【小説】真神奇譚 第四話
あっしらが阿波は剣山の麓を旅立ったのはもう二年も前になりますか。まずは隣の土佐に行きやした。土佐にはオオカミの血を受け継いだ四国犬がいますのでこれに会って話を聞こうと思ったわけです。すぐ見つかると思っていたのが大間違いで一か月も山の中を彷徨いやしたよ。ようやく見つけたのは奈半利の虎と言う年のころは十歳くらいの中年男でした。
自分の曾おじいさんはオオカミの血をひいていたと言ってましたが生まれてこの方オオカミに会ったことは無いと言ってやした。旦那の見立てでも虎にはオオカミの面