見出し画像

無名人インタビュー:「ふつう」の家族なんかないと考えている人

無名人インタビュー家族特集!! まあ、なんだかんだで無名インインタビューは家族問題に隣接してるんですよ。毒親とか、離婚再婚、共同親権とか! それでプチ炎上みたいなのもあったり。
で、その渦中でご紹介いただいた方が、今回の緒倉さんです! 緒倉さんの活動していることではなく、もっと内面的なことを知りたい、てお願いでした。
いやほんとね、Twitterのリプライで、主張を交わしているアカウント同士でも、実際どんな人かってのは分からないもので、それを知りたいってのは切実な人間的欲求なのではないでしょうか?
てことで、多様化する家族のかたちを、そのままでいさせていいのではないの!? 緒倉さん回です。

今回ご参加いただいたのは 緒倉珠巳 さんです!
TW

qbc:どんなインタビューにしていきましょうか?

緒倉:「ステップファミリー」という家族形態をみなさんにお伝えしたいので、ステップファミリーのことを中心にお話させてください。

qbc:では、今何をされている方なのでしょうか?

緒倉:ステップファミリーを支援する団体SAJの代表をしております。
主に、個別相談や、サポートグループの運営、ステップファミリーに関する情報の開発と提供をしています。
ステップファミリー・・・英語だとそのままStepfamily。Blended familyという書き方も多いでしょうか。親が再婚をした子どものいる家庭のことです。
米国には40年ほどまえからこの家族形態を研究・支援している機関があり、そこではStepfamilyという呼称を推奨しています(ブレンドじゃなくステップ『継』という意味を重要視)。私たちもその機関の情報に倣い、Stepfamilyの呼称を推奨しています。

米国では、億単位の研究費が注ぎこまれているんですが、日本ではステップファミリー専門の研究機関はないですね。そして、国民の3人に一人がステップファミリーの一員になるといわれて、結構時間たってます。再婚の2回、3回もざらなのでw

そうした環境で育つ子どもに不利益が多いと、国の将来へのダメージになるので、離婚や再婚を経験する家族に対しての研究も多いんでしょうね。研究者の中にも当事者が多いので、我が身のことってのもあるかと。

qbc:なるほど。緒倉さんの日本での活動はいつからですか?

緒倉:2001年くらいからです。ちょうど2000年くらいにインターネット自体が普及し、ステップファミリーの認知については私たち発信で、ネットを介してひろがっているわけですが、まだまだなんですよね。ほそぼそが長く続きすぎてってのが悩みです
でも、子育てや家族で困った時に、こうしたステップファミリーの難しさを適切に理解・支援する専門機関はほとんどないんですよね。

qbc:確かに。私も、女性の知りあいで、4回名前が変わってるって人がいたんですよね。子どもの姓と合わせるために、別れた夫の姓を名乗ってるって。

緒倉:私も離婚時は元夫の姓でした。子どもに合わせて。今再婚して姓は3つ目なので、このあとあったら、私も同じかもしれませんね。
あ、今回のきっかけとなった親権云々のところですが、20年前に離婚した際、元夫に親権、私が監護権と分けているんですね。だから元夫の姓を選択しました。元夫が、「親権がなくなったら親じゃないと感じる」といい、共同親権にしたかったけども、それができない法制度なので、昔の制度のなごりで残っている「分属」っていう方法にしました。単独親権って、いわゆる「家の子」として一方に限定せざるをえない古い家意識に根付いた仕組みなんですよね。分属は、家の子としては親権者側、育てる係として監護者という、妥協案ってところなんです。
それはさておき、子どもの家族としては両親がずっと継続していくことを選択したわけですから、そんな家族がどんなふうに変わっていくの?というのが、そもそもステップファミリーを知るきっかけになっていました。

qbc:子どものころは、どんなお子さんでしたか?

緒倉:ちょっと変わった子どもだったようですね。今思えば、発達っ子だったんじゃないかな? のんびりしたタイプでしたね〜。
時代劇とお笑いが好きな子どもで、しゃべりかたが京都寄りの関西弁&動作もけっこうゆっくり。走るのが50m12秒で 逆上りができないとか。
全員リレーで抜かされまくるので、6クラスで5人抜かれたりするものだから、「運動会にくるな」と囲まれたりして。

qbc:義務教育のあとはどうでしたか?

緒倉:高校くらいからは好きなことに没頭して楽しかったですねー。高校からデザインの勉強してたので。
美大を出て、デザインの仕事ついて、25歳からフリーランスで10年、充実してましたね。大人になると運動音痴もきにならず、バイクのったりスクーバやったり。スキーも30歳でデビューしました。
20代前半が仕事ばっかりで遊んでなかったので、後半からはじけましたw

qbc:今もフリーランスのデザイナーをされているんですか?

緒倉:当時の仕事は35歳でいったん廃業しました。その後また違う分野のデザインの仕事をやったり、ステップファミリーのお仕事やったりの、何足かの草鞋ですね。
生育歴と、ステップファミリーとのつながりは関連薄いですかねw

qbc:これはかなり誘導尋問ですが、フリーランスデザイナーと、ステップファミリーの考え方は、近いところありますか?

緒倉:デザインと活動とでは、何もないところに意味あるものを生み出すことをしている点で、共通性は感じますね。私が作り出したものに、見てなるほどとうなずく人がいるのは、同じだなと思ってます。
ステップファミリーはかなりコミュニケーションの課題を含むテーマなので、わかるように伝える、これにいつも苦心しています。ここも共通しているかな。
見ている人がどう理解するか、を想像しながらアプローチするんですよね。

qbc:どういった人に伝えようとしていますか?

