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無名人インタビュー:離婚後共同親権を日本社会に導入しようとしている弁護士の人

文化や習慣には粘着性がある。あなたが新しいことを始められないのはそれが原因だ。新しいことをやろうと、現在があなたの足を絡めとる。新しいことに1時間だけ時間を使ったとしても、またすぐ昨日の感覚があなたにおおいかぶさって昨日と同じことをさせる。
この粘着性は、集団を維持するのに役立つ反面、集団に新しい制度を導入するのには障害になる。日本のイエ制度を前提とした結婚制度にもそのような粘着性があって変えるのが難しい。
その変化を推進し、見届けようとする弁護士古賀さんのインタビューです!
どうぞ! お楽しみに!!

今回ご参加いただいたのは 古賀礼子 さんです!
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1、離婚する前に片親が子供を連れ去る社会

qbc:ご参加ありがとうございます。どんなインタビューしていきましょう。

古賀:どんなネタが良いでしょうかね。自分のこと?

qbc:今、何をされてるかっていうところからおうかがいしましょうかね。

古賀:弁護士をやっておりまして、東大和市にある多摩湖のほとりに事務所があります。東大和の中でも、多摩湖に近いあたりで、ほぼ他に法律事務所ないよねっていう場所です。
ほぼ同期な感じの仲間2人と一緒に。だから先輩の先生に教わるとかいうこともなく、独自にやりたいことをやるっていうスタートで、弁護士8年目になんのかな。マイペースにやってます。
取り組んでる分野が、離婚案件が多く、特に女性弁護士なのに珍しいねって言われるのが、お客さん大半は男性で。

qbc:あ、男性なんですね。

古賀:ほとんどは父親です。珍しいって言われてますね。
女性弁護士なんだから女性の味方でしょ? みたいなイメージのようで。
最初のお客さんが、場所が近いからって感じで来た方で。たまたま子供を連れ去られたお父さんでした。

qbc:連れ去られた?

古賀:そうです。蓋を開けてみたら、毎日保育園送迎して、夜勤もある仕事こなしながら、まあ事実上父子家庭のような、自分の実家にサポートもらいながらだけど、自分側でお子さんを育てていた。まだ離婚をしているわけではないのだけど、奥さんは家出妻っぽい環境だったのに、ある日、突然、その奥さんにお子さんを連れ去られてました。
しかも、奥さんはお子さんを保育園に通わせなくなっていたんですね。それでお父さんのほうが警察に捜索願に行ったら、連絡取れて無事というだけで、それ以上は警察は支援しません、みたいに言われたっていう。

qbc:あ、そうか警察はそこまでの介入になるのか。

古賀:婚姻中は共同親権なので、親権者が子どもを連れ去っても、理屈の上では、違法にはなるのですが、警察は動いてくれませんね。法と実務のギャップがあります。
でも、そのケース、お子さんは楽しみな保育園、通わせてもらえてないし。そのうえで離婚してくれって言われる。離婚して連れ去った側を単独親権者に指定しろっていう意味の「親権よこせ」って言われても、「え?」みたいなのを、弁護士になりたての最初のほうにやって。これ、このまま「はいそうですか、離婚します、親権渡します」で済んだらおかしいなと思って。
けど、弁護士なりたてながら、それをおかしいと主張する厳しさも感じていて。実際多くの弁護士は、ふうつ、そういう相談来たら「あ、お父さんもう無理です、諦めてください」っていうふうになるんでしょうけど。まあ新人弁護士だったので、もうなんとかしなきゃみたいな。抵抗できるかはわかんないけどやりますっていう、もう正義感から取り組んだ事件がきっかけで。
そこは、でも本当に、まあビギナーズラックで、ちょっといろいろ良い展開に結果としてなったおかげで、子供さんが戻ってきたんです。
でもこれ、最初に知識とか先入観で、お父さん無理ですよってさせたり、闘わずに、まあ面会交流の合意ができてればいいですよね、みたいなふうに丸めちゃうみたいなこと、しちゃいがちな場面なんてすよ。そうしてたら、こんな結論なかったよねっていう。
若手だからこそ無謀にも闘ってみた結果、得たことっていうのは、自信にもなって。これは世の中に声を上げて良いんじゃないかってなりました。

