【二次創作】原作の魅力を自分の絵柄に落とし込む

はじめに

こんにちは。
二次創作を書くときに絵柄や表現の面で気を付けていることをまとめたいと思います。
前半自分語り、後半二次創作についてという構成ですが
自分語りが長いので目次を使用して飛ばしていただいても大丈夫です。


絵柄とはコミュニケーションの手段だ

ちょっと固いタイトルから入りますが、私は絵柄についてこう考えています。
この人の絵は丸っこくてかわいらしいとか、リアルで色気のある描写が好きだとか、絵を好きになるときには必ず作者の持つ絵柄やセンスの部分を好きになるかと思います。
そして、絵を長い期間描いている人は、自分の得意な絵柄、得意な表現、得意な構図など、土台となるセンスがあると思います。
一次創作の場合は自分のセンスを練り上げて勝負をすれば良いのですが、二次創作の場合はそれにプラスして、原作の「そのキャラに見える」程度の絵柄寄せや、原作の雰囲気をある程度拾えるほどの表現力が必要になっていきます。
本記事では、私が「自分の絵柄」と「原作の要素」をどのように拾い、すり合わせたのかを解説していきたいと思います。

自分の絵柄について

自分の好きなもの

まず「自分の好きなもの」についてを語らせてください。
絵柄は好きなものに影響を受けて確立されていくことが多いため、一旦自分語りを挟ませていただきます。

自分はTHEビッグオーというアメコミチックな日本のロボットアニメが好きです。

ジェームズボンドやバットマンみたいなダブルスーツを着た男性が、秘密裏にロボットに乗って巨大な敵と戦うという設定です。主人公のロジャースミスは常に黒のダブルスーツを着ていて、屋敷の使用人や一緒に住んでいるヒロインにも黒い衣服を身に着けるように指示する徹底ぶり。
ワクワクするガジェットや退廃的な街の雰囲気、仕事のお堅い感、そして衣装や街のオシャレさが好きでですね

このアニメを境に、自分のイラストには必ず「アメコミ」「スタイリッシュ」「黒ベタ」の3要素が入るようになりました。

余談ですが「首がやたら太い」「肩幅が広い」「耳がとがっている」の要素はビッグオーのキャラデザのオマージュで私の絵柄でよくやります。見かけてもそっとしておいてください。

自分の描いてきたイラスト

上記に加えてパワーパフガールズなどカートゥンネットワークを中心に見ていました。
中学の時の同級生やお絵描きBBSの影響で涼宮ハルヒなどのラノベ、ボーカロイドなどニコニコ文化に染まっていたので、2000年代萌えアニメっぽい絵柄のイラストを描くようになりました。

2008年

その後高校時代では、ロキノン系やサブカル漫画が好きな友達に出会い影響を受けたので、少し頭身を伸ばしたり心の内側を描き出すようなテイストを取り入れるようになりました。

2011年

やってみたら絵具を扱うのが得意だったので、インターネット厚塗りのようなテイストでイラストを描いていた時期もあります。
絵画コンクールに萌え系イラストをもってく系の人間でした…

自分の描いてきたイラスト・二次創作漫画編

その後紆余曲折あって二次創作漫画をたくさん描きたくなったので、線主体の漫画イラストの練習を本格的に始めました。
メインジャンルは「show by rock!」でCPはロムとシュウ☆ゾーでした。詳しくは割愛しますがバンドマンものです。

2015年 背景を描いていて偉い
2015年 

この時は主にTHEビッグオーのコミカライズを参考にしています。
(今も現役でイラストレーターをされているありがひとしさんによる漫画化で、オリジナルストーリーが多く、絵の雰囲気も黒ベタが多くてスタイリッシュでかっこいいのでぜひ読んでほしい…!けど電子化されないんだよなあ…)
絵柄としては原作の要素に「スタイリッシュ」「黒ベタ」を加えて構成されているかと思います。
高校の時影響受けた「心の内側を描き出す」も入ってるかも

原作ではイラスト右側のロムって人が細マッチョ設定だったにもかかわらず
独自の判断で海外俳優さながらに太らせて描いていたり、登場キャラクター全員彫りが深くて鼻が高い顔だちにしていたので、結果的に「アメコミ」という要素もクリアしています。
私が好きな洋画の雰囲気を参考にしていたので出てきたんだと思います。
(マーベルユニバース(初期のほう)とミシェルゴンドリ―、gorillazを見てました。あとスーパーナチュラルの兄と天使…)
この二次創作でより実在感と生っぽさを獲得していきました。

話が寄り道してしまいましたが、原作の「バンド」という要素が、自分の持っている絵柄の「スタイリッシュ」「アメコミ」「黒ベタ」に落とし込んでも違和感なかったため、親和性の高い絵柄で二次創作ができたんだと思います。

原作の初期ミューモン(ケモノキャラでSDになってるやつ)の絵柄もカートゥン寄りですね。

そのあとは社会に出て時間がないのもあって、なるべく線画をメインとしたイラストを描いていました。
好みも変わってきたので、よりアニメチックな塗り込みの少ないイラストを描くように心がけていました。
培ってきた自分の絵柄の「スタイリッシュ」「おしゃれ」の要素を保ったまま、イラスト技法だけ変化させていました。

2019年

「アメコミ」は日本のアニメチックなイラストを描くのにノイズになってしまうので、抑えめになっています。
抑えめにする際に意識したことは「黒ベタ」は使わない、日本人の顔立ちにするなどです
それでも滲み出ていたらそれは手癖です。

