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建材のネット販売「サンワカンパニー」に関する考察

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記事一覧

ミニマムな手洗器レプトシリーズ

サンワカンパニーの「レプトシリーズ」と呼ばれるトイレ用の手洗い器は、業界内で最小のミニマリズムとして13年以上にわたり成功を収めています。この記事では、開発者である私がレプトシリーズがどのようにして生まれ、成功を収めたのか、その魅力に迫ります。 2008年、日本の住宅事情が変化し、トイレ空間が狭くなる一方、住設機器メーカーからは「タンクレストイレ」というトイレ空間の新たな拡充策が提案されました。しかし、この新しいアプローチには手洗い器の設置が必要で、狭いトイレ空間に新たな課

サンワカンパニー: デザインとビジョンから生まれた建材の革命 前編

はじめに ベンチャー企業のサンワカンパニーは、建材のネット販売において独自の商品力で成長してきました。彼らは海外のデザイン賞を受賞し、その成功は少数精鋭のスタッフが高いスキルとマーケティング能力を持つことに起因しています。しかし、組織が大きくなるにつれて、スキルや感覚の低いスタッフも増え、マーケットイン的な従来の日本の大手建材メーカーと同様のアプローチに陥りかねる危険があります。 この記事は前編と後編の2部構成で、サンワカンパニーがこの課題にどのように取り組むべきかに焦点

選択のパラドックスとミニマリズム:サンワカンパニーのパラドックス

選択のパラドックスの本質 近年の心理学研究から、選択肢が多いほど不幸になりやすいという「選択のパラドックス」が浮き彫りになっています。このパラドックスは、選択の自由が増えれば増えるほど、我々が選択に不安を感じ、後悔や満足度の低下をもたらすことを指摘しています。一方で、選択肢が少ない時代には、期待が低かったため選んだものに対する満足度が高かったというジレンマも存在します。 ミニマリズムの提唱 このような状況下で、ミニマリズムは新たな価値を提供しています。過剰な選択肢や消費

サンワカンパニーのメタル洗面シリーズ:日本の技術と美意識の融合

私が生み出した数多くの製品の中で、唯一無二といえるプロダクトが、サンワカンパニーで商品化されたメタル洗面シリーズです。このプロダクトは最新の金属加工技術と日本の美意識が交差するプロダクトで、日本独自のデザイン哲学と技術力を駆使し、新たな生活様式を提案するものであり、今回はその魅力に迫ります。 日本の金属加工技術の粋を結集 メタル洗面のプロダクトは、日本の金属加工技術の最高峰を示すものです。金属を薄く、精密に、そしてコンパクトに仕上げる技術は、他に類を見ません。このシリーズ

「用の美」を探求した、民藝と工業のプロダクト

私はデザイナーとして、これまで様々な工業デザインや建築のプロジェクトに関わってきました。しかし、最近では毎日使用する日用品に新たな魅力を見出し、それに心を奪われています。機械生産の製品にはない、独特の魅力と機能性が、私の心を惹きつけるのです。 日本民芸運動の創始者、柳宗悦が語った言葉があります。「名もない職人たちが、日々使う庶民の生活道具のためにつくった民藝品には、「簡素で飾らない美しさ」=「用の美」がある」と。この言葉に触れ、私は職人のようなデザイナーでありたいと望んでい

サンワカンパニー: デザインとビジョンから生まれた建材の革命 後編

はじめに サンワカンパニーは建材のネット販売で独自の成功を収め、高いスキルとマーケティング能力を持つスタッフに支えられ成長してきました。しかし、急成長に伴い、組織内にスキルや感覚の低いスタッフが増える可能性があり、プロダクトダクトアウトからマーケットインに偏重したアプローチに陥る危険性の指摘もあります。 サンワカンパニーの未来について考える際に、独自のデザインやクリエイティブ性を維持し、成長し続けるための成功事例と教訓が重要です。 この後編では、アップルの失敗と復活の教

サンワカンパニーの成功物語:日本の建材業界における革命的ビジョン

サンワカンパニーは、建材のネット販売を通じてハウスメーカー、工務店、一般消費者に同価格のワンプライスで提供する企業です。この記事では、サンワカンパニーの成功物語とその独自のビジネスモデルに焦点を当て、その成長の軌跡を探ります。 執筆者である私は長年、この会社で開発者として活動し、ブランディングやプロダクトの企画、デザイン開発に携わってきました。 成長の起点 私はこの会社での仕事を始めたのは15年前の2008年です。当時のスタッフは約20人で、年商は約20億円ほどでした。こ