qbc:なるほどね。

古賀:こうして、離婚と単独親権問題の入口の前に立ちました。マニュアルもない、教科書にない問題です。
お父さんは養育費を払えば十分だ、みたいな空気があるんですよ。でも、そればっかりで済ましてはいけないよなって。そして、この問題に取り組むうちに、それ以上にもっと悪質な連れ去りとか、そういう事件にも接するようになりました。
自然と当事者たちがやってる交流会に顔を出して行くと「弁護士が来やがった」みたいな目で見られるし。
なんでこの問題に関心を持つんだ? と。

qbc:はい。

古賀:当事者から見れば、弁護士を恨んでる人たちもいっぱいいるんです。弁護士のほうから養育費だけ払わせて親子断絶を放置するような解決を薦めたりもするから。
弁護士のほうは弁護士のほうで、そういう解決こそ正義みたいな価値観も蔓延していて。

qbc:へえー地獄。

古賀:女性の弁護士が、当時、子連れで交流会に飛びこんだんです。
赤子連れで弁護士と名乗る者が何しに来たんだっていう警戒心半分、でも関心持ってくれる弁護士が来たのはうれしいかもみたいな半分って感じで、当事者の方たちにある種歓迎してもらいながら一緒に学びました。ハーグ条約のこと等勉強し直して、講演したりして、当事者の方からありがたがられました。

ハーグ条約は、国境を越えた子供の不法な連れ去り(例:一方の親の同意なく子供を元の居住国から出国させること)や留置(例:一方の親の同意を得て一時帰国後、約束の期限を過ぎても子供を元の居住国に戻さないこと)をめぐる紛争に対応するための国際的な枠組みとして、子供を元の居住国に返還するための手続や国境を越えた親子の面会交流の実現のための締約国間の協力等について定めた条約です。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/hague/index.html

古賀:あと、私が司法試験に合格する直前だったかに、民法766条改正というのがあったんですが、司法試験的には重要ではないところなんですよ。
でも調べたら、関係者の間ではものすごい盛りあがったようで。それを発信したりとか。

qbc:離婚前の子供の連れ去りって、ご存知でした? 弁護士になる前は。

古賀:弁護士になるまでは、よもや。
私も子連れ離婚の経験者です。子連れっていっても連れ去ってはいないですけど、子供がいる状態で協議離婚をして、自分を親権者に指定することも話し合いで決めて、シングルマザーになりました。弁護士になるのも、女性の地位向上みたいなのが動機にあったと思います。
でも、男女平等を掲げるからこそ、離婚問題の時の「なんだ、この男性がいじめられてる状況」っていうのには驚きましたね。弁護士になってから気づかされたことでした。
ま、今は、さらに、問題が深刻で、連れ去り勝ちみたいなこと、裁判所では絶対ではないものの、そういう傾向があることが知られてしまって、お父さん側が連れ去っちゃう。先手を取られて、お母さんの方が会えなくなるということも起きていますね。

qbc:なるほど。

古賀:でも、とにかく全体としては、別居親が養育費払わない問題とかのほうが、声が大きいんですよ。まあ、実際払われないとしんどいと思うし、そこにも問題意識があります。
でも、別居しているお父さんの中には、経済力もあって養育費を払う気もあるし、実際けっこうな金額を払ってて。で、何年も会えてなくったって、子供さんのことを忘れずに思って。思うからこそ何かしなきゃと焦って、でもやれることが少なくて。
この会えない、もっと会いたいのにお父さん方が払ってる養育費は十何万くらいということもあって。それって、シングルマザーが月で稼ぐ手取りと同じくらいだったりするんです。これってそこそこ満たされた暮らししてるよねって。それなのに子供と会わせないって、どういうことなんだろうって。

qbc:うんうん。

古賀:現実を見てみると、稼ぎのあるお父さんたちは、余裕もあるから調停もマメに通って、土日は土日で離婚問題の社会運動して。その人たちは、要は恵まれてる人たちなんだと思います。
でも、仕事も休めない、調停も長引かせられません、当然、社会運動にも参加できません、みたいなそういうケースの方が実は多いです。ひとり親家庭の困窮っていうのはそういうことなんだみたいな。
それでたどり着いたのが、共同親権制っていう法整備だよねって。いっとき前は、共同親権なんてそれは夢みたいな、民法改正なんてどんだけハードル高いんだと思ってたんですけど。毎日のように情報をウォッチしてこの数年の変化を見てると、改正はありえるなってところまではきてます。