原作「瓜を破る」について

原作「瓜を破る」は、現代の大人の心の内をあぶり出す冒険譚です。

ノンフィクションの如きリアルさが胸を打つ話題作! 交際を始めたばかりのまい子と鍵谷。お互い不慣れゆえに、ぎこちなくも少しずつ着実に仲を深めていく。

瓜を破る コミックス8巻より

今回描くCPは鍵谷千里と香坂まい子です。
原作でも初々しく温かみのあるカップルのため、その温かい世界観がもっと広がるようなコンセプトのイラストを描きたいと思いました。

世界観を表現するために、絵柄のコントロール、絵作りで気を付けていることを以下でまとめたいと思います。

自分の絵柄と原作の魅力を掛け合わせる

自分の絵柄を構成している主な要素は「黒ベタ」「スタイリッシュ(おしゃれ)」「アメコミ」の3つでした。
しかし、自分の素のままの絵柄で出力すると原作の魅力が伝わらず、良いファンアートにならない懸念がありました。
そのため、意識して絵柄をコントロールする必要があります。
自分の培ってきた絵柄の要素をどのように変化させれば、原作の雰囲気を表現できるのかを整理していきたいと思います。

自分/原作の要素を整理する

散々上でやった気がしますが改めて書き出します。

現在の自分の絵柄を構成している主な要素は「日本のアニメ」「スタイリッシュ(おしゃれ)」「線画」
使用できる控えカードは「漫画」「アメコミ」「厚塗りイラスト」「心の内側を描き出す」
上記を所持しているものとします。

次に原作の要素を整理していきます。
「リアルなキャラクター設定」「かわいらしい絵柄」「初々しさ」「エッチ」「ほろ苦くもあたたかい話」
大まかにこんな感じでしょうか。

出すべきカードを考える

自分の今までの絵柄では原作と衝突してしまうことが分かっていました。
なので、持っているカードから適している表現を慎重に探し出します。
「リアルなキャラクター設定」「初々しさ」「かわいらしさ」を出すために「線画」主体で「心の内側を描き出す」作風にしよう
「ほろ苦くも温かい話」を表現するには一枚絵より「漫画」が適しているかもしれない
こんな感じで大まかに出すカードを決めて、それぞれの要素をどのように描くか掘り下げていきます。

とはいえ描かないと始まらない

とはいえ脳内であれこれ考えていても出力してみないと分からない
とりあえずプロトタイプで何枚か描いてみます。

右真ん中の顔が一番最初に描いてみたもの。板倉先生のかわいらしいバランスに翻弄される。

顔立ちとシチュエーションイラストを描いた時の見栄えを考えました。
とはいえ描いたシチュエーションはあったらいいなの妄想シーンなので普通に1オタクのイラストですね。

エッチなことしてるときの情景が浮かばん…と思い試運転してみる
2枚目左下は1枚目右下の続きだったりします。
エッチなことやらせると鍵谷は原作よりさらに男性っぽさを強調したほうが魅力的になると思ったので、よりごつごつした骨格にしてみます。

試行錯誤という名のカード並び替え

このあたりで原作のかわいらしい絵柄を踏まえたうえで、エッチなことが想像できるようなリアルで実在しそうな空気感の男性を描くことの難易度の高さを認識しました。

漫画ペン試運転鍵谷

悩みが目元まわりに出ている気がします。
鍵谷単体でもイラスト映えする(=モブにならない)キャラデザ
=アニメ的まつ毛の描き方か?と目じりを追加、
現実感のある眉毛幅、でも毛の質感までは詳細に描かない?とか
個人的にはあまり狙った印象にならないのですべて没です!

再度、持っているカードの出し方を考えます。

この辺の漫画を数年ぶりに読みました。
「心の内側を描き出す」とはこのあたりの作品群のことでした。
このあたりからヒントを得ます。

雰囲気出てきた!

やさしくて男らしさも兼ね備えた顔だちが出来ました。
いける!

髪の毛がヘルメットか綾波レイになりがちなので風を吹かすなど動きをつけて遊ばせるようにしました。
風がないときは甘んじて綾波レイを受け入れます。

一番丁寧に描いた鍵谷
目の縦長を強調した終盤鍵谷
でも1枚目ぐらいの目の太さのがまい子と並んだ時に違和感ない気がする
気を抜くと無茶苦茶な体格差をつける癖がある

髪の毛のリアルな質感が低コストで伝わるように頭頂につむじっぽさを追加してみたり(ヘルメット防止策)
結果、原作の持つ雰囲気を伝えられるキャラデザになったと思うのでヨシ!

漫画を描く際、もともとは首の下に強い「黒ベタ」を置いていましたが
なるべく優しい雰囲気になるように「黒ベタ」は控えて影は細い線で描くようにしました。

おわりに

こんな感じで二次創作の絵柄を決めていきました。
恋愛漫画をあまり見ていないので、結果出来上がった絵柄が何っぽいと言われてもたぶんピンとこないのですが
とりあえず自分の持っているカードを組み換えまくっています。
ここまで考えて作ると趣味にあるまじき労力で大変なので強要はしないのですが、何かに行き詰った際にヒントにしていただけたら嬉しいです。
この度は読んでくださってありがとうございました。
引き続きよろしくお願いいたします。

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