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捨てられた独裁者

タイトル:(仮)捨てられた独裁者

▼登場人物
●レベッカ:女性。20歳~60歳(ラストで60歳になる)。ゴーマン王の妃。嫉妬深くかなりの我儘。裏の独裁者。
●ゴーマン:男性。30歳~70歳(ラストで70歳になる)。その国の王。でも女に弱く言いなりになる気質がある。
●男1~2:他国の元王様。ゴーマンの国の傘下に降り貢物を持ってやって来る。
●女1~2:他国に住んでいた市民(その内にキャロラインも居る)。次々いろんな人種、また若い女性がゴーマンの国へ入国するイメージで。
●女中:30代。レベッカ専属の給仕。清楚で一般的なイメージでOKです。
●守衛:男性。30~40代。レベッカ(妃)の部屋を常に護衛している。
●裁判長:男性。50代。独裁権力に操られている。茶番のような裁判を平気でやってのける。

▼場所設定
●ゴーマンが納める国:どの国よりも強大な独裁国家のイメージで(勢力拡大してゆく)。
●ゴーマン家:大豪邸。レベッカの部屋も煌びやか。普通の王の城のようなイメージで。

NAはレベッカでよろしくお願い致します。

イントロ〜

皆さんは、独裁国家と言うものにどのようなイメージを持ちますか?
確かに国家である事から国を想定するでしょうけど
その国を造り上げているのは人間です。
つまり独裁者が居て初めて独裁国家が成り立つ。
そしてこの独裁者とは、
日常でも皆さんの心に住んでいる生き物なのです。

メインシナリオ〜

ト書き〈豪邸にて〉

私の名前はレベッカ。
この国を支配している王の妃。
その夫の名前はゴーマンで、ゴーマンは先祖代々に渡る王家の生まれ。
この国を牛耳る事になったのは、
もはや運命のなせる業(わざ)と言えるだろう。

そして彼は私の言いなりで、私の奴隷のような存在だった。

ゴーマン「君は美しい。僕の人生は君のためにあるようなもんだ。これからも、君の望みは何でも叶えたい、いやそうさせてくれ。私がこの国を支配して居ても、君が居なければその栄華は何にも成らない。分かるだろう?」

レベッカ「ええ、よく分かるわ。私は幸せよ。あなたのような、何でも言うことを聞いてくれる人が居て。私の望みを叶えてくれる人が居て…♪」

ゴーマン「で?今日の望みは何だい?」

レベッカ「…ビスマルク家の血を引くとか言ってるあのシェリーとか言う女、彼女が最近ちょっと邪魔になってきたわ。粛清してくれる?」

ゴーマン「ああ、あの娘か。…分かりました、御意のままに♪」(少しおどけながらも真面目に)

こうしてその日、美貌の持ち主だったシェリーは
わが国の権力によって拉致され粛清された。

これまで、こんな事が何度もあった。
そもそも私を妻に迎えたのはゴーマンのほう。
私も自分で言うのはなんだけど結構な美貌の持ち主で、
巷では絶世の美女、クレオパトラの生まれ変わり…
そんなふうにおだてられた事も何度かあった。

彼はそんな私を妻に迎え、身も心も私に捧げたまま、
この国の内政は今や私が牛耳ってる…と言っても過言じゃない。
まぁ内政と言っても私の思い通りにするだけ。
本当に私は幸運の持ち主。
これほどの勝ち組が他にあるだろうか?

ト書き〈後日〉

それから後日。
私の我儘ぶりは更にエスカレートして行った。

(日時を変えて我儘を言うオンパレードの彼女の様子で)

レベッカ「あの老人、汚らしいから粛清してちょうだい」

レベッカ「あの女。あなたに言い寄ろうとしたわ。粛清ね?」

レベッカ「あなたは、今でもずっと私の事を愛してる?」
ゴーマン「ああ、もちろんですよ?」
レベッカ「だったらあの子、お願いね?」

レベッカ「あのおばさん、私に挨拶がなかったわ。いつものように…」

こんな調子で、私の周りでは死体の山が築かれていった。
でもこれは独裁国家に生まれた大きな特権であり、
誰にも文句を言わせない、自然の習わしのようなものである。

この国に生まれて私にそうされた人達は皆、
「仕方がない」この一言で夢も希望も捨てなければならない。
必要なら人生も捨てなければならず、そうなる確率のほうが
私がこの座に就いている以上は高かった。

でも、未だにあの人はずっと私に釘付け。
私のこの美貌の虜になり、身も心も私の存在に釘付けとなり、
おそらく…いや絶対にあの人は私のもとを離れない。
男女関係の欲による奥深さとはそう言うもんだ。

ト書き〈環境が少しずつ変わる〉

そして私達の国は更に勢力が増大し、
国際間のバランスを平和に保つ為、
弱小国家はどんどん私達の国の傘下に収められた。

(貢物を持ってくる人達)

男1「どうぞ、こちらをお納め下さい。わが国家をこれまで守り続けてきた武器の全てです。これからはあなたの国の為にこれらの力をお使い下さい」

男2「こちらはわが国で先祖代々伝わってきた珍味のいろいろです。ぜひご賞味下さり、気に入って頂けたら何よりです。私は王座をあなたに捧げ、これからはあなた専属の料理人として生きていくでしょう。どうぞよろしくお願い致します」