qbc:すごい。

古賀:離婚の問題に直面したときに、単独親権者を指定することで揉めて、強引に別居して、子どもを連れ去り、現状維持で親権者が決められていくような裁判所の運用もあるから、葛藤も高まるし、離婚後でも共同親権があれば、子どもを奪い合うようなこともなく子どものためにしっかり話し合って解決することが期待されます。
そのため、問題に直面している多くの方は、離婚問題の当事者として、「離婚後共同親権」という捉え方をしていますが、本当は、婚姻中だけが共同親権で、未婚や、事実婚という婚姻外の場合も単独親権しかなく、離婚も、婚姻外として扱うから、単独親権なのです。離婚の問題だけではなく、婚姻をしているかどうかで区別していることがそもそも問題で、非婚の差別だと考えています。そのため、本来は、婚姻外共同親権を導入しようという話ですが、ま、多くの方にとってなじみやすいということで、離婚後共同親権の問題として考えてもらっていいです。

2、結婚制度

古賀:まだ民法改正やります、までは行ってないけど、今年、法制審議会で諮問しますって言って、検討が始まっています。

古賀:社会の動きを見てて、私はとても楽しいんですよ。不謹慎かもしれないですけど。たぶんそこに関心持ってる弁護士そのものが少ないだろうし、背景とか知らないだろうから。
半分楽しみつつ、できることはしたい。
そういった動きの中のひとつだった、2019年11月22日に共同親権について訴訟提起した件については、代理人として関わらせていただいています。

古賀:これはテレビで記者会見も報道されたし。全国紙にもいくつか取りあげられました。NHKにも出て、子育てという人権をみんなで考えましょうっていうコメントを切り取って報道されました。

qbc:ちなみに、日本の離婚率って上がってるんですか?

古賀:日本の離婚率は3人に1人ってよく言われてますが、あれは実は誤用です。人口1,000人あたりの離婚件数なんですよ。
離婚が増えてますみたいな言い方には、疑義があるんですよね。ただ増えてる感があるのは、子育て世代の離婚がもしかして増えてんのかもしれないですね。そのデータもなくて、探せばあるんだろうけど、微妙だと思う。そういう議論まで行ってない未熟な状態だと思います。

qbc:なるほどね。

古賀:昔は、とにかく性別役割分業をして、離婚自体を差別的なものだとして、文化的に抑制していました。愛情がなくても父と母を1個の家庭に抑えつけて。そんな価値観があるのは日本だけですよ。世界はもう、親子であることと夫婦であることは切り離していて。夫婦たるものは愛情なくなったら、もうそれは終わって当然。その分、親子としては責任も愛情もちゃんと尽くすっていう。
日本が単独親権制でありつづける意味は、今言ったことを維持するためにあるんです。離婚したら子供は不幸になるっていう価値観で、離婚しないようにストップかける。離婚しないことが子の福祉だ、みたいな発想がある。

qbc:なるほどね。結婚が破綻するって前提のない法構造なのね。

古賀:もう、何がなんでも結婚はあったほうが良いみたいな世界です。だから愛情なくて、もうセックスレスですみたいなデータも異常に高いんですよ、世界で比べても。
そんな状態なら、海外では、もうみんな離婚するし。不倫が多くて不倫を責めるのも日本ならではで、慰謝料請求があるのも日本だけみたいで。

qbc:え? そうなの?

