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[詩] 花びらと

食卓に
花びらが落ちている
ちる音を
いちども聞かないうちに
また夜になり
アパートの
隣の部屋では
泣きやまない子どもをあやすひとが
こちらに聞こえないように
小さくうたをうたっている

遠い病棟にいる
わたしの赤ん坊も
眠ろうとしているだろうか

夢のなかでだけ
きつく抱かれ
音をたてることができた まだ温かい
花影に
わたしも いつか
小さなうたを
教えよう
雪のいちばんきれいな場所を
決して踏まないような
泣きかたで



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峯澤典子小詩集『Sillage 夏の航跡』(私家版、2019年7月)より。