緒倉:全てのひとです。

qbc:当事者も、全く関係ない人たちもってことですか?

緒倉:家族内も同様で、自分と同じ人っていない。ステップファミリー内でいえばカップルは一方が実親。一方が継親。子どもとの積み重ねも思いのかけ方も違いますね。親と子でも思うこと全く違う。だから、相手がわかるように自分の困りごとや気持ちを伝える。ステップファミリーの当事者同士であっても、継親で同士であっても、異なる立場経験・思いの違いはあって、伝わりにくい時には、わかるように説明する。
ステップファミリーじゃない人には、ステップファミリーの悩みも困りごともわからないので、それをわかるように伝える。当事者だけで完結しないテーマなんですよね。

qbc:なるほど。

緒倉:ステップファミリーについてもう少し説明したいのですがよろしいでしょうか?

qbc:お願いします!

緒倉:日本では、いわゆる子連れ再婚家族となったステップファミリーの場合、継親は本当の親のようになりたいと思いがちで、実親は「こんどこそ幸せな家族にしたい」と思いがちです。
そこで一生懸命「理想」をめざすんですが、そこに子どものニーズが汲み取れていないと、ただただ、大人の「理想」を押し付けるだけに陥りがちなんですね。
だけど、社会一般ではほぼ、「新しいお父さん(お母さん)ができてよかったね」とか。「実の子と思って育ててね」とか。「継親子が安定するまで、もういっぽうの実親と会わないほうがいいのでは」とか、アドバイスしがちなんですよね。
でもそれって、子どものニーズを汲むとかじゃなく、「ふつうの家族がいい」っていうフレーム(枠組み)にいれてのものなんです。
多様化の逆をいってるわけなんですよね。

qbc:はいはいはい。

緒倉:親の離婚・再婚を経験した子どもは、いろんな思いを持ってるんですが、
・親が離婚したのは自分がいい子じゃなかったから とか
・不和が続くよりずっとマシだ とか
・「自分たち家族は『ふつう』じゃない」と傷ついたり
・でも、パパもママも好き・・・ 
・元の家族に戻りたいって思っちゃだめなの? っていう子もいたりします。
こうした思いの子どもたちに、親の再婚を理由に『ふつう』の家族を押し付け気味なんですよね。社会は。
なので、ステップファミリーという家族関係を育むときには、子ども達が、複数の世帯を自由に行き来し、自分を支援してくれる大人がたくさんいるという自信をもって、元気に育っていける環境を整えたいんですよね。
親の離婚も再婚も、親の都合であって、子どもたちにとっては、子育ての大人メンバーが増えただけなんだよという、大きな家族観、それを社会で共有したいんですよね。

qbc:おお。子育ての大人メンバー!

緒倉:そうです。子育てチームのメンバーです。

qbc:「子育てを誰がすべきか?」という議論があります。地域でするもの、親がするもの、とか。これについてのお考えを知りたい。

緒倉:いまって、子育ては「孤育て」になりやすいことが社会の課題ですよね。一人でも多くの人が子育てを担って、責任も分配することが、精神的にもストレスを軽減できるスタイルだと思ってます。それぞれが異なった役割を担います。
そして、子どもにとってのファミリーって、子どもの心の中で個々に境も違うんですが、子どもが思う「ファミリー」に該当するひと全てが、子育てにかかわることが良いと思います。

qbc:子育ては、関わる人が多いほうがいいと思いますか?

緒倉:思いますね。

qbc:それは、なぜですか?

緒倉:いろんな人、たくさんの人との接点、それが温かで心地よいものほど、こどもの自己肯定感につながるからです。

qbc:自己肯定感とは? それがもたらすものとは?

緒倉:自分が必要な人間であることを自認し、人とのつながりに意欲をもてるようになります。社会にでて活躍するために基礎となるエネルギーですね。

qbc:おお、そろそろ時間が。最後に、言い残したことはありますか?

緒倉:父母ひとりずつだけではないので、見た目などのわかりやすさはないけれど、子どもも大人もそれぞれに、異なる思いをもっていること、それを前提にして互いに知り・共感的理解をもつ。めざすのは『ふつう』の親子・家族じゃない。それがステップファミリーが幸せになるための基本メソッドだと思います。当事者も周囲も、そこを知っておいて欲しいなと思います!

qbc:ありがとうございます!!!

緒倉:や〜。インタビューしてもらうってなかなか難しい! ありがとうございました!

あとがき

いかがでしたか? あなたはこのインタビューを読んで、どう感じましたか? 思ったこと、感じたこと、考えたこと、良かったらコメントに書いてくださいね!
私はねー、ほんと家族っておもしろいなって思いました。もうさあ、家族なんて崩壊してしまえなんて思ったりするんだけどさ、まあそれはたぶん私があんまり安定した家族生活ではなかったからなのかもしれないけど、でもまあ、ほんと、「ふつう」ってなんなんだろうねって思いますよ。
なんだと思う? まあひとつの基準というか、なるべく多くの人が思い浮かべられるようなモデルを普通と呼んでいるだけで、そうでないからおかしいとかそういうものでもないしな、つまり多数派なだけって感じで、それが正しさというわけではない。
なんてな、そんなことは私はわかってるんだけど、そういうのわからない人もいるんだよな。まあ、私のこの考えが正解ってわけでもないのだけど。でも、ふつうなんて相対的なものを絶対的なものだと勘違いするなんてなって思う。
世の中はなかなか平和にならないし、なるもんでもないようだね。あばよ。

マガジンで過去インタビューも読めますよ!

インタビュー参加募集!

この記事が参加している募集

自己紹介

いただいたサポートは無名人インタビューの活動に使用します!!