古賀:そうなる前に別れちゃう、世界は。ベッドを共にしない関係になったときは、もう夫婦じゃないよねってなっちゃうから。けど彼氏彼女ができれば幸せ、良かったねって。
不倫したから慰謝料請求っていうよりかは、不倫するだけの関係だったんだから、それはもうそういうふうに受け入れられちゃうような社会です。ある種、成熟してんのかな。その分、本当に子供に迷惑かけないようにしようと。親としてどうあるべきかっていう教育をしたり、支援したり、そういうとこが整ってこその共同親権制です。

qbc:そうかー。つまり、生活の実態よりも、結婚制度のほうが大事にされてる状態なわけですね。

古賀:そうです。国民を管理しやすい家族体制になってます。夫婦別姓も同性婚も共同親権の問題も、その体制への挑戦です。

qbc:まあ、税金徴収システムみたいなのを作るってなったら、絶対離婚させないようにするってのは理解できますね。いちいちそんな例外処理認めないからって。
でもまあ、ユーザーの動きがそれに合わなくなってきちゃったら、変えるしかないですよね。

古賀:戸籍なんて制度でしかないのに、ちょっと愛着持ちすぎちゃってて。戸籍にこだわって、戸籍こそが家族だ、日本の伝統だ、みたいになってる。LGBTや夫婦別姓も、それで弾かれてるんですよ。

qbc:なるほど。

古賀:共同親権の問題っていうのは、戸籍について挑戦するような人たちでもなく、むしろイクメン推奨だって内閣の言うことにも従って子育てしていた人たちに降ってかかった問題なんですね。別居する前もしっかり子育てしてたんだから、離婚したって子育ては続けたい。「子育てしてたらこの有様か」「子育てしなきゃ良かった」って、それは言いますわ。

qbc:こわーい。

古賀:悲劇ですよこれは。本当に。
子育てしなさいって言われて、生まれたときから立ち会って、育児担ってきて、やる気ある。なのにお母さんから、もう気に入らないからとか、彼氏できたんであなたはもういいです、とか言われて離婚する。
そういう人たちは、夫は卒業するけど父親を辞める気はない。でも育児ができなくなる。

qbc:なるほど。

古賀:離婚調停やらで裁判所もパンクしてるんです。いろんなところでエラーが起きてて。
だから、夫婦は卒業しても父親母親としてお互いに親らしさを維持してあげられたら、単純に子供にとってもメリットじゃないかって。関わりがあれば、経済的な援助も強まるだろうし、子供のSOSにも察知しやすくなるだろうし。共同養育があると、子供、困窮しないですね。共同養育って交代監護っていうだけじゃないし。

qbc:交代監護って言うんだ、へえー。

古賀:交代監護は、「そんなの無理だ」みたいな言葉を浴びせられたりするんですけど、たとえば1週間交代で父親と母親の家を行ったり来たりするんですね。それを1週間交代パターンと言う。それから週末パターンっていう分担の仕方もあります。
そういうのを選択できるのがいいよねって。それによって男女問わず働く。共同親権の、共同養育の中で、それはあり得ると思うんだけど。これは結局、男女間の経済格差の固定化を排除することでもあります。

qbc:なるほどー。男性も女性も同じように働くことが前提ですもんね。

古賀:イエっていうものの名残なんですよ。どっちかのイエに所属したら、基本的にそっちに子供は所属するから、そうじゃない側とは面会交流という形でしか会えなくなる。会えるならば会えないよりマシでしょ、みたいな感じ。
でも今、それは子育てではないと不満が出てきている。

3、弁護士になるまでの道のり

qbc:弁護士になる前は、何をされていたんですか?

古賀:弁護士になるのにだいぶ時間かかっちゃって。33歳ぐらいに弁護士になったんですけど。

qbc:それ以前は、法律事務所で働いていた?

古賀:いやいや、ただの浪人生。威張れないんですけど。
学芸大学の教育学部に進学したんです。10代のときはフワフワしてたんですけど、その頃から、教育問題とかいじめ、体罰とか、なんとかしたいなって思ってたんです。田舎の中学生としては、お勉強ができていた方だけど、高校に進学してからは、あまりお受験にも気合が入らなくて、空回り。将来のことは曖昧なまま、勉強は嫌いじゃないっていうのもあって、学校の先生になりたいくらいの発想で教育学部に入ったんです。

qbc:なるほど。

古賀:興味関心のおもむくまま学んだのが、家族法でした。たぶん、いきなり家族法ってのが普通いないんですよね。法律学部行ったら、家族法をメインに勉強することって逆になくって。一般的なメインは憲法だ刑法だ人権だってところなんですよ。司法試験を目指すなら、民法の物権や債権から勉強するでしょう。
教育の現場で子供のこととか子供の権利について、ちょっと聞きかじって学んでから、家族法オタクになっちゃったんですよね。で、夫婦別姓のことも20年前に知って。ちょっと早すぎましたよね。でも、時代はやっと別姓について議論しているから。たぶん、予言的な感覚はそういうところで身についたんじゃないかなと。

