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詩ことばの森㊳「波音」

海を眺めていると、若い頃に訪れたことを思い出します。自宅が海に比較的近かったこともあり、急に思い立っては、海を見に行ったものです。何があるわけでも、何をするわけでもなく、ただ海を眺めては、もと来た道を帰る。そんなことを繰り返していました。理由はわかりませんが、その時の海の風景はおぼえているようです。静かでさびしい秋の海でした。

波音
そんな感傷なんか
海の向こうに捨てちゃったよ
それでもカンショウが
波の音と一緒にきこえてくる
どうでもいいことなのだけれど
どうしようもなくさびしくなる

岩のまわりには無数の
とんぼが自由に巡っていた
僕が空を見上げるたびに
カンショウの波音が繰り返すのだ
             森 雪拾


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