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このタイミングで、この記事を掲載する意図は何か?

ゴールデンウィークが始まった4月最後の週末、日本経済新聞に「農福連携、大企業も実践 障害者雇用と地域貢献両立」という記事がありました。

日経グローカル 日本経済新聞 2024年4月28日(日曜日) 5:00 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC124C10S4A410C2000000/

障害者が農業に携わる「農福連携」の実践例が増えている。農業経営体や福祉事業所のほか、大企業では帝人やJX金属も特例子会社を通じ乗り出した。企業に障害者と貸農園を提供し、雇用を事実上代行するビジネスも広がる。「実り」は質と持続性が伴ってこそといえるだろう。(「日経グローカル」482号に詳報

この新聞記事の見出しだけ見ると、「大企業も」とあるので大企業以外も農福連携をやっていて、ついに大企業もやり始めたのか?と思ってしまいますが、特例子会社を作っているのは大企業であり、雇用代行ビジネスを利用しているのも大企業が大半であるから、大企業以外で農福連携や雇用代行ビジネスを利用している会社は極めて少ないです。

予め申し上げておきますが、この新聞記事が間違っていると指摘したい訳ではありません。4月1日から障害者法定雇用率がUPしたばかりのタイミングで「大企業も」農福連携を行って何だか良いことやっているから大企業以外の会社も皆さん乗り遅れないように続きましょうと読める記事が日曜日に掲載される意図を考えてみました。

まずこの記事を掲載した日本経済新聞社は、どちらかというと求職者・個人よりも求人企業・法人の方々が読むマスメディアなので、「大企業もやってるから、中小企業の皆さんもやりましょう」的な意図を感じます。障害者雇用では、法定雇用率を達成している大企業と達成していない中小企業という構図がずっと続いています。そこに、「地域貢献と障害者雇用の両立」と褒め称える言葉がセールストークのようにあれば、「それも、ありかな?」と思う障害者雇用に詳しくないビジネスパーソンが増える気がします。

この記事を最後までよく読めば、途中で問題提起をしている部分もあるので農福連携や雇用代行ビジネスを絶賛PRという訳では無いのですが、大枠では特例子会社を持つ大企業だけでなく、特例子会社を持たない中小企業でも農福連携の雇用代行ビジネスを利用できるという内容です。

障害者雇用が法律により義務化され、5年毎に雇用率を見直すルールのもと年々雇用率がUPする中で、企業側が障害者雇用を「福祉」の観点で農業と連携すること等を世間的に良いことだと容認させる方向に動いている一端がこのようなマスメディアでの露出なのでしょう。

障害により経験・スキルを伸ばし難い方々に、多少の手間や経費が掛かっても障害者の経験・スキルを伸ばす環境と設備・人手を揃えて人財育成を行う、そんな障害者雇用を行うよりも、福祉の名の下で無理せず楽しく働こうという雇用が悪いとは言いませんが、法人が障害者雇用を行うことが「福祉」と容認されることは違う気がします。

しかも、農業を会社の本業として無いのに「農福連携」は地域にも貢献できて良いですねというセールストークに乗った会社では、障害者だけ本業とは違う農業を会社とは全く違う場所で行って、それで「我が社が雇用している障害者」とカウントされることが、障害者にとって良いことなのか?と思います。日本経済新聞社さんは、誰が何を思ってこの記事をOKとしたのか分かりませんが、農福連携も雇用代行ビジネスも「あり」なのでしょう。

アンプティパは、福祉ではなく、戦力として会社を通じて社会に貢献する意欲ある、仕事のできる障害者を、正しく評価して相応の給与を支払う会社へ紹介するビジネスを行っています。

先週のコラムで掲載した外資系企業やいつもお世話になっている横河電機様のように、障害があっても年収500万、700万、900万円の仕事・ポジションで採用選考をして下さる会社はあります。
(相応に採用条件・ハードルは高いですが・・・)

マスメディアの流す情報は「障害者雇用=農福連携、短時間勤務、超短時間雇用・・・」の方向であり、健常者と同等のレベルで仕事をする障害者や、そうなるように支援する会社の取組みは極めてマイナーな存在になりつつあることが非常に残念です。周りの人々と同じ流れに乗りたくない人、ぜひとも一緒に抗いましょう!

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