qbc:はいはい。

古賀:大学卒業後、司法試験を目指すことになりました。本当、何者でもなかったです。何もしてないのに、親のすねかじりで受験生をしていくと。
予備校利用して効率よくやるんだみたいな気持ちはあったんですけど、まあ空回りしていくというか。当時、受験者数が5万人のうちの合格者1,000人から1,500人で、合格率が3%切ってたみたいな。だけど、私は無謀にも挑戦していて。

qbc:古賀さんは、どんなタイプの人だったんでしょうか。もともと教育問題に関心のある子供だったんですか?

古賀:サラリーマンの父と専業主婦の母で、弟がいる核家族で。転勤族で転校を重ねまして。小5とか中2に県を超えた転校をして、環境も友達も激変するというようなことを、10代の大切なときをそんなふうにすごしてました。
連れ去りでもないし、離婚でもないけど、転校して、育っていた環境が変わり、友だちづくりとかが、ちょっと苦手になっていってましたね。勉強がお友だちみたいで、部活は楽な書道部で。本当、友だちと遊ぶようなことはあんまりなかったような。
漫画が好きで、ジャンプは一生懸命読んでましたね。高校のときはボキャブラとかハマってました。

qbc:ボキャブラ天国?

古賀:そうです。お笑いは好きだったの。LIVEに一緒にいった一期一会の仲間はいたかもしれないけど。部活やクラスメイトの友だちとどうしたとかそういう10代らしい10代は送ってなかったような感じ。ちょっと痛々しいかんじの変わった子、だったかもな、10代を振り返ってみると。
でも、今は誰とでも人見知りせずに会いに行けちゃう。興味のまんま当事者活動に飛びこみに行っちゃうノリみたいなのがあります。

qbc:弁護士自体を目指したきっかけっていうのは、どんなだったのでしょう?

古賀:司法試験の受験広告に流された部分もあったりしましたが。
教員免許を取ろうと教育実習に行ったときに、学校の中にいたら、たぶん校長と喧嘩しておしまいだなとか思ったりして。
それから、学生のときに家族法を勉強し尽くしてフェミニズム的な発想も学んだ果てに、社会にけっこう絶望を覚えて。

qbc:それで、弁護士を?

古賀:安易っちゃあ安易だけど、受験広告に乗っかって巻きこまれたのもあるかもしんないけど、教育学部出身で女性で弁護士になるっていうこと自体に先があるはずだ、みたいな。ちょっと見切り発車な。
親も若かったんで、そこからもうちょい、すねかじれるかなというのもありました。結果として、想定以上に時間かかっちゃったんですけど。

qbc:なるほど。離婚のところは? 最初のお客様が離婚相談ではなかったら、今のような離婚専門にはならなかったですか?

古賀:いや、なっていただろうなと思う。
私、ロースクールに入学してから、結婚して、運良く子どももすぐ授かって、あわよくば子育てと受験生を両立しようとしたんですよ。その方が珍しい挑戦かなって、ママ受験生してたんです。でも、生後半年ぐらいで、早々に、離婚するかしないかってなって。民法の家族法を読んで感じていた絶望を、実際に自分も同じ目に遭うことになるんです。

qbc:お子さんは3人いらっしゃるんですよね。

古賀:子供は3人いて、1人目の話です。上の、1人だけ子連れ離婚して。
で、まあなんだかんだ受験勉強があるからって、離婚協議とか後回しにしつつ、2011年浪人中真っ只中で、何も成し遂げてなかった状況で離婚して、シングルマザーで。
だからこそラストチャンスやるっきゃないみたいな。じゃないとただのバイトで本当に困窮するみたいな状況で。で、2012年受験資格が最後の年というとき、ヤマが当たって、ギリギリ弁護士になれた。
その頃のシングルマザーライフ、自分の離婚経験もあって、友だちにも女性側ですが離婚当事者もいたし、実情を見てたし、だからそれで、もともと離婚案件はやろうというのはありました。

qbc:そしたら、男性相談がいきなり来たって展開ですか。

古賀:そうですね。弁護士になる前から、いろんな離婚家庭を当事者側から見ていて、子供のためになる離婚を模索したいって思いがあって続けてます。
ほんと、父親との関係をしっかりしていないと養育費が支払われなくなるとか、そういうことが起きたりするんです。

qbc:今後、どうして行きたい、5年10年後に描いているイメージはありますか?

