにバビロンベルリンは、いろいろと容赦なくてつらいものの最高な作品です。映像が綺麗でミステリー的な展開が面白いし、シーズン3はナチスがじわじわ浸透していったようすが肌で感じられたのも良かったです。ドイツではシーズン5の製作が発表されたとか聞いたけれど、日本には4も来てないので、早く続きが観たいです。


4時半。眠いしもはや翌日の域ですよね。当日中に投稿することを目標に追加してみます。反省

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