女1「あなたの身の周りで給仕をさせて頂くキャロラインと申します。これからもどうぞよろしくお願い致します」

女2「私は女だてらに理系に精通しており、あなたの国…いやわが国を更に富ます為の武器開発に専念させて頂けたら、と思っております。どうぞ今後もお見知りおきを」

そんな感じで様々な国の人々がわが国へ入国しており、
これまでの歴史に見てきた習わし通り、
自国の栄華を全てわが国に捧げよう…そんな姿勢で
頭からつま先まで全て私達に忠誠を誓ってくる。

レベッカ「フフ、これで当面の間、私達の国の未来も安泰ね。更なる政策ができ、権力を伸ばす事もでき、何より私の趣向を楽しませる素材が幾つも増えてくれたわ…」

ト書き〈環境が変わる(その2)〉

それから私は、ゴーマンと私の身の周りに在る
若い女を積極的に粛清していった。
特に若い女に目をつけたのは、私の悩みを少しでも解消するため。

(鏡を見ながら)

レベッカ「…やだわ。また目尻にシワが…」

結婚してから数年が経ち、
私も自分の体に老いを感じる時期になってきた。

女の加齢は男より10年早い…
なんて言われるわが国特有のスラングもあるが、
私は人より年齢を気にする質(たち)で、
特にこの美貌が汚(けが)れていく事に我慢ならない程の焦りを感じた。

(レベッカの部屋にて)

女中「お妃様、お呼びでしょうか?」

レベッカ「この前言ってたエナメルカスピの化粧品、あれはどうしたの?まだ届かない?」

女中「あ、ああ、あれはもうすぐかと?」

レベッカ「何やってるの!もうすぐもうすぐって、私が注文してからもう3日になるじゃない!72時間も私を待たせて、その間にこの体の細胞1つ1つがどんどん衰えていくのよ!」

女中「で、ですがあれは、遠い地中海地方からの取り寄せになるので、もう少しお時間を…」

レベッカ「…あなた今、私に逆らったわね…?」

女中「い、いえそんな!滅相もございません!!」

レベッカ「守衛!守衛!こちらに来なさい!」

部屋を見張っていた守衛「はい、何でしょう?」

レベッカ「この女を連れて行って粛清しなさい。私にはもう必要が無いから」

部屋を見張っていた守衛「かしこまりました」

女中「そ、そんなぁ!お、お助けを!お助けを!!」

(銃声)「ダーン…」

レベッカ「不要なものは全部取り除くのよ。…この老いも、そのうち私から取り除いてみせるわ…」

ト書き〈40年後〉

それから歳月が過ぎ、更に40年が過ぎた。
私は今、この国で裁判にかけられている。

レベッカ「ど、どうしてよぉ!あなた、私をずっと愛してくれてるんじゃなかったの!?あなた私の虜になったんでしょう!?私無しじゃもう生きていけないでしょう!だったらここからすぐに下ろして!こんな裁判、私が受けるべきものじゃないでしょう!」

裁判長「言い残す事はそれだけですね?では、もうこれ以上の発言は許しません。あなたはこの国の王であるゴーマンをたぶらかし、唆した上で殺人教唆の罪に問われて居ました。あなたの存在がなければゴーマンは狂わなかった。ゴーマン王はあなた…お前の我儘を寛大な心で許容してやり、愛する者のために一生懸命尽くしてあれだけの事をしてきてやったのだ。その事だけでもお前は感謝すべきだろう。全ての悪の元凶はお前にある。よってここで刑を執行する」(途中の「お前」から語調を強めて)

レベッカ「そ、そんな…そんなメチャクチャなあ!」

ゴーマンは自分の周りで
給仕として働いていた若い女に心を奪われたのだ。

そして次はその女の言いなりになり、
「…できれば私、あなたのお妃様になりたいの…」
「あなたの為に、誠心誠意尽くします」
「…あのレベッカとか言う邪魔な女を、粛清して頂けないかしら?」
結局そう言ったその女の傀儡のようにゴーマンはなってしまい、
持ち前の傀儡気質をまた大いに発揮して、鞍替えしたついでに
醜くなった邪魔な私を「裁判」と言う名目のもと、簡単に葬ったのだ。

こんな裁判、全てが茶番である。

元々ここは独裁国ながら、王の権威を振りかざせば
国民は何でも言う事を聞く。これまでのようにして。

元夫・ゴーマンはもう70歳。
私は彼より 10歳歳下の60歳になっていたが、老いは隠せず、
日に日に衰えていく私を見、
「そろそろこいつも潮時か、新しいのに変えよう」
程度の軽い彼の気持ちで捨てられた。

今となっては良く分かる。
初めからこうなる運命だった…ただそれだけの事。

人間の欲望は留(とど)まらず、老いてもなおその内実は勢いを増し、
その時に捨てられる女と言うのは悲惨なものだ。
「人の欲望は果てしない」とはよく言ったもの。

この体の美しさが、その欲望に付いていけなかった。
代わりに若い女中を手にしたあの男の欲望は、
今後もこれまで通り、生きていくのだろうか。
代々変わる形で…。

(銃声)「ダーン…」(レベッカが銃殺される音)

動画はこちら(^^♪
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