古賀:共同親権運動がライフワークになってきたのと、あと、自分ごととしては離婚10周年なんですよね。いろいろありましたけど、一応落着したので、そういう経験をポジティブにして、応援に使いたいなって。
とにかくシステムエラーが酷いので、法改正も速やかに行われてほしいと思うし。で、まあ離婚の仕方に留まらず、心地よい家族のあり方、自分で選択して良かったね、みたいなことについても取り組んでいきたいです。夫婦別姓の結婚の仕方とか、同性婚の人たちの運動も応援しつつ、どういうのがあれば心地よく安心できるのか、遺言の書き方とかも決まってないかもしれないし。

qbc:はい。

古賀:どんなシステムが理想かという話もあるけど、そもそも何も知らずに結婚しちゃうから、いざ離婚しようとするときに揉めるんです。本当は法律でガチガチに決まってるけど、みんなに知らされてないっていうこと自体がシステムエラーなんですよね。

qbc:ゼクシィじゃなくって民法を読めっていうふうに、山本さんから聞きました

古賀さんのお友達の山本さん!

古賀:どこかの講演の機会で言ったんですよ。細かいことは覚えてないんですけど。読んだこともなくてゼクシィさんに申し訳ないですが、まず民法を読んで、ちゃんと自分に合ったように結婚生活をカスタマイズしたほうがいいよって思うんです。

qbc:結婚自体はただの一つの制度でしかなくって、愛とか恋とは無関係だって思ったほうがいいですよね。

古賀:ねー。結婚制度を利用しなくったって、幸せになったもん勝ちなんだって。今は、新しいパートナーとの間に、さらに2人の子供が生まれたステップファミリーですが、まさに、民法の知識を駆使して、子供たちは3人の氏がバラバラ、家族別姓でもめちゃくちゃ幸せな愛情あふれる仲良し家族ですもん。再婚といっても事実婚未満かな、とにかく、家族が心地よくいるカタチを模索して自然にたどりついたのが今のカタチです。幸せになったもん勝ちを実践しています。

qbc:ほんとそう。それでは、最後に、言い残してしまったことがあればお聞きします。

古賀:家族の生き方も、自分でカスタマイズすれば、これだけ心地よくいられるぞーっていうのをもっと発信して行きたいと思います。

qbc:ありがとうございました! めちゃくちゃ新知識を得ました!

古賀:貴重な機会、ありがとうございました。

あとがき

あなたはこのインタビューをどう思いましたか?
もしかしたら、古賀さんがまっすぐに弁護士になっていたら、共同親権についてここまで関わっていなかったのかなと思ったりしています。
子供のころの転校や、弁護士になるまでの長い道のり、受験生ママ子連れ離婚。こういった紆余曲折が、これまでとは違う社会の仕組みを導入しようという原動力になっているのだろうと。
順当に、普通に、こうなるといいなといったまっすぐな道のりで進んでいたら、今ある社会に足りないものに、きっと気づきにくい。今見えるもの、今感じられるもの、今ないものに対する想像力、そしてそれを現実に出現させる力は、非効率や無駄の中から生まれるってことなのじゃないのかと。
共同親権自体は、法制審議会の家族法制部会で議論が進んでいます。

実は無名人インタビューのスタッフにはスペインに住んでいる人がいるんですが、その人のビザってパートナービザなんですよね。結婚してないけど共同生活している。結婚してないけど、でもその国にいていいよって。
じゃその国における結婚てなんなの? てその人に聞いたら、あー相続とかそういうのには関係してますね、て言ってた。まあ、そうなってしまった場所では、そのようなものでしかないのだなと。
私は若い人たちのために、良い制度が残せたらと考えています。

編集協力:有島緋ナさん 白原すみさん

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